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LADY TOKYO は毎月第一水曜 日本経済新聞 読者にお届け
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暑きものを着るのにちょうどいい季節になりました。でも暮春とも初夏とも言えるこの時季は、着るものに迷う時でもあります。一般的に5月は袷(あわせ)といわれていますが、日によっては25度を越すような夏日もあります。そんな日に袷は厳しいですね。お茶席など特別な場合は別として、個人で楽しむならしきたりに縛られる必要はないというのが最近の考え方です。単衣や紗合わせなど、その日の気温や体感に合わせて臨機応変なお洒落を楽しみましょう。今月は一足早く夏のきもの「小千谷縮」を取り上げます。 ■■ 第7回 小千谷縮 ■■ 新潟県小千谷市周辺では古来より苧麻(ちょま)という上質の麻を原料とした麻織物が織られていました。江戸時代初期に、それまでの越後麻布に改良を加えて完成したものが小千谷縮です。さらっとして肌に張り付かない爽やかな着心地の秘密は、緯糸に強い撚りをかけ織り上げた後に湯もみを行うことで出る独特のしぼ。その独特の風合いが高い評価を得て、昭和30年に国の重要無形文化財に指定されました。また、小千谷縮は平成21年にユネスコの無形文化遺産に登録されています。 春の風物詩「雪さらし」は、小千谷縮の指定工程の1つ。雪と紫外線の作用により発生したオゾンが麻布に含まれる色素を分解・漂白することで、白が強調され鮮やかになります。新品だけでなく、着た後のきものも雪さらしをすることで汗ジミや汚れが落ちてさっぱりするのです。この効果は麻布の特徴で、約800年前から行われているそうです。自然の力ってすごいですね。 手入れが簡単なのが1番の魅力 真夏のきものは、当然ながら暑いものです。それを、汗もかかずに涼しい顔で着るのが夏きもののダンディズムというものですが、本音を言えばできるだけ涼しく着たい。その点、小千谷縮は麻ですから素材としてその条件をクリアしています。「麻はシワになるから」と敬遠される方もいますが、多少のシワは味のうち。絹でも木綿でも座ればシワになります。また、麻のきものの良いところは、家でザブザブ洗濯ができてすぐ乾くこと。ネットに入れて洗濯機で洗った後、着物用ハンガーにかけてパンパンと叩いておくだけで、シワがピント伸びてアイロンがいらないのも魅力です。着る度に洗えるのは気持ちがいいですね。 きものとして、浴衣として 小千谷縮は、「きもの」としても「ゆかた」としても着ることができます。襦袢を着て半襟を出して夏帯を締めればきものになりますし、襦袢を着ないで半幅帯を締めればゆかたのように着こなすことができます。きものとして着る場合も、半襟や帯などの素材次第で単衣としても薄物としても着ることができるので、6月から9月まで色々な着方で楽しめます。そういう意味では、1枚で何役もこなしてくれると便利なきものといえますね。 買いやすい値段もうれしい 小千谷縮はお値段が安いのも魅力。繊細な手仕事による重要無形文化財の小千谷縮は別として、一般に流通している小千谷縮は5万円前後です。これなら手が出しやすいですね。「きものの着付けはできないけどゆかたなら大丈夫」という方にも、大人のゆかたとしておすすめです。木綿より上等な雰囲気になりますし、肌に張り付く木綿より麻の方が遥かに気持ちが良くて快適です。ただ麻は透け感があるので和装の下着は必要です。というわけでいいこと尽くしの小千谷縮。この夏ゆかたの購入を考えている方はぜひ検討してみてはいかがですか。(文/レディ東京編集者 中島有里子) <<< 第6回 大島紬 ←こちらからバックナンバーを読む事ができます 《 今月のワンポイント:草木染め 》 草木染めのきものも魅力的ですね。草木染めは通常、染料となる植物を煮出した液に灰などを加えて媒染して色を出しますが、クサギ(臭木)は媒染なしで鮮やかな水色に染まります。夏に白い花を咲かせ、秋になると赤いガクに宝石のような瑠璃色の実をつけるクサギ。この実の色からは想像もできないほど爽やかなブルーを生み出すのです。クサギという可哀想な名前は、葉に独特の悪臭がすることから付けられたそうです。 更新日:2021年5月12日(水) 『大人の嗜み 〜きもの美を知る〜』についてご意見・ご感想をお聞かせ下さい。 ★このコラムに対するご意見・ご感想をぜひお聞かせください。下記フォームより必要事項をご記入して頂き送信して頂いた方の中から抽選で10名様に『有松絞りの手拭い』をプレゼント!! ★プレゼント応募〆切は5/28(金)12:00まで※当選者の発表は商品の発送をもってかえさせていただきます。(色は選べません) [[aform017]]

暑くも寒くもない、気持ちのいい季節になりました。街を歩くとあちらこちらで春の花々や若葉が目に入り、春のエネルギーを浴びて元気になる気がします。きものを着てお出かけするにも良い季節ですね。さて、外国人にも人気のきもの。一般には派手な色柄の方が外国人には好まれると思われていますが、フランス人の友人たちが「なんてシックなきものなんだ!」と褒めてくれたのは、どれも無地に近い落ち着いた色合いの紬でした。今月はそんなきものの1つ、大島紬を取り上げます。 ■■ 第6回 大島紬 ■■ きものに詳しくない方でも「大島紬」の名前は聞いたことがあるのではないでしょうか。日本三大紬の1つで、きものの女王ともいわれる大島紬。手で紡いだ絹糸を泥染めし、手織りした平織りの着物で、奄美群島の伝統工芸品。本場大島紬は、タテ・ヨコの絣をカスリ合わせて織り上げますが、独特の絣模様は繊細かつ鮮やかで、鉄分を多く含むため虫食いが起きにくいという特徴があります。 奄美大島では、古くから養蚕と織物が盛んに行われていました。天智天皇の頃にはテーチ木(車輪梅)染が始められたとされ、東大寺正倉院の宝物帳にも「南島から褐色紬が献上された」と記されています。大島紬が真綿からの手紡ぎ色から今のように光沢のあるしなやかな糸になったのは明治中期のこと。この頃にいざり機から高機に変わり生産性が向上、高級織物として広く知られるようになりました。 大島紬は鹿児島と奄美大島で織られていますが、泥染めに使う泥は奄美大島にしかありません。そのため泥染めにはすべて奄美大島の泥が使われます。その泥染めに欠かせないのが車輪梅。車輪梅のことを沖縄地方の方言でテーチ木、またはティカチといいます。独特の深い黒は、このテーチ木で何十回も染めた後に泥染めすることで生まれるのです。 泥染めに欠かせないテーチ木(車輪梅) 大島紬ができるまでには30〜40の工程があります。その1つひとつを見るだけでも大変な作業だということが伝わって来ます。絣を作る柄締めのための糸は、12〜16本の糸がまとめて糊付けします。細かく切ったテーチ木は何時間も煮出し、図案に基づいて糸がくくられます。どの工程を見ても、それはもう考えただけで手のかかる作業で、このすべての工程が人の手で行われていることを思うと、大島紬の社会的地位の高さにも納得してしまいます。 図案通りに糸くくりをして染めます 大島紬の美しさは、細かな点と点を合わせて作る絣の美しさです。島の自然の動植物や道具、風土に根ざした伝統的な文様など様々。値段はピンキリですが、目が飛び出るほど高級なものであってもフォーマルな場所には来て行けないのが紬の運命。もっとも、最近では披露宴など格式の高い場以外のパーティーには着て行ってもよいという人も多くなりました。きものの格式をあまり厳格に守ろうとすると、敷居が高くなり着る人が余計に減ってしまいます。きもの文化を守るためにも、明らかに場違いなものは別として、あまり厳格にしない方がいいという気がします。とはいえ、紬は柄ゆきが普段着っぽいものが多いですね。パーティーにふさわしいかどうかは柄にもよるのです。(文/レディ東京編集者 中島有里子) <<< 第5回 結城紬 ←こちらからバックナンバーを読む事ができます 《 今月のワンポイント:履物 》 きものの足元といえば草履。草履にはフォーマルとカジュアルがあり、見た目がまったく違います。正式な場所の草履は裂地かエナメルで色は金・銀・白。かかとの高さは5〜6センチで、高ければ高いほどフォーマルだといわれています。一方、紬や小紋、綿や麻のきものに合わせるのはカジュアルな草履。こちらは素材も様々で、雨に強いウレタン素材・畳表やパナマの台にお洒落な柄の鼻緒で遊びの要素がいっぱいです。意外と目立つ足元。ステキな草履で足取り軽く歩きたいですね。 更新日:2021年4月7日(水)

すっかり春めいてきたこの頃。今年はサクラも早そうだという話を聞きました。そういえば、去年は満開のサクラの頃に大雪が降ったのを思い出します。滅多に見られない美しい風景に心を奪われて、窓の外を飽きずに眺めていました。東京で雪が降るのは春が近づいてからが多いので、今年もそんな景色が見られるかもしれません。 さて、きものは大きく分けて硬いきもの(織り/紬)と柔らかいきもの(染め)の2つがあります。今回は紬の中で最も古い絹織物という結城紬を取り上げます。 ■■ 第5回 結城紬 ■■ 日本三大紬といえば、「結城紬」、「大島紬」、3番目は諸説あって「牛首紬」、「塩沢紬」、「上田紬」などが挙げられます。中でもきもの好きの憧れの1つが結城紬。茨城県結城市で織られる結城紬の歴史は古く、奈良時代にまで遡ります。当時、常陸国の特産物として朝廷に上納された布(あしぎぬ)は紬の原型とされ、奈良・正倉院に保管されています。室町時代になると結城家から幕府・関東官領へも献上されたことから「結城紬」と名を変えました。以後長年にわたり成長してきた結城紬は、昭和31年に国の「重要無形文化財」に、昭和52年には「伝統的工芸品」に指定されています。 ■■結城紬の魅力は真綿紬の風合い 結城は繭から手紡ぎした撚りのかからない無撚糸で織られます。重要無形文化財の指定要件はこれに加え、絣模様をつける場合は手くびりによること、地機(いざり機)という最も原始的な織機で織ること、とされています。糸をくくって絣模様を作る「絣くくり」は、最も単純とされる80亀甲(反物の幅に80個の亀甲模様が入る)で160ヶ所、最高の細かさである200亀甲では約400ヶ所にもなります。1反にかかる絣くくりは数ヶ月にも上る場合もあり、手が変わるとくくる強さが変わるため、最初から最後まで1人の職人さんが行います。結城に行くと機屋さんを見学することができますが、奥順という有名な機屋さんで今はもう作ることができないという店の宝を見せてもらったことがあります。それは細かい亀甲が並んだ美しい反物でした。 ■■ きもの1枚に帯3本 結城紬は柔らかくて軽いといわれますが、新しいものは印象ほど柔らかくはないのです。というのも、3代にわたって洗い張りを繰り返して、水をくぐるほどに着心地が良くなっていくので、昔は「下ろし立ては女中さんに着せろ」といわれたほど。その感覚はちょっとジーンズに似ていますね。 上の画像は無地の結城紬です。ひと足早くサクラの帯を合わせてみました。きものが面白いのは、季節をそのまま表現できるところ。自分がサクラに同化したかのように、帯揚げにも薄いピンクをあしらい、帯締めも緑からピンクの暈しを合わせます。こんな風に、季節そのままの格好をするのは洋服ではあまりしないこと。きものならではの楽しみです。日本文化は季節感を大切にするので、きものにもそういう感覚が反映されるのです。サクラの柄は散るまでの数週間使うことができますが、きもの通の人の中には、節分、桃の節句、七夕といった、年中行事のたった1日だけのための帯や帯留めを用意する人もいます。そういう贅沢も、きものの楽しさのひとつといえます。 同じきものに南風原の花織の帯を合わせてみました。きもの1枚に帯3本といわれるように、帯を変えるとまた違う雰囲気になります。春はもうすぐそこ。みなさんもきものでお出かけしてみてはいかがですか。(文/レディ東京編集者 中島有里子) <<< 第4回 本場黄八丈と久米島紬 ←こちらからバックナンバーを読む事ができます 《 今月のワンポイント:長襦袢 》 きものの下に着る長襦袢は密かなお洒落です。関東では友禅などの華やかなきものより無地やシックな色合いが好まれますが、その分長襦袢で遊びます。袖口や袂からこぼれる色や柄に着る人のセンスを感じてハッとすることがあります。ちなみに、襦袢はポルトガル語のジバン(袖の広い上着)が語源とのこと。16世紀頃南蛮人によってもたらされたそうです。意外ですね。そういえば祖母は「長ジバン」と言っていましたが、それが正しい発音だったということですね。 更新日:2021年3月3日(水) 『大人の嗜み 〜きもの美を知る〜』についてご意見・ご感想をお聞かせ下さい。 ★このコラムに対するご意見・ご感想をぜひお聞かせください。下記フォームより必要事項をご記入して頂き送信して頂いた方の中から抽選で10名様に『有松絞りの手拭い』をプレゼント!! ★プレゼント応募〆切は3/24(水)12:00まで※当選者の発表は商品の発送をもってかえさせていただきます。(色は選べません) [[aform017]]

寒い中にも春の兆しが感じられる季節になりました。不思議なもので、立春を過ぎると途端に空気が春めいてきます。近所を散歩すると、どこからともなく梅の香りがしてきます。よく見るとサクラの枝先には花芽がたくさん付いていて、少しずつ開花に向けて準備していることがわかります。待ち遠しい春はもうすぐそこまで来ているのですね。 さて、趣味的要素の強い紬。どんなに高価でもフォーマルな場には着ていけない、いわば贅沢な普段着。そこが通好みのするところもあります。そんな紬から、今回は春に着たい黄八丈と久米島紬を取り上げました。 ■■ 第4回 本場黄八丈と久米島紬 ■■ ■■ 本場黄八丈 黄八丈は、八丈島に伝わる草木染めの絹織物で、島に自生する植物の煮汁で黄色・樺色・黒の3色に染められた糸で織り上げます。黄色は八丈刈安(コブナ草)、樺色はマダミ(タブの木)、黒色は椎の木の樹皮と泥浸けで染められます。媒染は榊・椿の灰汁など、アルミナ焙煎によって鮮やかな発色と独特の光沢が生まれ、孫の代まで色褪せないといわれます。 江戸時代には年貢として幕府に納められていた黄八丈。江戸後期に「恋娘昔八丈」という人形浄瑠璃で黄八丈の衣装が採用され、後に歌舞伎でも上演されたことから爆発的な人気を誇ったといわれています。現在では経済産業省伝統的工芸品として、また東京都産業労働局東京の伝統工芸品として「本場黄八丈」が指定を受けています。 縞模様や格子柄の黄八丈は、気軽な街着というイメージ。きものに不慣れな人でも縞や格子なら抵抗がないかもしれませんね。画像は春を感じさせる若草色の帯揚げに、道明のグリーン系の爽やかな帯締めを合わせ、遊びでヴィンテージのセルロイドのブローチを帯留めに。こんな楽しいコーディネートでお出かけしたら、気持ちがぐっと上がりますね。 ■■ 久米島紬 こちらは久米島絣です。久米島というと泥染めが有名で人気もありますが、黒地のきものはかなり個性的なのでこのくらいの色の方が着やすいかもしれません。ここでは琉球柄の帯を合わせて個性を強調しました。久米島紬は15世紀に中国から養蚕が伝わり、久米島を起点に沖縄本島、奄美大島を経て本土に伝えられたとされます。大島紬、久留米絣、結城紬などの日本の紬の発祥の地ともいわれます。蚕から取った真綿で紡いだ糸を原料に、天然の草木や泥染めによって染色し、高機で織っていきます。全ての工程を1人の織子が行うのが特徴。江戸時代には貢納布として米に変わって納められていたため、15歳から45歳までの島の女性は「布屋」と呼ばれる集落毎の工房で「御絵図(みえず)」という王府の絵師が描いたデザイン見本の通りに正確に織り上げることが求められました。現在、貴重な久米島紬は国の重要文化財に指定されています。 こちらは泥染めの久米島紬です。いわゆる琉球柄ではなく細かい織り模様が男性的なので、アフリカの木綿の絞りの帯と合わせて個性的な着こなしに。帯揚げはアフリカの大地の色、バッグも中央アフリカのクバ族の布で作ったもの。こんな遊びができるのは紬ならではの楽しさです。 《 今月のワンポイント:たとう紙 》 きものや帯は、「たとう紙」に包んでしまいますが、紐を結んでしまうと中に何が入っているのかわからなくなりますね。そこでおすすめしたいのが、中に入っているきものや帯の写真をこのように貼っておくこと。これなら一目瞭然で中身がわかるので、きものを着る度に色々開けてみる必要がありません。ちょっとしたことですが、これだけでストレスなくきものを着ることができます。 更新日:2021年2月3日(水)

■■ 第2回 西陣織(京都) ■■ きものを着なくても、西陣織の名を知らない人はいないと思います。西陣織とは、「多品種少量生産が特徴の京都(西陣)で生産される先染の紋織物」の総称。「染めのきものに織りの帯」といわれますが、染めの着物の代表格が友禅染、織りの帯の代表格が西陣織で、最も品格の高い帯とされます。昔から「帯は西陣」といわれる所以です。 ■■ 西陣織の起源は古墳時代 西陣織の歴史は古く、5世紀〜6世紀ごろ、大陸からの渡来人である秦氏の一族が、今の京都・太秦あたりに住み着いて養蚕と絹織物を伝えたのがはじまりとされます。平安遷都後、朝廷は織部司(おりべのつかさ)という織物業の役所をつくり、絹織物の技術を受け継ぐ工人(たくみ)によって綾・錦など高級織物の生産をはじめました。「西陣織」と呼ばれるようになったのは室町時代の応仁の乱の後。戦禍を逃れていた職人たちが戻り、織物業を再開した土地が西軍の本陣(西陣)だったことから「西陣織」という名が生まれました。その後も中国の明から技術を取り入れ、幕府の保護のもと、高級織物の産地としてさらに発展を遂げたのです。 ■■ 西陣織の種類は多種多様 「西陣に織れないものはない」といわれるほど多彩な西陣織。何色もの色糸を使って美しい織文様をつくりだす錦(にしき)、とりどりの色糸を使い、刺繍のように縫い取りで柄を降りだす唐織(からおり)、緯糸(よこいと)だけで文様を表現する綴(つづれ)のほか、箔(つかい)、紹把(しょうは)、すくい、紬(つむぎ)、絽(ろ)、紗(しゃ)、羅(ら)、刺練、染と、実にさまざまな染織の技法が用いられています。伝統的な文様から、現代的で斬新な図柄に挑戦する機屋さんまで実にさまざまです。 ■■ 伝統と革新が生み出す魅惑の帯 西陣の帯の製造は、一般的に図案デザインから紋図、特殊な糸の製造や加工、紋紙掘り、引箔、染色、手織りまでが分業化されています。一流の職人の手による技術力と、京都という土地柄が生み出す華やかで雅な帯は美しく、きものを着る女性たちを魅了しますが、機屋さんの中には若いデザイナーのポップな図柄を帯に仕上げ海外で発表する個性的な店もあり、西陣織の可能性を広げています。 <<< 第1回 有松絞り(名古屋) 《 今月のワンポイント:帯留め 》 きもののお洒落は帯周りで決まります。お茶会やフォーマルな席に行く場合は別として、観劇やお食事に行く時なら、帯留めや帯飾りで大いに遊ぶのが楽しいと思います。写真はいずれもアンティークの帯留め。フルーツの帯留めはセルロイドで、元はブローチだったもの。元々ブローチと共用できるものも多いですね。帯留めは「大胆過ぎるかな」と思うくらいのものの方がお洒落。自分の個性を思い切り主張してみてくださいね。 更新日:2020年12月17日(木)

●はじめに● 昭和40年代までは、入学式や卒業式で見かけるお母さんたちの半数ほどは「きもの」でした。日常的にきものを目にした時代。今と何が違うのか考えてみると、きものに限らず、昔の方が服装のTPOが明確だったのですね。今はどんな場所にもカジュアルな服装で行く人が多いですが、当時は普段着とお出かけ着がきっちり分かれていて、「場」によって服装を変えるのが当たり前でした。それは、行く場所や会う相手に対する敬意を服装で表すという、大人の嗜みを誰もが持っていたからでした。 今、時流は「和」。日本文化を見直す様々な動きがある中、「きものを着てみたい」という人が増えています。日本全国には伝統的な美しい染織があり、手間隙かけた手仕事によって支えられています。どんな所でどんな風にきものが作られているかを知ることで、きものへの愛着が湧き、着てみたいという思いが深まるかもしれません。このコラムでは毎月産地を1つ選び、<日本の染織・きもの>の魅力をご紹介していきます。憧れのきものを、まずは知ることから始めてみてはいかがでしょうか。 ■■ 第1回 有松絞り(名古屋) ■■ ■■ 有松絞りの歴史 名古屋から名鉄名古屋本線で有松駅まで約20分。有松は、江戸幕府の東海道整備に伴い尾張藩が慶長13年(1608年)に出した入植者募集のお触書きによって、阿久比から庄九郎はじめ8名が入植して誕生しました。名古屋城築城の折に豊後(大分)の方より絞り染を習い、その後この地域で工夫をし、今日につながる有松・鳴海絞りが生まれます。絞り染めは東海道の旅人の土産物としてもてはやされ有松は繁栄を誇りました。その様子は、北斎や広重の浮世絵に描かれています。 100種類以上もある絞りの技術が様々な柄を創りだします ■■ 高級品の代名詞「絞り」 布に施す最も古い染色技法の1つといわれる「絞り」は、世界中に3000年以上も途絶えることなく現代に継承されている技術です。有松・鳴海絞りは、400年以上の歴史を有し、先人たちのたゆまぬ創意工夫により生まれた100種類以上の絞り技法や染色技法により有松・鳴海地方は世界に誇る無類の絞りの産地として、世界中から評価されています。有松絞りというと藍染の浴衣のイメージを持つ方も多いかもしれませんが、総絞りは昔から高級呉服の代名詞。小紋から格調高い振袖まで様々なきものがあります。しかし、総絞りの着物には第一礼装に必要な「五つ紋」「三つ紋」が入れられないため、格は準礼装となります。振袖の場合は、未婚女性の略式礼装着なので、総絞りのものであってもフォーマルな席に来ていけます。 様々な絞りの技を組み合わせた豪華な振袖 ■■ 金さん・銀さんも有松絞りの括り手だった 熟練の職人によるいくつもの工程を経て絞りは出来上がりますが、模様を決定する大事な作業が「括り」。布を堅く糸で括り、そこだけ染料が入らないように防染するのです。根気と熟練が必要な作業で、通常4〜5人の家庭へ次々と廻されて加工されますが、技法により様々な加工方法と異なった道具が使われます。ちなみに、あの金さん・銀さんも有松絞りの括り手だったそうです。括りが終わった布は専業の染屋によって各種の染色が行われます。その後、糸抜きをしますが、絞りの種類によっては1反に3〜4日かかるものも。何から何まで手のかかる手仕事の連続です。美しい有松絞りは、こうしてやっと1つの反物になるのです。 ■■ 美しい街並みも見どころ 保存地区の規模は小さいながら、1本道の両側に古い町並みが連なり見応えがあります。尾張藩の手厚い庇護の下、目覚ましい発展を遂げ、全国に名を知られるようになった有松でしたが、天明4年(1784年)の大火で全村のほとんどが消失。大火後20年ほどで殆ど復興を果たしました。これを機に、旧東海道沿いの町屋は瓦葺に改め、うだつを設け、構造も塗籠造りとしたことから、現在見られるような商家が立ち並ぶ町並みとなりました。 (左・右上)竹田嘉兵衛商店 (右下)歌川広重 東海道五拾三次「鳴海 名物有松絞」 《 今月のワンポイント:無地の帯揚げ 》 洋服では、スカーフやアクセサリー上手に使いこなすのがお洒落の見せどころ。同じように、きものでも小物次第で同じきもの・同じ帯を全く違う印象に見せることができます。小物でキマるといっても過言ではないくらい。そこでおすすめなのが、縮緬の無地の帯揚げです。価格が手頃なので、使いやすい色を何色か集めておくと便利。帯の間に入れてしまうので、意外とハッキリした色を持ってきても派手過ぎず素敵です。 更新日:2020年11月18日(水)

vol.11 風呂敷ブームを先取り〜風呂敷エコバッグでレジ袋有料化に備えます〜 ■■■ はじめに ■■■ 2018年10月、環境省が、レジ袋の有料化を義務付ける事などを盛り込んだ素案を提出しました。お店によっては既に有料化されていましたが「国内では年450億枚のレジ袋が使われていると推定されている」と先日の日経新聞の記事を拝見し驚愕致しました。 海外どこへ行って買い物しても、日本の様に袋をくれる国(都市)はない為、逆に不親切だと感じた事もありますが、小さな飴やガム類ひとつを購入しても当たり前の様に袋に入れてくれる、そんな必要もないですね。 さて、有料化が現実問題となりますと、1枚5円程度のレジ袋も日々の事であればばかになりません。マイバッグ・エコバッグを持参する方が増えると想像でき、そこで注目されそうなのが風呂敷ではないでしょうか。風呂敷を使って作る風呂敷バッグ、その中でも、先ずはこれだけ覚えておけば大活躍間違いなしの簡単な使い方をご一緒に、確認致しましょう。 ■■■ 風呂敷で作る簡単エコバッグ ■■■ 1. 風呂敷を広げ隣同士の角を真結び(固結び)します。2. 残った2か所の角も真結び(固結び)します3. そのままでもバッグとして使用できます!が・・・4. 3.の片方の持ち手に残りの持ち手をくぐらせると (中身が飛び出さず) より安心感がアップします! ■■■ 風呂敷豆知識 ■■■ 風呂敷といっても素材・サイズなど様々です。【素材】 正絹・レーヨン・ポリエステル・綿などがありますが、重い物を包んで(入れて)運ぶならしっかりした綿素材、もしくは軽くて水に強いポリエステルなどがお勧めです。 ※写真左:綿 写真右:ポリエステル 【サイズ】 袱紗のような約45cmからハンカチサイズの50cm、一般的なサイズの70cm前後(68cm、75cmなど)、少し大き目で90cm、より大きなサイズの105cmや130cmもあります。ちょっとしたお買い物であれば70cm前後のサイズがカバンに入れて日々持ち歩くにはかさばらず販売されている柄のバリエーションも豊富ですが、バッグとして使用する事を考えますと、結ぶ事で元のサイズより小さくなりますので90cm以上の大きめがお勧めです。 ※写真左:97cmサイズ 写真右:75cmサイズ 【色・デザイン】 色やデザインも沢山あり昔のイメージとは全く違います。季節で使い分ける、(バッグとして持つ訳ですから)その日の服装とコーディネートするのも楽しいです。白黒のモノトーン、撥水加工の施されたものもあります。 ■■■ 最後に 〜痛くない、重くない、軽い、かさばらない〜 ■■■ 風呂敷を選ばずとも、市販のエコバッグも軽くて折畳めてお手軽価格な商品が沢山販売されていますので、もちろんあえて風呂敷に拘る必要はありません。しかしながら風呂敷愛好家の意見としましては、持ち手の幅を自由に調整できるので、重い物を入れて腕や肩にかけても痛くありませんし細い紐の持ち手と比べても重さを感じません。また、一枚の布ですので畳んでカバンの中に忍ばせておいても軽いし邪魔になりません。包むものの形を選ばないのも良い点ですし、汚れても洗えるのはこの上なく便利です。 つらつらと風呂敷の良さを羅列致しましたが、少し大きなハンカチを持ち歩く感覚ですので、どうぞ明日からはカバンの中に一枚風呂敷を忍ばせて、買い物の際にはさっと広げてぱっと結んでストレスフリーに持ち運びする風呂敷エコバッグ生活を実践してみて下さい。 << vol.10 和紅茶でほっこりする ◎ P R O F I L E ◎ 歳時記・和菓子研究家 柳澤ゆり子 パリへ行く!と思い立ち仕事を辞めて渡仏。自国の文化を学ぶ必要を強く感じ、帰国後は着物・煎茶道・和菓子・折形・風呂敷・金継などを学ぶ。ほんの一滴、和のエッセンスを加える事で潤う日々の暮らし。花・茶・和菓子といった身近なアイテムを取り入れることで、四季を感じる暮らしをもっと楽しんでいただけたら、そんな想いで地元鎌倉を中心に活動中。モットーは「美味しく楽しく美しく」。 季節の和菓子と日本茶を楽しむ会・風呂敷塾を主宰。京都造形芸大(通信)和の伝統文化コース卒業/日本茶アドバイザー/風呂敷愛好家 更新日:2018年11月7日(水)

vol.10 和紅茶でほっこりする ** はじめに ** 秋の色も日一日と濃くなって参りました。食いしん坊な私にとっては待ちに待った食欲の秋の到来です。特に栗やお芋はそのままでも、和菓子にしても洋菓子にしても美味しいという大変危険な存在でもある訳ですが、これらを和紅茶と一緒に楽しむのがまた、この季節の楽しみの一つにもなっています。 ** 和紅茶とは ** 最近よく耳にする「和紅茶」、これは日本国内で育てられた国産茶葉を用い日本国内で加工された紅茶のことを指します。「国産紅茶」「日本紅茶」「地紅茶」などと呼ばれるよりも、この「和紅茶」という呼び名が可愛いということもあるかも知れませんが、広める為に活動なさっている方達のお力もあり、数年前よりちょっとしたブームにもなっています。 紅茶が日本に初めて入ってきたのは明治時代、イギリスから伝わったとされています。緑茶が中国から持ち込まれたのが奈良時代ですので、我々日本人と紅茶の出会いは随分と新しいものになりますね。また、意外かもしれませんが茶葉は緑茶も紅茶も同じ、発酵の度合いの違いで不発酵茶(緑茶)、半発酵茶(烏龍茶)、発酵茶(紅茶)などが作られています。不発酵茶の代表である緑茶は、茶の葉を蒸す・炒るなどして最初に葉の酸化酵素を不活性化しています。一方、発酵茶の代表である紅茶は、酸化酵素の働きを最大限に活用して作られます。 ** 和紅茶の楽しみ方 ** 《 和の器をあわせる 〜NIKKOのティーカップ×羊羹〜 》 和紅茶を楽しむならティーカップも日本のメーカーのものを選んでみます。(これは個人的な感想ですが)和紅茶は全般的に渋味が少なく丸いお味なので、お饅頭や羊羹といった和菓子にもとても合うと思っています。 《 〜益子焼きの小ぶりの茶噐×柿の道明寺〜 》 緑茶を頂くようなこぶりの茶噐で頂くのもありです。道明寺だけでなく大福の様な重めのお菓子にもあいますし、柿やイチジク・梨・ぶどうなど秋の果物との相性も◎です。 《 〜カフェオレボウル×干菓子〜 》 カジュアルにお抹茶を楽しむ雰囲気で、カフェオレボウルで楽しむのも面白いです。お干菓子との相性も良かったですね。 《 柿・栗・かぼちゃといった秋の美味しいものたちと合わせる 》 ** 終わりに ** 気温が下がってくると女性は特に「冷え」が気になるものです。そんな季節にも発酵茶なので身体を温めてくれる紅茶は良いですね。ミルクはもちろんのこと、生姜やシナモンなど冷え症に効果のあるスパイスとの相性も良いので、色々な楽しみ方が可能です。香りによる精神安定効果も期待できる紅茶、この秋は和紅茶を選んでお好みのご褒美とともにぜひ「ほっこり」なさってください。 << vol.9 秋は心静かに月を愛でる ◎ P R O F I L E ◎ 歳時記・和菓子研究家 柳澤ゆり子 パリへ行く!と思い立ち仕事を辞めて渡仏。自国の文化を学ぶ必要を強く感じ、帰国後は着物・煎茶道・和菓子・折形・風呂敷・金継などを学ぶ。ほんの一滴、和のエッセンスを加える事で潤う日々の暮らし。花・茶・和菓子といった身近なアイテムを取り入れることで、四季を感じる暮らしをもっと楽しんでいただけたら、そんな想いで地元鎌倉を中心に活動中。モットーは「美味しく楽しく美しく」。 季節の和菓子と日本茶を楽しむ会・風呂敷塾を主宰。京都造形芸大(通信)和の伝統文化コース卒業/日本茶アドバイザー/風呂敷愛好家 更新日:2018年10月3日(水)

旬のサンマを使ってDHA・EPAを美味しくいただく♪ 魚にはオメガ3(DHAとEPA)と言われる良質の油が含まれており、サンマやサバなどの青魚には特に多く含まれています。DHAは脳を活性化、EPAは血液中の中性脂肪を下げ、血液をサラサラにし動脈硬化を防ぐアンチエイジング効果があります。今が旬のサンマをサッと焼いて合わせ調味料とたっぷりの粉山椒をかけたらあっという間に出来上がりの簡単メニュー。タレもしっかり頂くことでお魚のDHA・EPAを逃がさず摂れちゃいます。加熱調理の際は、加熱しても酸化しにくいオメガ9の米油やなたね油を使用しましょう。 (オメガオイルの詳しい特徴については、オメガさと子のホームページでご覧いただけます) −*−*−*−*−*− 材 料 −*−*−*−*−*− ●サンマ ...............2尾(3枚おろし) ●米油 ............... 大さじ1 ●小麦粉 ............... 大さじ1●しょうゆ ............ 大さじ1 ●砂糖 ............... 大さじ1 ●お酒 ............... 小さじ2●粉山椒 ............... 大さじ1 ●ブロッコリースプラウト(無くても可) ●ご飯 −*−*−*−*−*− 手 順 −*−*−*−*−*− 1. サンマを適当な大きさにカットし、小麦粉を全体にしっかりまぶす。 2.テフロン加工のフライパンに米油を敷き、サンマの皮目を下にして焼き目がつくように中火で焼き、裏返してさらに1分ほど焼く。 3.一度火を止める。しょうゆと砂糖とお酒を合わせたものをかけて全体にからませたら再度中火にかけて30秒煮詰める。再度火を止めて粉山椒をたっぷり振りかける。 4.ご飯の上に盛りつけて、ブロッコリースプラウトを飾ったら出来上がり。 POINT ☆小麦粉はムラなくしっかりまぶしておくと皮がカリッと仕上がります。 ☆身が薄いので長く焼き過ぎて身が固くならないようにしましょう。 ☆小麦粉アレルギーの方はグルテンフリーの大豆&米粉パウダーをご活用下さい。 << vol.10 枝豆と豆乳のポタージュ えごまオイルかけ オメガオイル料理研究家 オメガさと子 HP https://omegasatoko.com 更新日:2018年10月3日(水)

vol.9 秋は心静かに月を愛でる〜お月見団子は豆腐使用でヘルシーに〜 ●● はじめに ●● 澄んだ秋空に虫の声が美しく響く季節がやって参りました。 この季節は月が一年で一番美しく輝く季節でもありますね。 そんな季節は、せっかくなので美味しい月見団子も手作りしてお月見を楽しみたいと思います。 ●● お月見について少し復習 ●● お月見は平安時代、遣唐使によって中国より持ち帰られた習慣のひとつとされています。 当初は、貴族たちが管弦とともに楽しんだり、池に舟を浮かべ水面に映る月を楽しんだそうです。雅な遊びですね。江戸時代に入り一般庶民にも広まると、豊作祈願・収穫祭としても親しまれるようになる中でススキや月見団子をお供えする様に。 お月見と言えば「十五夜」ですが、これは旧暦8月15日(今年2018年は9月24日)の夜の事で、中秋の名月(旧暦の秋にあたる7〜9月の真ん中に出る月)やこの頃に収穫される芋や豆にちなんで芋名月、豆名月などとも呼ばれます。一方「十三夜」は旧暦9月13日の事を指し、その月は十五夜に次いで美しいと言われています。こちらは日本特有の習慣で、栗の収穫時期に当たる事もあり栗名月とも呼ばれます。 月見団子と一緒に「ススキ」をなぜ飾るかと言うと、神様を招く依り代となる稲穂の代用品として供えられる事に加え、ススキの切り口が鋭いので魔除けの意味も兼ねているそうです。 ●● 簡単&ヘルシーな月見団子の作り方をご紹介 ●●〜材料は豆腐(絹・木綿どちらでも)と白玉粉だけ〜1. 豆腐1 : 白玉粉1 をよくまぜてお好みのサイズに丸めて茹でます 2. お団子が浮いてきたら、そこから更に2〜3分程度茹でます 3. 茹であがったら冷水にとり、熱がとれたら水気を切ります 何とも簡単!ヘルシーでもちもちなお団子ができあがります! ●● お月見団子の供え方を確認 ●●十五夜は15個、十三夜には13個のお団子を供えます。 十五夜の場合は下から9個・4個・2個、十三夜の場合は下から9個・4個と積みあげます。 また、自分達が楽しむためではなく、あくまでも月が主役ですので、日本に古来より伝わる左上位(左を右よりも上位とする)の考え方に則って、月から見て左に自然界のもの(ススキや収穫物)、右に人工のもの(月見団子)を供えるのが正しいそうです。 ●● 終わりに ●● 月を見上げる際にいつも思いだすのが「月に住むと考えられている生き物は国によって違う」という事です。日本では「餅をつくウサギ」と言われていますが、ヨーロッパでは大きなハサミの蟹であったり、アラビアでは吠えるライオンであったりするそうです。面白いです。世界中の人々がそれぞれの場所でそれぞれの思いを胸に同じ月を眺めていると思うと、熱いものが込み上げて参ります。日本だけでなく世界各地で自然災害の多い昨今です、澄んだ秋空に輝く月に世界平和も願いたいですね。 << vol.8 線香花火の東西を楽しむ ◎ P R O F I L E ◎ 歳時記・和菓子研究家 柳澤ゆり子 パリへ行く!と思い立ち仕事を辞めて渡仏。自国の文化を学ぶ必要を強く感じ、帰国後は着物・煎茶道・和菓子・折形・風呂敷・金継などを学ぶ。ほんの一滴、和のエッセンスを加える事で潤う日々の暮らし。花・茶・和菓子といった身近なアイテムを取り入れることで、四季を感じる暮らしをもっと楽しんでいただけたら、そんな想いで地元鎌倉を中心に活動中。モットーは「美味しく楽しく美しく」。 季節の和菓子と日本茶を楽しむ会・風呂敷塾を主宰。京都造形芸大(通信)和の伝統文化コース卒業/日本茶アドバイザー/風呂敷愛好家 更新日:2018年9月5日(水)

暑きものを着るのにちょうどいい季節になりました。でも暮春とも初夏とも言えるこの時季は、着るものに迷う時でもあります。一般的に5月は袷(あわせ)といわれていますが、日によっては25度を越すような夏日もあります。そんな日に袷は厳しいですね。お茶席など特別な場合は別として、個人で楽しむならしきたりに縛られる必要はないというのが最近の考え方です。単衣や紗合わせなど、その日の気温や体感に合わせて臨機応変なお洒落を楽しみましょう。今月は一足早く夏のきもの「小千谷縮」を取り上げます。 ■■ 第7回 小千谷縮 ■■ 新潟県小千谷市周辺では古来より苧麻(ちょま)という上質の麻を原料とした麻織物が織られていました。江戸時代初期に、それまでの越後麻布に改良を加えて完成したものが小千谷縮です。さらっとして肌に張り付かない爽やかな着心地の秘密は、緯糸に強い撚りをかけ織り上げた後に湯もみを行うことで出る独特のしぼ。その独特の風合いが高い評価を得て、昭和30年に国の重要無形文化財に指定されました。また、小千谷縮は平成21年にユネスコの無形文化遺産に登録されています。 春の風物詩「雪さらし」は、小千谷縮の指定工程の1つ。雪と紫外線の作用により発生したオゾンが麻布に含まれる色素を分解・漂白することで、白が強調され鮮やかになります。新品だけでなく、着た後のきものも雪さらしをすることで汗ジミや汚れが落ちてさっぱりするのです。この効果は麻布の特徴で、約800年前から行われているそうです。自然の力ってすごいですね。 手入れが簡単なのが1番の魅力 真夏のきものは、当然ながら暑いものです。それを、汗もかかずに涼しい顔で着るのが夏きもののダンディズムというものですが、本音を言えばできるだけ涼しく着たい。その点、小千谷縮は麻ですから素材としてその条件をクリアしています。「麻はシワになるから」と敬遠される方もいますが、多少のシワは味のうち。絹でも木綿でも座ればシワになります。また、麻のきものの良いところは、家でザブザブ洗濯ができてすぐ乾くこと。ネットに入れて洗濯機で洗った後、着物用ハンガーにかけてパンパンと叩いておくだけで、シワがピント伸びてアイロンがいらないのも魅力です。着る度に洗えるのは気持ちがいいですね。 きものとして、浴衣として 小千谷縮は、「きもの」としても「ゆかた」としても着ることができます。襦袢を着て半襟を出して夏帯を締めればきものになりますし、襦袢を着ないで半幅帯を締めればゆかたのように着こなすことができます。きものとして着る場合も、半襟や帯などの素材次第で単衣としても薄物としても着ることができるので、6月から9月まで色々な着方で楽しめます。そういう意味では、1枚で何役もこなしてくれると便利なきものといえますね。 買いやすい値段もうれしい 小千谷縮はお値段が安いのも魅力。繊細な手仕事による重要無形文化財の小千谷縮は別として、一般に流通している小千谷縮は5万円前後です。これなら手が出しやすいですね。「きものの着付けはできないけどゆかたなら大丈夫」という方にも、大人のゆかたとしておすすめです。木綿より上等な雰囲気になりますし、肌に張り付く木綿より麻の方が遥かに気持ちが良くて快適です。ただ麻は透け感があるので和装の下着は必要です。というわけでいいこと尽くしの小千谷縮。この夏ゆかたの購入を考えている方はぜひ検討してみてはいかがですか。(文/レディ東京編集者 中島有里子) <<< 第6回 大島紬 ←こちらからバックナンバーを読む事ができます 《 今月のワンポイント:草木染め 》 草木染めのきものも魅力的ですね。草木染めは通常、染料となる植物を煮出した液に灰などを加えて媒染して色を出しますが、クサギ(臭木)は媒染なしで鮮やかな水色に染まります。夏に白い花を咲かせ、秋になると赤いガクに宝石のような瑠璃色の実をつけるクサギ。この実の色からは想像もできないほど爽やかなブルーを生み出すのです。クサギという可哀想な名前は、葉に独特の悪臭がすることから付けられたそうです。 更新日:2021年5月12日(水) 『大人の嗜み 〜きもの美を知る〜』についてご意見・ご感想をお聞かせ下さい。 ★このコラムに対するご意見・ご感想をぜひお聞かせください。下記フォームより必要事項をご記入して頂き送信して頂いた方の中から抽選で10名様に『有松絞りの手拭い』をプレゼント!! ★プレゼント応募〆切は5/28(金)12:00まで※当選者の発表は商品の発送をもってかえさせていただきます。(色は選べません) [[aform017]]

暑くも寒くもない、気持ちのいい季節になりました。街を歩くとあちらこちらで春の花々や若葉が目に入り、春のエネルギーを浴びて元気になる気がします。きものを着てお出かけするにも良い季節ですね。さて、外国人にも人気のきもの。一般には派手な色柄の方が外国人には好まれると思われていますが、フランス人の友人たちが「なんてシックなきものなんだ!」と褒めてくれたのは、どれも無地に近い落ち着いた色合いの紬でした。今月はそんなきものの1つ、大島紬を取り上げます。 ■■ 第6回 大島紬 ■■ きものに詳しくない方でも「大島紬」の名前は聞いたことがあるのではないでしょうか。日本三大紬の1つで、きものの女王ともいわれる大島紬。手で紡いだ絹糸を泥染めし、手織りした平織りの着物で、奄美群島の伝統工芸品。本場大島紬は、タテ・ヨコの絣をカスリ合わせて織り上げますが、独特の絣模様は繊細かつ鮮やかで、鉄分を多く含むため虫食いが起きにくいという特徴があります。 奄美大島では、古くから養蚕と織物が盛んに行われていました。天智天皇の頃にはテーチ木(車輪梅)染が始められたとされ、東大寺正倉院の宝物帳にも「南島から褐色紬が献上された」と記されています。大島紬が真綿からの手紡ぎ色から今のように光沢のあるしなやかな糸になったのは明治中期のこと。この頃にいざり機から高機に変わり生産性が向上、高級織物として広く知られるようになりました。 大島紬は鹿児島と奄美大島で織られていますが、泥染めに使う泥は奄美大島にしかありません。そのため泥染めにはすべて奄美大島の泥が使われます。その泥染めに欠かせないのが車輪梅。車輪梅のことを沖縄地方の方言でテーチ木、またはティカチといいます。独特の深い黒は、このテーチ木で何十回も染めた後に泥染めすることで生まれるのです。 泥染めに欠かせないテーチ木(車輪梅) 大島紬ができるまでには30〜40の工程があります。その1つひとつを見るだけでも大変な作業だということが伝わって来ます。絣を作る柄締めのための糸は、12〜16本の糸がまとめて糊付けします。細かく切ったテーチ木は何時間も煮出し、図案に基づいて糸がくくられます。どの工程を見ても、それはもう考えただけで手のかかる作業で、このすべての工程が人の手で行われていることを思うと、大島紬の社会的地位の高さにも納得してしまいます。 図案通りに糸くくりをして染めます 大島紬の美しさは、細かな点と点を合わせて作る絣の美しさです。島の自然の動植物や道具、風土に根ざした伝統的な文様など様々。値段はピンキリですが、目が飛び出るほど高級なものであってもフォーマルな場所には来て行けないのが紬の運命。もっとも、最近では披露宴など格式の高い場以外のパーティーには着て行ってもよいという人も多くなりました。きものの格式をあまり厳格に守ろうとすると、敷居が高くなり着る人が余計に減ってしまいます。きもの文化を守るためにも、明らかに場違いなものは別として、あまり厳格にしない方がいいという気がします。とはいえ、紬は柄ゆきが普段着っぽいものが多いですね。パーティーにふさわしいかどうかは柄にもよるのです。(文/レディ東京編集者 中島有里子) <<< 第5回 結城紬 ←こちらからバックナンバーを読む事ができます 《 今月のワンポイント:履物 》 きものの足元といえば草履。草履にはフォーマルとカジュアルがあり、見た目がまったく違います。正式な場所の草履は裂地かエナメルで色は金・銀・白。かかとの高さは5〜6センチで、高ければ高いほどフォーマルだといわれています。一方、紬や小紋、綿や麻のきものに合わせるのはカジュアルな草履。こちらは素材も様々で、雨に強いウレタン素材・畳表やパナマの台にお洒落な柄の鼻緒で遊びの要素がいっぱいです。意外と目立つ足元。ステキな草履で足取り軽く歩きたいですね。 更新日:2021年4月7日(水)

すっかり春めいてきたこの頃。今年はサクラも早そうだという話を聞きました。そういえば、去年は満開のサクラの頃に大雪が降ったのを思い出します。滅多に見られない美しい風景に心を奪われて、窓の外を飽きずに眺めていました。東京で雪が降るのは春が近づいてからが多いので、今年もそんな景色が見られるかもしれません。 さて、きものは大きく分けて硬いきもの(織り/紬)と柔らかいきもの(染め)の2つがあります。今回は紬の中で最も古い絹織物という結城紬を取り上げます。 ■■ 第5回 結城紬 ■■ 日本三大紬といえば、「結城紬」、「大島紬」、3番目は諸説あって「牛首紬」、「塩沢紬」、「上田紬」などが挙げられます。中でもきもの好きの憧れの1つが結城紬。茨城県結城市で織られる結城紬の歴史は古く、奈良時代にまで遡ります。当時、常陸国の特産物として朝廷に上納された布(あしぎぬ)は紬の原型とされ、奈良・正倉院に保管されています。室町時代になると結城家から幕府・関東官領へも献上されたことから「結城紬」と名を変えました。以後長年にわたり成長してきた結城紬は、昭和31年に国の「重要無形文化財」に、昭和52年には「伝統的工芸品」に指定されています。 ■■結城紬の魅力は真綿紬の風合い 結城は繭から手紡ぎした撚りのかからない無撚糸で織られます。重要無形文化財の指定要件はこれに加え、絣模様をつける場合は手くびりによること、地機(いざり機)という最も原始的な織機で織ること、とされています。糸をくくって絣模様を作る「絣くくり」は、最も単純とされる80亀甲(反物の幅に80個の亀甲模様が入る)で160ヶ所、最高の細かさである200亀甲では約400ヶ所にもなります。1反にかかる絣くくりは数ヶ月にも上る場合もあり、手が変わるとくくる強さが変わるため、最初から最後まで1人の職人さんが行います。結城に行くと機屋さんを見学することができますが、奥順という有名な機屋さんで今はもう作ることができないという店の宝を見せてもらったことがあります。それは細かい亀甲が並んだ美しい反物でした。 ■■ きもの1枚に帯3本 結城紬は柔らかくて軽いといわれますが、新しいものは印象ほど柔らかくはないのです。というのも、3代にわたって洗い張りを繰り返して、水をくぐるほどに着心地が良くなっていくので、昔は「下ろし立ては女中さんに着せろ」といわれたほど。その感覚はちょっとジーンズに似ていますね。 上の画像は無地の結城紬です。ひと足早くサクラの帯を合わせてみました。きものが面白いのは、季節をそのまま表現できるところ。自分がサクラに同化したかのように、帯揚げにも薄いピンクをあしらい、帯締めも緑からピンクの暈しを合わせます。こんな風に、季節そのままの格好をするのは洋服ではあまりしないこと。きものならではの楽しみです。日本文化は季節感を大切にするので、きものにもそういう感覚が反映されるのです。サクラの柄は散るまでの数週間使うことができますが、きもの通の人の中には、節分、桃の節句、七夕といった、年中行事のたった1日だけのための帯や帯留めを用意する人もいます。そういう贅沢も、きものの楽しさのひとつといえます。 同じきものに南風原の花織の帯を合わせてみました。きもの1枚に帯3本といわれるように、帯を変えるとまた違う雰囲気になります。春はもうすぐそこ。みなさんもきものでお出かけしてみてはいかがですか。(文/レディ東京編集者 中島有里子) <<< 第4回 本場黄八丈と久米島紬 ←こちらからバックナンバーを読む事ができます 《 今月のワンポイント:長襦袢 》 きものの下に着る長襦袢は密かなお洒落です。関東では友禅などの華やかなきものより無地やシックな色合いが好まれますが、その分長襦袢で遊びます。袖口や袂からこぼれる色や柄に着る人のセンスを感じてハッとすることがあります。ちなみに、襦袢はポルトガル語のジバン(袖の広い上着)が語源とのこと。16世紀頃南蛮人によってもたらされたそうです。意外ですね。そういえば祖母は「長ジバン」と言っていましたが、それが正しい発音だったということですね。 更新日:2021年3月3日(水) 『大人の嗜み 〜きもの美を知る〜』についてご意見・ご感想をお聞かせ下さい。 ★このコラムに対するご意見・ご感想をぜひお聞かせください。下記フォームより必要事項をご記入して頂き送信して頂いた方の中から抽選で10名様に『有松絞りの手拭い』をプレゼント!! ★プレゼント応募〆切は3/24(水)12:00まで※当選者の発表は商品の発送をもってかえさせていただきます。(色は選べません) [[aform017]]

寒い中にも春の兆しが感じられる季節になりました。不思議なもので、立春を過ぎると途端に空気が春めいてきます。近所を散歩すると、どこからともなく梅の香りがしてきます。よく見るとサクラの枝先には花芽がたくさん付いていて、少しずつ開花に向けて準備していることがわかります。待ち遠しい春はもうすぐそこまで来ているのですね。 さて、趣味的要素の強い紬。どんなに高価でもフォーマルな場には着ていけない、いわば贅沢な普段着。そこが通好みのするところもあります。そんな紬から、今回は春に着たい黄八丈と久米島紬を取り上げました。 ■■ 第4回 本場黄八丈と久米島紬 ■■ ■■ 本場黄八丈 黄八丈は、八丈島に伝わる草木染めの絹織物で、島に自生する植物の煮汁で黄色・樺色・黒の3色に染められた糸で織り上げます。黄色は八丈刈安(コブナ草)、樺色はマダミ(タブの木)、黒色は椎の木の樹皮と泥浸けで染められます。媒染は榊・椿の灰汁など、アルミナ焙煎によって鮮やかな発色と独特の光沢が生まれ、孫の代まで色褪せないといわれます。 江戸時代には年貢として幕府に納められていた黄八丈。江戸後期に「恋娘昔八丈」という人形浄瑠璃で黄八丈の衣装が採用され、後に歌舞伎でも上演されたことから爆発的な人気を誇ったといわれています。現在では経済産業省伝統的工芸品として、また東京都産業労働局東京の伝統工芸品として「本場黄八丈」が指定を受けています。 縞模様や格子柄の黄八丈は、気軽な街着というイメージ。きものに不慣れな人でも縞や格子なら抵抗がないかもしれませんね。画像は春を感じさせる若草色の帯揚げに、道明のグリーン系の爽やかな帯締めを合わせ、遊びでヴィンテージのセルロイドのブローチを帯留めに。こんな楽しいコーディネートでお出かけしたら、気持ちがぐっと上がりますね。 ■■ 久米島紬 こちらは久米島絣です。久米島というと泥染めが有名で人気もありますが、黒地のきものはかなり個性的なのでこのくらいの色の方が着やすいかもしれません。ここでは琉球柄の帯を合わせて個性を強調しました。久米島紬は15世紀に中国から養蚕が伝わり、久米島を起点に沖縄本島、奄美大島を経て本土に伝えられたとされます。大島紬、久留米絣、結城紬などの日本の紬の発祥の地ともいわれます。蚕から取った真綿で紡いだ糸を原料に、天然の草木や泥染めによって染色し、高機で織っていきます。全ての工程を1人の織子が行うのが特徴。江戸時代には貢納布として米に変わって納められていたため、15歳から45歳までの島の女性は「布屋」と呼ばれる集落毎の工房で「御絵図(みえず)」という王府の絵師が描いたデザイン見本の通りに正確に織り上げることが求められました。現在、貴重な久米島紬は国の重要文化財に指定されています。 こちらは泥染めの久米島紬です。いわゆる琉球柄ではなく細かい織り模様が男性的なので、アフリカの木綿の絞りの帯と合わせて個性的な着こなしに。帯揚げはアフリカの大地の色、バッグも中央アフリカのクバ族の布で作ったもの。こんな遊びができるのは紬ならではの楽しさです。 《 今月のワンポイント:たとう紙 》 きものや帯は、「たとう紙」に包んでしまいますが、紐を結んでしまうと中に何が入っているのかわからなくなりますね。そこでおすすめしたいのが、中に入っているきものや帯の写真をこのように貼っておくこと。これなら一目瞭然で中身がわかるので、きものを着る度に色々開けてみる必要がありません。ちょっとしたことですが、これだけでストレスなくきものを着ることができます。 更新日:2021年2月3日(水)

■■ 第2回 西陣織(京都) ■■ きものを着なくても、西陣織の名を知らない人はいないと思います。西陣織とは、「多品種少量生産が特徴の京都(西陣)で生産される先染の紋織物」の総称。「染めのきものに織りの帯」といわれますが、染めの着物の代表格が友禅染、織りの帯の代表格が西陣織で、最も品格の高い帯とされます。昔から「帯は西陣」といわれる所以です。 ■■ 西陣織の起源は古墳時代 西陣織の歴史は古く、5世紀〜6世紀ごろ、大陸からの渡来人である秦氏の一族が、今の京都・太秦あたりに住み着いて養蚕と絹織物を伝えたのがはじまりとされます。平安遷都後、朝廷は織部司(おりべのつかさ)という織物業の役所をつくり、絹織物の技術を受け継ぐ工人(たくみ)によって綾・錦など高級織物の生産をはじめました。「西陣織」と呼ばれるようになったのは室町時代の応仁の乱の後。戦禍を逃れていた職人たちが戻り、織物業を再開した土地が西軍の本陣(西陣)だったことから「西陣織」という名が生まれました。その後も中国の明から技術を取り入れ、幕府の保護のもと、高級織物の産地としてさらに発展を遂げたのです。 ■■ 西陣織の種類は多種多様 「西陣に織れないものはない」といわれるほど多彩な西陣織。何色もの色糸を使って美しい織文様をつくりだす錦(にしき)、とりどりの色糸を使い、刺繍のように縫い取りで柄を降りだす唐織(からおり)、緯糸(よこいと)だけで文様を表現する綴(つづれ)のほか、箔(つかい)、紹把(しょうは)、すくい、紬(つむぎ)、絽(ろ)、紗(しゃ)、羅(ら)、刺練、染と、実にさまざまな染織の技法が用いられています。伝統的な文様から、現代的で斬新な図柄に挑戦する機屋さんまで実にさまざまです。 ■■ 伝統と革新が生み出す魅惑の帯 西陣の帯の製造は、一般的に図案デザインから紋図、特殊な糸の製造や加工、紋紙掘り、引箔、染色、手織りまでが分業化されています。一流の職人の手による技術力と、京都という土地柄が生み出す華やかで雅な帯は美しく、きものを着る女性たちを魅了しますが、機屋さんの中には若いデザイナーのポップな図柄を帯に仕上げ海外で発表する個性的な店もあり、西陣織の可能性を広げています。 <<< 第1回 有松絞り(名古屋) 《 今月のワンポイント:帯留め 》 きもののお洒落は帯周りで決まります。お茶会やフォーマルな席に行く場合は別として、観劇やお食事に行く時なら、帯留めや帯飾りで大いに遊ぶのが楽しいと思います。写真はいずれもアンティークの帯留め。フルーツの帯留めはセルロイドで、元はブローチだったもの。元々ブローチと共用できるものも多いですね。帯留めは「大胆過ぎるかな」と思うくらいのものの方がお洒落。自分の個性を思い切り主張してみてくださいね。 更新日:2020年12月17日(木)

●はじめに● 昭和40年代までは、入学式や卒業式で見かけるお母さんたちの半数ほどは「きもの」でした。日常的にきものを目にした時代。今と何が違うのか考えてみると、きものに限らず、昔の方が服装のTPOが明確だったのですね。今はどんな場所にもカジュアルな服装で行く人が多いですが、当時は普段着とお出かけ着がきっちり分かれていて、「場」によって服装を変えるのが当たり前でした。それは、行く場所や会う相手に対する敬意を服装で表すという、大人の嗜みを誰もが持っていたからでした。 今、時流は「和」。日本文化を見直す様々な動きがある中、「きものを着てみたい」という人が増えています。日本全国には伝統的な美しい染織があり、手間隙かけた手仕事によって支えられています。どんな所でどんな風にきものが作られているかを知ることで、きものへの愛着が湧き、着てみたいという思いが深まるかもしれません。このコラムでは毎月産地を1つ選び、<日本の染織・きもの>の魅力をご紹介していきます。憧れのきものを、まずは知ることから始めてみてはいかがでしょうか。 ■■ 第1回 有松絞り(名古屋) ■■ ■■ 有松絞りの歴史 名古屋から名鉄名古屋本線で有松駅まで約20分。有松は、江戸幕府の東海道整備に伴い尾張藩が慶長13年(1608年)に出した入植者募集のお触書きによって、阿久比から庄九郎はじめ8名が入植して誕生しました。名古屋城築城の折に豊後(大分)の方より絞り染を習い、その後この地域で工夫をし、今日につながる有松・鳴海絞りが生まれます。絞り染めは東海道の旅人の土産物としてもてはやされ有松は繁栄を誇りました。その様子は、北斎や広重の浮世絵に描かれています。 100種類以上もある絞りの技術が様々な柄を創りだします ■■ 高級品の代名詞「絞り」 布に施す最も古い染色技法の1つといわれる「絞り」は、世界中に3000年以上も途絶えることなく現代に継承されている技術です。有松・鳴海絞りは、400年以上の歴史を有し、先人たちのたゆまぬ創意工夫により生まれた100種類以上の絞り技法や染色技法により有松・鳴海地方は世界に誇る無類の絞りの産地として、世界中から評価されています。有松絞りというと藍染の浴衣のイメージを持つ方も多いかもしれませんが、総絞りは昔から高級呉服の代名詞。小紋から格調高い振袖まで様々なきものがあります。しかし、総絞りの着物には第一礼装に必要な「五つ紋」「三つ紋」が入れられないため、格は準礼装となります。振袖の場合は、未婚女性の略式礼装着なので、総絞りのものであってもフォーマルな席に来ていけます。 様々な絞りの技を組み合わせた豪華な振袖 ■■ 金さん・銀さんも有松絞りの括り手だった 熟練の職人によるいくつもの工程を経て絞りは出来上がりますが、模様を決定する大事な作業が「括り」。布を堅く糸で括り、そこだけ染料が入らないように防染するのです。根気と熟練が必要な作業で、通常4〜5人の家庭へ次々と廻されて加工されますが、技法により様々な加工方法と異なった道具が使われます。ちなみに、あの金さん・銀さんも有松絞りの括り手だったそうです。括りが終わった布は専業の染屋によって各種の染色が行われます。その後、糸抜きをしますが、絞りの種類によっては1反に3〜4日かかるものも。何から何まで手のかかる手仕事の連続です。美しい有松絞りは、こうしてやっと1つの反物になるのです。 ■■ 美しい街並みも見どころ 保存地区の規模は小さいながら、1本道の両側に古い町並みが連なり見応えがあります。尾張藩の手厚い庇護の下、目覚ましい発展を遂げ、全国に名を知られるようになった有松でしたが、天明4年(1784年)の大火で全村のほとんどが消失。大火後20年ほどで殆ど復興を果たしました。これを機に、旧東海道沿いの町屋は瓦葺に改め、うだつを設け、構造も塗籠造りとしたことから、現在見られるような商家が立ち並ぶ町並みとなりました。 (左・右上)竹田嘉兵衛商店 (右下)歌川広重 東海道五拾三次「鳴海 名物有松絞」 《 今月のワンポイント:無地の帯揚げ 》 洋服では、スカーフやアクセサリー上手に使いこなすのがお洒落の見せどころ。同じように、きものでも小物次第で同じきもの・同じ帯を全く違う印象に見せることができます。小物でキマるといっても過言ではないくらい。そこでおすすめなのが、縮緬の無地の帯揚げです。価格が手頃なので、使いやすい色を何色か集めておくと便利。帯の間に入れてしまうので、意外とハッキリした色を持ってきても派手過ぎず素敵です。 更新日:2020年11月18日(水)

vol.11 風呂敷ブームを先取り〜風呂敷エコバッグでレジ袋有料化に備えます〜 ■■■ はじめに ■■■ 2018年10月、環境省が、レジ袋の有料化を義務付ける事などを盛り込んだ素案を提出しました。お店によっては既に有料化されていましたが「国内では年450億枚のレジ袋が使われていると推定されている」と先日の日経新聞の記事を拝見し驚愕致しました。 海外どこへ行って買い物しても、日本の様に袋をくれる国(都市)はない為、逆に不親切だと感じた事もありますが、小さな飴やガム類ひとつを購入しても当たり前の様に袋に入れてくれる、そんな必要もないですね。 さて、有料化が現実問題となりますと、1枚5円程度のレジ袋も日々の事であればばかになりません。マイバッグ・エコバッグを持参する方が増えると想像でき、そこで注目されそうなのが風呂敷ではないでしょうか。風呂敷を使って作る風呂敷バッグ、その中でも、先ずはこれだけ覚えておけば大活躍間違いなしの簡単な使い方をご一緒に、確認致しましょう。 ■■■ 風呂敷で作る簡単エコバッグ ■■■ 1. 風呂敷を広げ隣同士の角を真結び(固結び)します。2. 残った2か所の角も真結び(固結び)します3. そのままでもバッグとして使用できます!が・・・4. 3.の片方の持ち手に残りの持ち手をくぐらせると (中身が飛び出さず) より安心感がアップします! ■■■ 風呂敷豆知識 ■■■ 風呂敷といっても素材・サイズなど様々です。【素材】 正絹・レーヨン・ポリエステル・綿などがありますが、重い物を包んで(入れて)運ぶならしっかりした綿素材、もしくは軽くて水に強いポリエステルなどがお勧めです。 ※写真左:綿 写真右:ポリエステル 【サイズ】 袱紗のような約45cmからハンカチサイズの50cm、一般的なサイズの70cm前後(68cm、75cmなど)、少し大き目で90cm、より大きなサイズの105cmや130cmもあります。ちょっとしたお買い物であれば70cm前後のサイズがカバンに入れて日々持ち歩くにはかさばらず販売されている柄のバリエーションも豊富ですが、バッグとして使用する事を考えますと、結ぶ事で元のサイズより小さくなりますので90cm以上の大きめがお勧めです。 ※写真左:97cmサイズ 写真右:75cmサイズ 【色・デザイン】 色やデザインも沢山あり昔のイメージとは全く違います。季節で使い分ける、(バッグとして持つ訳ですから)その日の服装とコーディネートするのも楽しいです。白黒のモノトーン、撥水加工の施されたものもあります。 ■■■ 最後に 〜痛くない、重くない、軽い、かさばらない〜 ■■■ 風呂敷を選ばずとも、市販のエコバッグも軽くて折畳めてお手軽価格な商品が沢山販売されていますので、もちろんあえて風呂敷に拘る必要はありません。しかしながら風呂敷愛好家の意見としましては、持ち手の幅を自由に調整できるので、重い物を入れて腕や肩にかけても痛くありませんし細い紐の持ち手と比べても重さを感じません。また、一枚の布ですので畳んでカバンの中に忍ばせておいても軽いし邪魔になりません。包むものの形を選ばないのも良い点ですし、汚れても洗えるのはこの上なく便利です。 つらつらと風呂敷の良さを羅列致しましたが、少し大きなハンカチを持ち歩く感覚ですので、どうぞ明日からはカバンの中に一枚風呂敷を忍ばせて、買い物の際にはさっと広げてぱっと結んでストレスフリーに持ち運びする風呂敷エコバッグ生活を実践してみて下さい。 << vol.10 和紅茶でほっこりする ◎ P R O F I L E ◎ 歳時記・和菓子研究家 柳澤ゆり子 パリへ行く!と思い立ち仕事を辞めて渡仏。自国の文化を学ぶ必要を強く感じ、帰国後は着物・煎茶道・和菓子・折形・風呂敷・金継などを学ぶ。ほんの一滴、和のエッセンスを加える事で潤う日々の暮らし。花・茶・和菓子といった身近なアイテムを取り入れることで、四季を感じる暮らしをもっと楽しんでいただけたら、そんな想いで地元鎌倉を中心に活動中。モットーは「美味しく楽しく美しく」。 季節の和菓子と日本茶を楽しむ会・風呂敷塾を主宰。京都造形芸大(通信)和の伝統文化コース卒業/日本茶アドバイザー/風呂敷愛好家 更新日:2018年11月7日(水)

vol.10 和紅茶でほっこりする ** はじめに ** 秋の色も日一日と濃くなって参りました。食いしん坊な私にとっては待ちに待った食欲の秋の到来です。特に栗やお芋はそのままでも、和菓子にしても洋菓子にしても美味しいという大変危険な存在でもある訳ですが、これらを和紅茶と一緒に楽しむのがまた、この季節の楽しみの一つにもなっています。 ** 和紅茶とは ** 最近よく耳にする「和紅茶」、これは日本国内で育てられた国産茶葉を用い日本国内で加工された紅茶のことを指します。「国産紅茶」「日本紅茶」「地紅茶」などと呼ばれるよりも、この「和紅茶」という呼び名が可愛いということもあるかも知れませんが、広める為に活動なさっている方達のお力もあり、数年前よりちょっとしたブームにもなっています。 紅茶が日本に初めて入ってきたのは明治時代、イギリスから伝わったとされています。緑茶が中国から持ち込まれたのが奈良時代ですので、我々日本人と紅茶の出会いは随分と新しいものになりますね。また、意外かもしれませんが茶葉は緑茶も紅茶も同じ、発酵の度合いの違いで不発酵茶(緑茶)、半発酵茶(烏龍茶)、発酵茶(紅茶)などが作られています。不発酵茶の代表である緑茶は、茶の葉を蒸す・炒るなどして最初に葉の酸化酵素を不活性化しています。一方、発酵茶の代表である紅茶は、酸化酵素の働きを最大限に活用して作られます。 ** 和紅茶の楽しみ方 ** 《 和の器をあわせる 〜NIKKOのティーカップ×羊羹〜 》 和紅茶を楽しむならティーカップも日本のメーカーのものを選んでみます。(これは個人的な感想ですが)和紅茶は全般的に渋味が少なく丸いお味なので、お饅頭や羊羹といった和菓子にもとても合うと思っています。 《 〜益子焼きの小ぶりの茶噐×柿の道明寺〜 》 緑茶を頂くようなこぶりの茶噐で頂くのもありです。道明寺だけでなく大福の様な重めのお菓子にもあいますし、柿やイチジク・梨・ぶどうなど秋の果物との相性も◎です。 《 〜カフェオレボウル×干菓子〜 》 カジュアルにお抹茶を楽しむ雰囲気で、カフェオレボウルで楽しむのも面白いです。お干菓子との相性も良かったですね。 《 柿・栗・かぼちゃといった秋の美味しいものたちと合わせる 》 ** 終わりに ** 気温が下がってくると女性は特に「冷え」が気になるものです。そんな季節にも発酵茶なので身体を温めてくれる紅茶は良いですね。ミルクはもちろんのこと、生姜やシナモンなど冷え症に効果のあるスパイスとの相性も良いので、色々な楽しみ方が可能です。香りによる精神安定効果も期待できる紅茶、この秋は和紅茶を選んでお好みのご褒美とともにぜひ「ほっこり」なさってください。 << vol.9 秋は心静かに月を愛でる ◎ P R O F I L E ◎ 歳時記・和菓子研究家 柳澤ゆり子 パリへ行く!と思い立ち仕事を辞めて渡仏。自国の文化を学ぶ必要を強く感じ、帰国後は着物・煎茶道・和菓子・折形・風呂敷・金継などを学ぶ。ほんの一滴、和のエッセンスを加える事で潤う日々の暮らし。花・茶・和菓子といった身近なアイテムを取り入れることで、四季を感じる暮らしをもっと楽しんでいただけたら、そんな想いで地元鎌倉を中心に活動中。モットーは「美味しく楽しく美しく」。 季節の和菓子と日本茶を楽しむ会・風呂敷塾を主宰。京都造形芸大(通信)和の伝統文化コース卒業/日本茶アドバイザー/風呂敷愛好家 更新日:2018年10月3日(水)

旬のサンマを使ってDHA・EPAを美味しくいただく♪ 魚にはオメガ3(DHAとEPA)と言われる良質の油が含まれており、サンマやサバなどの青魚には特に多く含まれています。DHAは脳を活性化、EPAは血液中の中性脂肪を下げ、血液をサラサラにし動脈硬化を防ぐアンチエイジング効果があります。今が旬のサンマをサッと焼いて合わせ調味料とたっぷりの粉山椒をかけたらあっという間に出来上がりの簡単メニュー。タレもしっかり頂くことでお魚のDHA・EPAを逃がさず摂れちゃいます。加熱調理の際は、加熱しても酸化しにくいオメガ9の米油やなたね油を使用しましょう。 (オメガオイルの詳しい特徴については、オメガさと子のホームページでご覧いただけます) −*−*−*−*−*− 材 料 −*−*−*−*−*− ●サンマ ...............2尾(3枚おろし) ●米油 ............... 大さじ1 ●小麦粉 ............... 大さじ1●しょうゆ ............ 大さじ1 ●砂糖 ............... 大さじ1 ●お酒 ............... 小さじ2●粉山椒 ............... 大さじ1 ●ブロッコリースプラウト(無くても可) ●ご飯 −*−*−*−*−*− 手 順 −*−*−*−*−*− 1. サンマを適当な大きさにカットし、小麦粉を全体にしっかりまぶす。 2.テフロン加工のフライパンに米油を敷き、サンマの皮目を下にして焼き目がつくように中火で焼き、裏返してさらに1分ほど焼く。 3.一度火を止める。しょうゆと砂糖とお酒を合わせたものをかけて全体にからませたら再度中火にかけて30秒煮詰める。再度火を止めて粉山椒をたっぷり振りかける。 4.ご飯の上に盛りつけて、ブロッコリースプラウトを飾ったら出来上がり。 POINT ☆小麦粉はムラなくしっかりまぶしておくと皮がカリッと仕上がります。 ☆身が薄いので長く焼き過ぎて身が固くならないようにしましょう。 ☆小麦粉アレルギーの方はグルテンフリーの大豆&米粉パウダーをご活用下さい。 << vol.10 枝豆と豆乳のポタージュ えごまオイルかけ オメガオイル料理研究家 オメガさと子 HP https://omegasatoko.com 更新日:2018年10月3日(水)

vol.9 秋は心静かに月を愛でる〜お月見団子は豆腐使用でヘルシーに〜 ●● はじめに ●● 澄んだ秋空に虫の声が美しく響く季節がやって参りました。 この季節は月が一年で一番美しく輝く季節でもありますね。 そんな季節は、せっかくなので美味しい月見団子も手作りしてお月見を楽しみたいと思います。 ●● お月見について少し復習 ●● お月見は平安時代、遣唐使によって中国より持ち帰られた習慣のひとつとされています。 当初は、貴族たちが管弦とともに楽しんだり、池に舟を浮かべ水面に映る月を楽しんだそうです。雅な遊びですね。江戸時代に入り一般庶民にも広まると、豊作祈願・収穫祭としても親しまれるようになる中でススキや月見団子をお供えする様に。 お月見と言えば「十五夜」ですが、これは旧暦8月15日(今年2018年は9月24日)の夜の事で、中秋の名月(旧暦の秋にあたる7〜9月の真ん中に出る月)やこの頃に収穫される芋や豆にちなんで芋名月、豆名月などとも呼ばれます。一方「十三夜」は旧暦9月13日の事を指し、その月は十五夜に次いで美しいと言われています。こちらは日本特有の習慣で、栗の収穫時期に当たる事もあり栗名月とも呼ばれます。 月見団子と一緒に「ススキ」をなぜ飾るかと言うと、神様を招く依り代となる稲穂の代用品として供えられる事に加え、ススキの切り口が鋭いので魔除けの意味も兼ねているそうです。 ●● 簡単&ヘルシーな月見団子の作り方をご紹介 ●●〜材料は豆腐(絹・木綿どちらでも)と白玉粉だけ〜1. 豆腐1 : 白玉粉1 をよくまぜてお好みのサイズに丸めて茹でます 2. お団子が浮いてきたら、そこから更に2〜3分程度茹でます 3. 茹であがったら冷水にとり、熱がとれたら水気を切ります 何とも簡単!ヘルシーでもちもちなお団子ができあがります! ●● お月見団子の供え方を確認 ●●十五夜は15個、十三夜には13個のお団子を供えます。 十五夜の場合は下から9個・4個・2個、十三夜の場合は下から9個・4個と積みあげます。 また、自分達が楽しむためではなく、あくまでも月が主役ですので、日本に古来より伝わる左上位(左を右よりも上位とする)の考え方に則って、月から見て左に自然界のもの(ススキや収穫物)、右に人工のもの(月見団子)を供えるのが正しいそうです。 ●● 終わりに ●● 月を見上げる際にいつも思いだすのが「月に住むと考えられている生き物は国によって違う」という事です。日本では「餅をつくウサギ」と言われていますが、ヨーロッパでは大きなハサミの蟹であったり、アラビアでは吠えるライオンであったりするそうです。面白いです。世界中の人々がそれぞれの場所でそれぞれの思いを胸に同じ月を眺めていると思うと、熱いものが込み上げて参ります。日本だけでなく世界各地で自然災害の多い昨今です、澄んだ秋空に輝く月に世界平和も願いたいですね。 << vol.8 線香花火の東西を楽しむ ◎ P R O F I L E ◎ 歳時記・和菓子研究家 柳澤ゆり子 パリへ行く!と思い立ち仕事を辞めて渡仏。自国の文化を学ぶ必要を強く感じ、帰国後は着物・煎茶道・和菓子・折形・風呂敷・金継などを学ぶ。ほんの一滴、和のエッセンスを加える事で潤う日々の暮らし。花・茶・和菓子といった身近なアイテムを取り入れることで、四季を感じる暮らしをもっと楽しんでいただけたら、そんな想いで地元鎌倉を中心に活動中。モットーは「美味しく楽しく美しく」。 季節の和菓子と日本茶を楽しむ会・風呂敷塾を主宰。京都造形芸大(通信)和の伝統文化コース卒業/日本茶アドバイザー/風呂敷愛好家 更新日:2018年9月5日(水)