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LADY TOKYO は毎月第一水曜 日本経済新聞 読者にお届け
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■■ 第17回 季節を纏う ■■ ■■きものならではの楽しみ方 きものの魅力の1つは、季節をそのまま纏える面白さだと思います。サクラの季節には、春色のきものにサクラの柄の帯を締めて、自分もサクラになったような感覚を味わい、秋には金茶のきものや帯でイチョウ並木の風景に溶け込むといった感じに。また洋服ときものでは、着る気分や選ぶ色柄がまったく変わってしまうのも不思議です。私は洋服ではピンクを着ることはありませんが、きものでは写真のような色を身につけたくなります。洋服だと何となく気恥ずかしくて敬遠してしまう花柄も、きものなら着ることができるのです。 とはいえ、はじめからそうだったわけではなく、色物を着ることに慣れていなかった最初の頃は、普段着ているモノトーンの洋服の延長線上の渋い無地が安心でした。きものは面積が大きいので、華やかな色は気恥ずかしかったのです。それに関東人の私はそもそもが渋好みなので、それがカッコ良く思えたということもあります。ところが、きものに慣れてくると、不思議と色柄ものが着たくなるのですね。それは、染織の技術の極みが柄の中にあるのがわかってきて、その良さを感じるようになるからです。最初の頃は民藝っぽくて着にくいと思っていた久米島紬や黄八丈も今では大好きですし、結城紬も複雑な柄に魅力を感じるようになりました。 ■■羽織問題 私はお茶を習っていないので、ルールに縛られずに気ままにきものを楽しんでいます。そのため、本当に寒い時期に着るコートは持っていますが、羽織を持っていなくて、春先や秋口には大判のカシミヤのショールを羽織っていました。もうずっと前から羽織を作らなくてはと思ってはいたのです。でも、帯つきで出かけられる季節しか着ていなかったこともあり、ついつい後回しになっていました。ところが、最近きもの仲間ができて集まる機会が増えました。そんな中、彼女たちときもの談義をしていると、やはり1枚は羽織を持っていないと不便という話になり、この機会に羽織を買おうと思いました。またタイミング良く、素敵な羽織紐も見つけてしまったのです。羽織紐といっても紐ではなく、象牙とオニキスのビーズや水牛の角でできたアールヌーボーの雰囲気の作家もの。これに合う羽織を探さなくては。 ある集まりにきもので出席することが決まっているので、今から反物を選んで仕立てる時間はありません。そんな時に友人が教えてくれた「洗える長はおり」。既製品で安価ですが、柄が江戸小紋というのが気に入りました。何種類かの柄がありましたが、私は白地に黒の毛万筋を選びました。見た目はダークグレーになりますので、これならあの羽織紐にも合いそうです。間に合わせですが、結構使えそうです。先日合った友人が、白黒の大きな市松柄の羽織を着ていました。古いきものを仕立て直したものということで、裏はやはり古いきものからとった華やかな赤い柄でとても素敵でした。いつか好みに合う反物を見つけたら、ちゃんと仕立てたいものです。 (文/レディ東京編集者 中島有里子) <<< 第16回 フォーマルは着物に限る ←こちらからバックナンバーを読む事ができます 更新日:2022年3月2日(水) 『大人の嗜み』についてご意見・ご感想をお聞かせ下さい。 ★このコラムに対するご意見・ご感想をぜひお聞かせください。下記フォームより必要事項をご記入して頂き送信して頂いた方の中から抽選で10名様に『有松絞りの手拭い』をプレゼント!! ★プレゼント応募〆切は3/31(木)12:00まで※当選者の発表は商品の発送をもってかえさせていただきます。(色は選べません) [[aform017]]

■■ 第16回 フォーマルは着物に限る ■■ ■■絹の質感に叶うものはない 結婚式やパーティーなどのフォーマルな場に招待されると、何を着ていこうか悩みますね。若いお嬢さんならプチプラのドレスを着るのも可愛くてよいと思いますが、立派な大人はそういうわけにはいきません。デザインはもちろん素材も上質でしっかりしているものを選びたいし、そうなるとそれなりにお値段も張ります。でも、たとえハイブランドのドレスを着たとしても、日本人の体型で着こなすのは難しく、せっかくの服もどこか借りてきたもののようでしっくりしない印象になりがちです。その点、きものは日本人をもっとも美しく見せてくれる衣裳です。オールシルクの光沢や質感、意匠のすべてがゴージャスで、どんな素晴らしいドレスにも負けない堂々たる風格と存在感があります。 パーソナルファッションディレクターの女性の還暦祝いのパーティーに招かれて、久しぶりに華やかな場所に行くことになりました。40名ほどのパーティーで、ドレスコードは「サムシングレッド」。そこでパッと浮かんだのが紅白の水引の帯締めです。1本の半分が赤、半分が白で組んであるチョット遊び心のあるデザインなのですが、還暦祝いのパーティーにはピッタリでしょう。結婚式と違って気軽なパーティーなので、こんな小物を選ぶのが楽しいかなと思うのです。きものは何を着ようかまだ迷っていますが、黒地の綸子にマーガレットの大きな柄が染められたヴィンテージが第一候補です。このきものは、本来なら年齢に合わないもの。逆にいえば気軽なパーティーでしか着られないようなものなので、この際思いっきり遊んでしまおうと思うのです。 ■■余談ですがかんざしの話 フォーマル繋がりでかんざしの話。娘たちの七五三や成人式の時、私は伝統的な江戸つまみかんざしを求めました。出会いはあるデパートの職人展。巷には比較的安価な今どきのかんざしもありますが、「伝統」「職人」という言葉に弱い私は、娘たちのハレの日のために、ぜひ職人さんが作った本物のつまみかんざしを選びたいと思ったのです。職人さんの技が生み出す繊細なかんざしは、今どきのかんざしにない美しさがあります。 最初に購入したのは長女の7歳の七五三の時で、写真右のポンポン菊のような形のもの。赤い糸で作られた長い房が付いていて、とてもかわいらしいデザインです。その後、成人式のために購入したのが左の鶴・南天・松の3つ。赤い振袖にとても似合っていました。かんざしは、それぞれ次女の時にも使い、友人のお嬢さんの七五三や成人式でも活躍しました。今もきれいなままの状態で保管してあるので、孫の成人式にも使えるでしょう。伝統的な良いものは、何年経っても色褪せることはないのです。 (文/レディ東京編集者 中島有里子) <<< 第15回 新春に締めたい楽しい帯 ←こちらからバックナンバーを読む事ができます 更新日:2022年2月2日(水) 『大人の嗜み』についてご意見・ご感想をお聞かせ下さい。 ★このコラムに対するご意見・ご感想をぜひお聞かせください。下記フォームより必要事項をご記入して頂き送信して頂いた方の中から抽選で10名様に『有松絞りの手拭い』をプレゼント!! ★プレゼント応募〆切は2/28(月)12:00まで※当選者の発表は商品の発送をもってかえさせていただきます。(色は選べません) [[aform017]]

■■ 第15回 新春に締めたい楽しい帯 ■■ ※帯はすべてSUZUKI ■■ヴィンテージの帯で遊ぶ 新しい年の幕開けですね。今年1年間の健康と幸せを祈願しに初詣に行かれた方も多いのではないでしょうか。さて、松の内は7日までですが、小正月の15日まではまだお正月気分ですし、1月いっぱいは新春ムードが続きます。そんな1月にきものを着るなら、やはりどこかにおめでたい柄を入れたいところです。それも思い切りおめでたい感じにしたい。そんな時に選びたいのがこんなおめでたい柄の帯です。 上の帯はいずれもヴィンテージ。松竹梅に鶴の柄の紅型は、まさにお正月向け。末広がり(扇子)の総柄は、十三詣りの着物を帯に仕立て直したものだそうです。可愛いでしょう。片岡珠子さんの絵のような富士山の塩瀬は、現代にはない感覚。なんて可愛いの! せっかくきものを着るのですから、このくらい遊ぶのが面白いと思うのです。私は、あまり真面目くさった着方ではなく、ちょっとお茶目な着方をしたいので、こういった帯はツボにハマります。しかも、ヴィンテージの帯はお安いのです。きちんとした場所にご挨拶に行くとき以外なら、こういう帯でちょっと遊ぶのもいいですね。 ■■帯周りのお洒落 帯周りの小物といえば帯揚げと帯締め。紬を着ることが多い私は、無地の縮緬の帯揚げが好きで何色も持っていますが、同じように無地の帯締めも扱いやすくて好きです。帯締めは上等の組紐だと結構いいお値段ですので、そうそう気軽に購入することができません。その点、無地の帯締めはお値段も手頃な上、ハッキリとした色合が良いアクセントになるのでおすすめです。そうそう、帯締めを使い終わった後は、写真のように房の部分を固定するように結んで保管します。几帳面な方は使う度に房にキャップを付けたり紙で巻いたりしますが、結ぶ方法でも十分房は整います。 ※写真:瓢箪と牡丹の帯留め以外はすべてSUZUKI また、帯周りのアクセサリーとして、「帯留」や「根付」で季節を遊ぶ方法があります。写真左は帯留。扇子に赤いビーズが付いたものは、お正月にぴったりの天晴れなデザイン。サンゴの瓢箪もおめでたいモチーフなので1月に着けるのにふさわしい帯留です。また、右の写真は、ちょっと季節外れになりますが、ヴィンテージの小物を根付にしたクリスマス向けのもの。年中行事はほとんどが1日限りのものです。例えば、節分向けに鬼などが描かれた帯をあつらえた場合、1年に1日しか締めることができませんが、こんなアクセサリーならチョット帯に挿すだけで1日限りの行事をそのまま装いに取り入れることができます。大人のお遊びという感じで粋ですね。帯留めや根付は、和のテイストでなくても大丈夫。あえて洋物を着ける方がこなれた感じで素敵だと思うので、手持ちのブローチを帯留め代わりに使うのもおすすめです。 (文/レディ東京編集者 中島有里子) ※協力:SUZUKI 03(3872)4450 <<< 第14回 お正月こそきもの ←こちらからバックナンバーを読む事ができます 更新日:2022年1月5日(水) 『大人の嗜み』についてご意見・ご感想をお聞かせ下さい。 ★このコラムに対するご意見・ご感想をぜひお聞かせください。下記フォームより必要事項をご記入して頂き送信して頂いた方の中から抽選で10名様に『有松絞りの手拭い』をプレゼント!! ★プレゼント応募〆切は1/31(月)12:00まで※当選者の発表は商品の発送をもってかえさせていただきます。(色は選べません) [[aform017]]

■■ 第14回 お正月こそきもの ■■ ■■ハレの日に着るきもの 古来より、日本にはハレとケという世界観があります。ケは日常、ハレはお祭りや年中行事などを行う非日常です。人間の領域と神様の領域と言い換えてもよいかもしれません。東京ではその境目がだいぶ曖昧になって、新興住宅地では秋のお祭りも形ばかりになっていますが、それでもハレの代表格であるお正月だけは、日本人が揃って特別な気持ちになります。元日の朝、家々に飾られた門松や玄関飾りを目にすると、なんとも清々しい気持ちになります。 元旦は晴れ着を着て、家族揃って新年の挨拶をしてからおせち料理をいただくというのが子供の頃の習慣でした。普段は洋風の生活スタイルで過ごしていても、お正月ばかりは「和」一色になるのです。器もお正月用の漆や赤絵が登場して華やかになります。服装も食卓もフォーマルで、気持ちがシャンとします。子供たちは、七五三の時に作ってもらった晴れ着を着せてもらって大喜びです。日常とは違う特別な雰囲気。「日本」を感じる貴重な時間です。 ■■紬だって十分ハレ着です さて大人になった今、お正月に着るきものというと、私の場合はやはり紬になってしまいます。いわゆる晴れ着ではないですが、きもの人口が少ない今は、きものを着ているだけで十分ハレな感じになります。とはいえ少しは華やかにしたいので、手摺り疋田を選びます。手摺り疋田は遠目には総絞りのように見えますが、伝統工芸士の職人さんの手による型染めです。細かい疋田模様を型紙に彫るのは大変な作業。こういう職人さんがどんどんいなくなるのは寂しい限りです。写真上の黒地の帯は真綿紬で、何にでも合わせやすく締めやすいので、頻繁に登場するお気に入り。同じきものでも帯を変えると、がらりと違う印象になります。私はお太鼓に結ぶことは殆どなく、フォーマル以外は大抵銀座結びです。その方が自分らしい気がするからです。 結局、和装の決め手は帯周りかなぁと思います。帯揚げ・帯締めをたくさん持っていると、同じきものと帯でも変化のある着こなしが楽しめますし、帯留めや帯飾り(根付)という魅力的なアクセサリーもあります。さて、来年の初詣はどちらの装いで行きましょうか。 (文/レディ東京編集者 中島有里子) <<< 第13回 母のきものを私らしく着る ←こちらからバックナンバーを読む事ができます 更新日:2021年12月1日(水) 『大人の嗜み』についてご意見・ご感想をお聞かせ下さい。 ★このコラムに対するご意見・ご感想をぜひお聞かせください。下記フォームより必要事項をご記入して頂き送信して頂いた方の中から抽選で10名様に『有松絞りの手拭い』をプレゼント!! ★プレゼント応募〆切は12/28(火)12:00まで※当選者の発表は商品の発送をもってかえさせていただきます。(色は選べません) [[aform017]]

■■ 第13回 母のきものを私らしく着る ■■ ■■新しいものを足すのがポイント 自分できものを持っていなくても、実家に帰ればタンスの中に家族のきものが眠っているという方は多いのではないでしょうか。私の実家にも、母のきものがたくさんありました。きもの好きの母は普段からよく着ていたので、よそゆきの立派なものではなく紬が多かったのですが、そんな中から私が着られそうなものを貰ってきて最初はそれで練習していました。 きものに流行はないと言う人もいますが、そんなことは全然なくて、やはり時代感というものがあります。明治には明治の、大正には大正の、昭和には昭和の色があるのです。そのため、古いきものや帯に小物まで古いものを使うと、どうしても古臭く、野暮ったくなりがちです。流石に明治や大正のきものを着ようという人は少ないと思いますし、そこまで古いと布が弱くなっていることがあるので着用には向かないかと思いますが、安心して着ることができる昭和のきものでも、ひと工夫が必要です。 昭和感のあるきものを自分らしく着るなら、どこかに新しいものを入れることをおすすめします。イチオシは、挿し色として存在感を発揮する無地の縮緬の帯揚げ。数千円で手に入るので、いい色を見つけたら買っておくと便利です。白地のものを買って好みの色に染めてもいいと思います。私は新しい色を見つけると買っていたので、いつの間にか20色以上集まって重宝しています。無地の縮緬がいいのは、色目がはっきりしていて、コーディネート全体を締める役割をしてくれるところです。帯締めも、無地を何色か持っていれば結構おしゃれのバリエーションを楽しめます。 身内のきものを受け継ぐとき、寸法が合わないという問題が生じます。母は私よりかなり小柄だったので身丈も裄も短く、直さなければ着られません。好みの色柄なら直してでも着るところでしたが、そうではなかったので結局自分好みのきものを買うことになりました。その際に大いに利用したのが古着屋さん、フリマサイト、オークションサイトです。ネットできものを探すのは初心者には難しいと思いますが、古着屋さんなら試着もできますし、色々と親切に教えてくれるので安心して購入できます。 きものは長く着られるようにできています。解けば元の反物に戻すことができるので、親が着たものを解いて娘のために仕立て直す、それをまたその子どもが着るというように、長く大切に受け継いできました。でも今の時代、それが必ずしも身内のきものでなくてもよいと思うのです。誰かが作ったきものを、好みの合う別の誰かが受け継ぐということで、日本のきもの文化が続いていけばよいのではないでしょうか。 (文/レディ東京編集者 中島有里子) <<< 第12回 いつもと違う自分を楽しむ ←こちらからバックナンバーを読む事ができます 更新日:2021年11月3日(水) 『大人の嗜み』についてご意見・ご感想をお聞かせ下さい。 ★このコラムに対するご意見・ご感想をぜひお聞かせください。下記フォームより必要事項をご記入して頂き送信して頂いた方の中から抽選で10名様に『有松絞りの手拭い』をプレゼント!! ★プレゼント応募〆切は11/30(火)12:00まで※当選者の発表は商品の発送をもってかえさせていただきます。(色は選べません) [[aform017]]

■■ 第12回 いつもと違う自分を楽しむ ■■ ■■きものは非日常のエッセンス 慌ただしい日常を送る私たちの暮らしには、動きやすく合理的な洋服があれば事足りるかもしれません。でも、ちょっと気分を変えたいとき、ゆったりと流れる時間軸で過ごしたいとき、いつもと違う自分を演出したいときに、きものを着ることができると簡単にその世界に行けるように思います。 洋服のセンスが抜群のある友人、「きものは非日常のエッセンス」と言って、ライブやピアノのレッスンにきものを着て出かけます。きものはいつもの生活に「非日常」を運んでくれるのです。ある種の変身願望を満たしてくれるし、美しい日本の文化を身に纏っているという満足感も与えてくれます。何より、きものを着ていると特別扱いしてもらえるのが嬉しいところ。レストランでいい席に案内されたり、お店で特別なサービスを受けたりすることがあります。きもの姿の人はレストランにとっても嬉しいお客様なのです。 ■■ 白無垢のロシア人 非日常といえば、もう随分前のことになりますが、知人のロシア人の結婚式に呼ばれたことがあります。親日家の新郎はニューヨークを拠点に事業を展開する実業家で、モルジブやパリ、モスクワにも住まいがあって、日本では麻布十番の高層マンションに部屋を持ち、数ヶ月に1度日本に来ては1ヶ月ほど滞在していました。私が新婦と知り合った時、ふたりは婚約中だったのですが、ある時結婚式の招待状が届いて驚きました。挙式の場所が愛宕神社だったのです。 ロシア人カップルが日本の神社で結婚式を挙げるというだけでも驚きでしたが、行ってみてまたビックリ。新郎新婦を含め、招待されて来日したロシア人の多くが和服姿だったのです。それほど広くない愛宕神社の境内が、きものを着たロシア人で埋まるという不思議な光景。でも、パリコレのモデルだった新婦は、白無垢が驚くほど似合っていたし、黒紋付の新郎とのツーショットはゴージャスで素敵でした。リッチな外国人が憧れる結婚式が日本の伝統美だというのを知って、なんとも嬉しく誇らしい気持ちになりました。 披露宴は日本式。赤い打ち掛けにお色直しした新婦を迎え、新郎新婦が高砂に座ります。樽酒を割って升で乾杯の後、新郎の挨拶で始まり、途中に友人たちのスピーチ。お食事はフレンチでしたが、途中新婦はウェディングドレスに着替え、キャンドルサービスの後にウェディングケーキ入刀。そして最後は両親に花束贈呈。こういう日本式の披露宴をやりたかったのだそうです。面白いですね。 私ももちろんきもので出席しました。薄いグレーの紋付の鮫小紋に、黒字に大振りの花模様の唐織の帯を締め、白の縮緬の帯揚げに紅白の水引の帯締。外国人のパーティーなので派手めに。きものは上から下までオールシルクです。フォーマルな席では、ドレスに引けを取らないきものが安心です。ザ・ペニンシュラで4時間続いた披露宴の後は、最上階のバー貸し切りのアフターパーティー。素晴らしく豪勢な結婚式でした。(文/レディ東京編集者 中島有里子) <<< 第11回 ルールより体感で着る ←こちらからバックナンバーを読む事ができます 更新日:2021年10月6日(水) 『大人の嗜み』についてご意見・ご感想をお聞かせ下さい。 ★このコラムに対するご意見・ご感想をぜひお聞かせください。下記フォームより必要事項をご記入して頂き送信して頂いた方の中から抽選で10名様に『有松絞りの手拭い』をプレゼント!! ★プレゼント応募〆切は10/31(日)12:00まで※当選者の発表は商品の発送をもってかえさせていただきます。(色は選べません) [[aform017]]

■■ 第11回 ルールより体感で着る ■■ ■■1枚のきものを春から秋まで きものには季節のルールがあって、6月・9月は裏のない単(ひとえ)、7月・8月は薄物、それ以外は袷(あわせ)と決まっています。でも温暖化で気温の高い季節が多くなり、そのルール自体が体感と合わなくなってきているし、季節によって何枚も必要となると、せっかく興味が湧いてもはじめの一歩を踏み出せなくなります。もちろんお茶の世界ではそういうわけにはいきませんが、洋服でカジュアルとフォーマルがあるのと同様に、きものもラフに着られるものがあった方がいいですね。洋服でいうところのデニムや、プチプラの感覚できものを着ることができたら、きもの人口がもっと増える気がします。 先日、ある着付け講師の女性に目から鱗が落ちるようなお話を聞きました。その方は、浴衣としても着られる1枚の単を、中に着るものを変えることで4月から10月終わりまで着回すことを提唱しているのです。つまり春には袷の、夏には麻の長襦袢を着て暑さ寒さを調節し、真夏には同じきものを浴衣として楽しむ。そして秋になったらまた袷の長襦袢を着る、という方法で晩秋まで同じきものを楽しもうというのです。それ、いいなぁと思います。そのくらいラフなら、きものを楽しむ人が増えるのではないでしょうか。幅広い季節に着られるものを選ぶとしたら、お値段も洋服程度の木綿のきものがいいのかな、と思います。きもの初心者なら、チェックやモダンな花柄などが抵抗が無いかもしれません。最近はグレンチェックなどもあって、洋服感覚で選ぶことができます。 ■■ 「作家もの」のきもの 伝統的な染織は日本全国にあって、長年培われた伝統のきものはそれぞれ魅力的です。それとは別に日本には数多くの染織作家がいて、個性あふれる作品を作っています。糸を草木で染め、その糸を織って反物を作る人、1枚のアートのような素晴らしい染めをする人、自分で型を掘って染める人など様々。そんな中に、重要無形文化財保持者(人間国宝)の志村ふくみさんの下で染織を学んだある作家さんがいます。志村さんは、草木染めの糸を使用した紬織の作品で知られ、素朴でありながら奥行きのある作品はきもの好きの憧れとなっています。紬が好きな私も志村さんのファンなのですが、人間国宝の作品となるととても手が出せません。でもその弟子の作家さんの作品は、同じテイストでありながら私でも買える値段。ある展示会でその作家さんのきものを見て、私は一目惚れしてしまったのです。それが写真のきものと帯です。縦縞のグレーは確か樫で染めたものだったと思います。そして、細く入った線の爽やかな水色は、臭木(くさぎ)の実で染めたもの。真っ赤な萼に囲まれた黒紫の実からは想像のできない色ですが、臭木は焙煎なしでこの水色に染まると聞いて感動しました。草木染めは自然を纏う感覚が素敵なのです。写真は春のコーディネートなので小物をピンクや若草色になっていますが、秋色の小物にすると雰囲気が変わります。 (文/レディ東京編集者 中島有里子) <<< 第10回 初めてのきもの ←こちらからバックナンバーを読む事ができます 更新日:2021年9月1日(水) 『大人の嗜み』についてご意見・ご感想をお聞かせ下さい。 ★このコラムに対するご意見・ご感想をぜひお聞かせください。下記フォームより必要事項をご記入して頂き送信して頂いた方の中から抽選で10名様に『有松絞りの手拭い』をプレゼント!! ★プレゼント応募〆切は9/30(木)12:00まで※当選者の発表は商品の発送をもってかえさせていただきます。(色は選べません) [[aform017]]

■■ 第10回 初めてのきもの ■■ 祖母が裁縫に使っていた絹糸 ■■着付もできないのに買った単衣 同居していた祖母は、きもので生活していました。私が小学生くらいまでは、朝起きたときにはすでに着替えてお行儀よく座っていたので、祖母の寝間着姿を見たことがないくらいでした。紺地や深緑の地の地味なきものに半幅帯を貝の口に結ぶのが定番でしたが、あれはどんなきものだったのだろう。祖母はきものの仕立てができたので、お小遣い稼ぎに知人のきものを縫ったり、母のために縫ったり、時には私や妹のために縫ったりと、いつでもお裁縫をしていました。きもの好きの母は、お出かけというと和装。入学式や卒業式はもちろん、授業参観日もきものでしたが、当時はそういうお母さんがクラスの中に10人くらいはいたのです。 そんなわけで、きものに馴染みのある生活をしてはいましたが、かといって大人になってから自分で着るようになったかというとまったくそうではなく、成人式で振袖を着て以来、40代半ばまではきものと無縁の生活をしていました。それが突然目覚めたのは、たまたま知人の染色家の個展でインドシルクを染めた生地で作ったきものを見たからです。彼女は普段は同じ生地で洋服を作っているのですが、その時は初の試みできものを作って着ていて、それを見たときカジュアルでいいなぁ、こんなきものなら着てみたいなぁと思ったのです。それで、着付もできないのに、紫の単衣とそれに合う帯を買いました。それが自分で買った初めてのきものでした。 せっかくきものと帯を買ったのに、着付を習ったのはそれから2年ほど経ってから。ある時、着付教室の広告を見つけ、近所の友人を誘って教室に通い始めたのです。着付ができるようになると世界が広がります。一緒に習った友人がきもの仲間になり、用もないのに着てみたり、きもので出かけたり、きもの談義をしたりと、きものの楽しさにハマっていきました。そのうち着付けも15分か20分でできるようになり、洋服とあまり変わらない感覚で気楽に着られるようになりました。そんなこんなで、ようやくきものが生活に入ってきて、いざという時は和服という選択ができるようになったのです。いつか年をとったときに、祖母のようにゆるゆると楽に着られるようになっていたらいいなぁというのが今の目標です。 ■■ 和服のときに持つバッグ きものや浴衣を着るとき、小物のすべてを揃えようとすると、お財布もしまう場所も大変です。いかにも和装用というのは野暮ったい気もするし、第一モノが入らないのは困ります。私たちが普段バッグに入れて持ち歩くものは、財布、スマホ、ハンカチとティッシュ、メガネケースや化粧ポーチなど結構たくさんあります。小ぶりのきもの用バッグと布のトートバッグを併せて持ち歩くのをよく見かけますが、あれはどうもスマートじゃなくて好きではないのです。そんなことをするくらいなら、大きめの普通のバッグを1つ持った方がカッコイイ。そんなことも含めて、私は洋服のときに持つバッグをそのまま和服でも持つようにしています。もちろんショルダーバッグはNGですが、ハンドバッグであれば大きくても小さくても構わないと思います。浴衣に合わせるなら、やっぱり涼しげな籠がいいですね。山葡萄の籠は洋服でも浴衣でも使えるお気に入り。物がたっぷり入るところも便利です。(文/レディ東京編集者 中島有里子) <<< 第9回 夏きもので日本橋へ ←こちらからバックナンバーを読む事ができます 更新日:2021年8月4日(水) 『大人の嗜み』についてご意見・ご感想をお聞かせ下さい。 ★このコラムに対するご意見・ご感想をぜひお聞かせください。下記フォームより必要事項をご記入して頂き送信して頂いた方の中から抽選で10名様に『有松絞りの手拭い』をプレゼント!! ★プレゼント応募〆切は8/31(火)12:00まで※当選者の発表は商品の発送をもってかえさせていただきます。(色は選べません) [[aform017]]

■■ 第9回 夏きもので日本橋へ ■■ 夏のきものほど素敵なものはない 夏のきものは涼しげで素敵です。蝉の羽のように透けた素材や、ざっくりと織られた帯地など、日本の染織の個性的な素材感がひときわ目立つような気がします。真夏の暑い日にきものを着て、汗ひとつかかずに佇んでいる女性を見ると、憧れと尊敬の念を禁じえません。だって、見た目には涼しい夏のきもの、着る者にとっては死ぬほど暑いのですから。冷房が効いた部屋ばかりならいいのですが、移動で外を歩く時などは汗だくになってしまいます。特に最近の夏の暑さは尋常ではありませんから、この季節にきものを着るには相当なやせ我慢が必要なのです。その心意気も含めて、夏きものはやっぱり"粋"なのです。カッコイイのです。根性のない私は、お気に入りの琉球絣がもう何年もタンスの肥やし。今年こそ頑張って着てみようかなぁと思っています。 ■■ ゆかたの下着 ゆかたのいいところは長襦袢がいらず1枚で着られること。とはいえ、いざ着る時に意外と大事な下着問題。ゆかたの下に何を着たらいいのかわからない人も多いようです。ゆかたは元々お風呂上りに着る寝巻きのようなもの。外出することは前提ではなく素肌の上に直接着るものでした。でも、今は立派な外出着。生地によっては透けるものもあるので流石に下着は必要です。きもの用のスリップ式の下着なら胸元も足元もカバーするので安心ですが、「そんなの持ってない」というなら、タンクトップとキャミソールでも十分代用できます。要するに、袖口や裾から素肌が露出しなければいいのです。因みにブラとショーツは普段のもので大丈夫。生地によっても透け感が違うので、透けない色を選ぶことは大事ですね。なるべく涼しく着られるように、それぞれが工夫すればいいと思います。 ■■ きもので得する「日本橋きものパスポート」 さて、この夏きものやゆかたでお出かけするなら断然日本橋が面白そうです。2021年4月3日で日本橋が開橋110年を迎えたのを記念して、日本橋・人形町にきものやゆかたで行くと色んな特典が受けられる「日本橋きものパスポート」が使えるからです。この企画には60店鋪が参加、きものまたはゆかたで対象店舗を利用すると、パスポート(冊子またはスマホWEB表示)を提示するだけでお得なサービスが受けられます。老舗レストランやフルーツパーラー、和菓子屋さんなど日本橋の主だったお店が参加しているので、これはなかなかいいかも。日本橋きものパスポートの利用期間は2022年3月31日(木)まで。涼しくなってからのんびり訪ねるのも悪くないですね。参加店に置いてあるパスポートを現地で調達するかWEBで手に入れて利用してください。(文/レディ東京編集者 中島有里子) <<< 第8回 竺仙のゆかた ←こちらからバックナンバーを読む事ができます 《 今月のワンポイント:うそつき 》 夏はできるだけ薄着にしたいので長襦袢の代わりに「うそつき」を着ます。うそつきだなんて面白い名前だなぁと思いますが、これは長襦袢と肌着が合体したもので、木綿の肌襦袢に半衿と付け外しのできる袖が付いていて、上からきものを着ると長襦袢を着ているように見えるのです。だからうそつき。洗濯機でジャブジャブ洗えるのも便利で、夏のきものの必需品です。 更新日:2021年7月7日(水) 『大人の嗜み 〜きもの美を知る〜』についてご意見・ご感想をお聞かせ下さい。 ★このコラムに対するご意見・ご感想をぜひお聞かせください。下記フォームより必要事項をご記入して頂き送信して頂いた方の中から抽選で10名様に『有松絞りの手拭い』をプレゼント!! ★プレゼント応募〆切は7/31(土)12:00まで※当選者の発表は商品の発送をもってかえさせていただきます。(色は選べません) [[aform017]]

花火大会や夏祭りといえば、若い女の子はこぞってゆかたを着ます。普段と違う女性らしさをボーイフレンドにアピールしたり、友だち同士で盛り上がったり、女の子たちは実に生き生きと楽しそうです。でも大人の女性はどうでしょう。ゆかたを着る機会は意外と少ないのではないでしょうか。大人が涼しげにゆかたを着る姿は素敵なものです。今までゆかたと縁がなかった方も、この夏はぜひ大人のゆかたに挑戦してみませんか。 ■■ 第8回 竺仙のゆかた ■■ 創業天保13年(1842年)、ゆかたといえば「竺仙」というほど有名な日本橋の老舗です。創業当時から現在に至るまで、企画・生産・販売を一貫して行い、江戸染ゆかたの独特の技術を活かし、ゆかたから江戸小紋へと世間に名を馳せ、歌舞伎の世界にも登場したという竺仙。時代を超えた奥行きの深さ、伝統的でありながら洗練された豊富な柄が、多くのファンを引きつける魅力です。「ゆかたも今や夏きもの」という5代目当主の言葉にもあるように、和服というだけで注目されるこの頃。まずは素敵なゆかたを選ぶことから始めてはいかがでしょうか。 竺仙の魅力は染めの種類の豊富さ (左)大胆な柄が目を惹く竺仙紬ゆかた「万寿菊の柄」と麻織八寸帯(右)店主おすすめの新作・奥州小紋「松の柄」と麻兵児帯 ひと口にゆかたといっても生地の種類や染め方により様々。竺仙のゆかたアイテムは、コーマ白地、地染・コーマローケツ・コーマ玉むし・紬ゆかた・綿芭蕉玉むし・紅梅小紋・奥州小紋・縮小紋中形・絽小紋中形・絹紅梅小紋・麻小紋・絽長板・縮長板等50アイテム、約1000柄にも上ります。染め方は、長板中形、注染、引き染、先染、ローケツ染、しごき染、まぼろしの染めといわれるリバーシブルの染色法があり、それぞれの特徴を活かした魅力的な柄が染められます。 大人が着るから素敵なゆかた 上の写真は紫陽花を染め上げた奥州小紋。大人の女性の魅力を引き出す1枚です。原案である竺仙の紫陽花の柄を日本画家・宮下真理子氏にアレンジし描いてもらったという創作柄。細かいタッチで葉脈まで丁寧に描かれていて優しい雰囲気が魅力です。またグッと大人っぽい下の2点は、大胆な柄が目を惹く竺仙紬ゆかた「万寿菊の柄」と麻織八寸帯(左)と、紫陽花と同じく宮下真理子氏による奥州小紋「松の柄」と麻兵児帯。こんなゆかたを纏ったら気持ちもグッと上がりそうですね。 ゆかたで過ごす夏の宵 長引くコロナ禍で、夜のお出かけが少なくなった今、自宅で食事をする人が増えています。必然的に家飲みも増えますね。そんな夫婦の時間をたまには2人揃ってゆかたで過ごしてみてはいかがでしょうか。居ながらにしてお出かけ気分が味わえるし、普段と違う姿にお互いを惚れ直すかも。ゆかたはそんな新鮮さを運んでくれます。(文/レディ東京編集者 中島有里子) <<< 第7回 小千谷縮 ←こちらからバックナンバーを読む事ができます 《 今月のワンポイント:パナマ 》 夏の素材というのは清々しくていいものです。着物でいえば、麻が肌に触れた時のひんやりした感触は気持ちいいし、綿紅梅、絹紅梅も爽やかです。夏の着物を粋に決めたいなら、足元はパナマ。パナマ帽と同じパナマで、原料は中米産のヤシに似た多年草。さらっとした履き心地は最高です。ただし、こちらはあくまでお洒落用。紬と同じく高価でもカジュアルなので、履いていく場所は選びます。 更新日:2021年6月2日(水) 『大人の嗜み 〜きもの美を知る〜』についてご意見・ご感想をお聞かせ下さい。 ★このコラムに対するご意見・ご感想をぜひお聞かせください。下記フォームより必要事項をご記入して頂き送信して頂いた方の中から抽選で10名様に『有松絞りの手拭い』をプレゼント!! ★プレゼント応募〆切は6/30(水)12:00まで※当選者の発表は商品の発送をもってかえさせていただきます。(色は選べません) [[aform017]]

■■ 第17回 季節を纏う ■■ ■■きものならではの楽しみ方 きものの魅力の1つは、季節をそのまま纏える面白さだと思います。サクラの季節には、春色のきものにサクラの柄の帯を締めて、自分もサクラになったような感覚を味わい、秋には金茶のきものや帯でイチョウ並木の風景に溶け込むといった感じに。また洋服ときものでは、着る気分や選ぶ色柄がまったく変わってしまうのも不思議です。私は洋服ではピンクを着ることはありませんが、きものでは写真のような色を身につけたくなります。洋服だと何となく気恥ずかしくて敬遠してしまう花柄も、きものなら着ることができるのです。 とはいえ、はじめからそうだったわけではなく、色物を着ることに慣れていなかった最初の頃は、普段着ているモノトーンの洋服の延長線上の渋い無地が安心でした。きものは面積が大きいので、華やかな色は気恥ずかしかったのです。それに関東人の私はそもそもが渋好みなので、それがカッコ良く思えたということもあります。ところが、きものに慣れてくると、不思議と色柄ものが着たくなるのですね。それは、染織の技術の極みが柄の中にあるのがわかってきて、その良さを感じるようになるからです。最初の頃は民藝っぽくて着にくいと思っていた久米島紬や黄八丈も今では大好きですし、結城紬も複雑な柄に魅力を感じるようになりました。 ■■羽織問題 私はお茶を習っていないので、ルールに縛られずに気ままにきものを楽しんでいます。そのため、本当に寒い時期に着るコートは持っていますが、羽織を持っていなくて、春先や秋口には大判のカシミヤのショールを羽織っていました。もうずっと前から羽織を作らなくてはと思ってはいたのです。でも、帯つきで出かけられる季節しか着ていなかったこともあり、ついつい後回しになっていました。ところが、最近きもの仲間ができて集まる機会が増えました。そんな中、彼女たちときもの談義をしていると、やはり1枚は羽織を持っていないと不便という話になり、この機会に羽織を買おうと思いました。またタイミング良く、素敵な羽織紐も見つけてしまったのです。羽織紐といっても紐ではなく、象牙とオニキスのビーズや水牛の角でできたアールヌーボーの雰囲気の作家もの。これに合う羽織を探さなくては。 ある集まりにきもので出席することが決まっているので、今から反物を選んで仕立てる時間はありません。そんな時に友人が教えてくれた「洗える長はおり」。既製品で安価ですが、柄が江戸小紋というのが気に入りました。何種類かの柄がありましたが、私は白地に黒の毛万筋を選びました。見た目はダークグレーになりますので、これならあの羽織紐にも合いそうです。間に合わせですが、結構使えそうです。先日合った友人が、白黒の大きな市松柄の羽織を着ていました。古いきものを仕立て直したものということで、裏はやはり古いきものからとった華やかな赤い柄でとても素敵でした。いつか好みに合う反物を見つけたら、ちゃんと仕立てたいものです。 (文/レディ東京編集者 中島有里子) <<< 第16回 フォーマルは着物に限る ←こちらからバックナンバーを読む事ができます 更新日:2022年3月2日(水) 『大人の嗜み』についてご意見・ご感想をお聞かせ下さい。 ★このコラムに対するご意見・ご感想をぜひお聞かせください。下記フォームより必要事項をご記入して頂き送信して頂いた方の中から抽選で10名様に『有松絞りの手拭い』をプレゼント!! ★プレゼント応募〆切は3/31(木)12:00まで※当選者の発表は商品の発送をもってかえさせていただきます。(色は選べません) [[aform017]]

■■ 第16回 フォーマルは着物に限る ■■ ■■絹の質感に叶うものはない 結婚式やパーティーなどのフォーマルな場に招待されると、何を着ていこうか悩みますね。若いお嬢さんならプチプラのドレスを着るのも可愛くてよいと思いますが、立派な大人はそういうわけにはいきません。デザインはもちろん素材も上質でしっかりしているものを選びたいし、そうなるとそれなりにお値段も張ります。でも、たとえハイブランドのドレスを着たとしても、日本人の体型で着こなすのは難しく、せっかくの服もどこか借りてきたもののようでしっくりしない印象になりがちです。その点、きものは日本人をもっとも美しく見せてくれる衣裳です。オールシルクの光沢や質感、意匠のすべてがゴージャスで、どんな素晴らしいドレスにも負けない堂々たる風格と存在感があります。 パーソナルファッションディレクターの女性の還暦祝いのパーティーに招かれて、久しぶりに華やかな場所に行くことになりました。40名ほどのパーティーで、ドレスコードは「サムシングレッド」。そこでパッと浮かんだのが紅白の水引の帯締めです。1本の半分が赤、半分が白で組んであるチョット遊び心のあるデザインなのですが、還暦祝いのパーティーにはピッタリでしょう。結婚式と違って気軽なパーティーなので、こんな小物を選ぶのが楽しいかなと思うのです。きものは何を着ようかまだ迷っていますが、黒地の綸子にマーガレットの大きな柄が染められたヴィンテージが第一候補です。このきものは、本来なら年齢に合わないもの。逆にいえば気軽なパーティーでしか着られないようなものなので、この際思いっきり遊んでしまおうと思うのです。 ■■余談ですがかんざしの話 フォーマル繋がりでかんざしの話。娘たちの七五三や成人式の時、私は伝統的な江戸つまみかんざしを求めました。出会いはあるデパートの職人展。巷には比較的安価な今どきのかんざしもありますが、「伝統」「職人」という言葉に弱い私は、娘たちのハレの日のために、ぜひ職人さんが作った本物のつまみかんざしを選びたいと思ったのです。職人さんの技が生み出す繊細なかんざしは、今どきのかんざしにない美しさがあります。 最初に購入したのは長女の7歳の七五三の時で、写真右のポンポン菊のような形のもの。赤い糸で作られた長い房が付いていて、とてもかわいらしいデザインです。その後、成人式のために購入したのが左の鶴・南天・松の3つ。赤い振袖にとても似合っていました。かんざしは、それぞれ次女の時にも使い、友人のお嬢さんの七五三や成人式でも活躍しました。今もきれいなままの状態で保管してあるので、孫の成人式にも使えるでしょう。伝統的な良いものは、何年経っても色褪せることはないのです。 (文/レディ東京編集者 中島有里子) <<< 第15回 新春に締めたい楽しい帯 ←こちらからバックナンバーを読む事ができます 更新日:2022年2月2日(水) 『大人の嗜み』についてご意見・ご感想をお聞かせ下さい。 ★このコラムに対するご意見・ご感想をぜひお聞かせください。下記フォームより必要事項をご記入して頂き送信して頂いた方の中から抽選で10名様に『有松絞りの手拭い』をプレゼント!! ★プレゼント応募〆切は2/28(月)12:00まで※当選者の発表は商品の発送をもってかえさせていただきます。(色は選べません) [[aform017]]

■■ 第15回 新春に締めたい楽しい帯 ■■ ※帯はすべてSUZUKI ■■ヴィンテージの帯で遊ぶ 新しい年の幕開けですね。今年1年間の健康と幸せを祈願しに初詣に行かれた方も多いのではないでしょうか。さて、松の内は7日までですが、小正月の15日まではまだお正月気分ですし、1月いっぱいは新春ムードが続きます。そんな1月にきものを着るなら、やはりどこかにおめでたい柄を入れたいところです。それも思い切りおめでたい感じにしたい。そんな時に選びたいのがこんなおめでたい柄の帯です。 上の帯はいずれもヴィンテージ。松竹梅に鶴の柄の紅型は、まさにお正月向け。末広がり(扇子)の総柄は、十三詣りの着物を帯に仕立て直したものだそうです。可愛いでしょう。片岡珠子さんの絵のような富士山の塩瀬は、現代にはない感覚。なんて可愛いの! せっかくきものを着るのですから、このくらい遊ぶのが面白いと思うのです。私は、あまり真面目くさった着方ではなく、ちょっとお茶目な着方をしたいので、こういった帯はツボにハマります。しかも、ヴィンテージの帯はお安いのです。きちんとした場所にご挨拶に行くとき以外なら、こういう帯でちょっと遊ぶのもいいですね。 ■■帯周りのお洒落 帯周りの小物といえば帯揚げと帯締め。紬を着ることが多い私は、無地の縮緬の帯揚げが好きで何色も持っていますが、同じように無地の帯締めも扱いやすくて好きです。帯締めは上等の組紐だと結構いいお値段ですので、そうそう気軽に購入することができません。その点、無地の帯締めはお値段も手頃な上、ハッキリとした色合が良いアクセントになるのでおすすめです。そうそう、帯締めを使い終わった後は、写真のように房の部分を固定するように結んで保管します。几帳面な方は使う度に房にキャップを付けたり紙で巻いたりしますが、結ぶ方法でも十分房は整います。 ※写真:瓢箪と牡丹の帯留め以外はすべてSUZUKI また、帯周りのアクセサリーとして、「帯留」や「根付」で季節を遊ぶ方法があります。写真左は帯留。扇子に赤いビーズが付いたものは、お正月にぴったりの天晴れなデザイン。サンゴの瓢箪もおめでたいモチーフなので1月に着けるのにふさわしい帯留です。また、右の写真は、ちょっと季節外れになりますが、ヴィンテージの小物を根付にしたクリスマス向けのもの。年中行事はほとんどが1日限りのものです。例えば、節分向けに鬼などが描かれた帯をあつらえた場合、1年に1日しか締めることができませんが、こんなアクセサリーならチョット帯に挿すだけで1日限りの行事をそのまま装いに取り入れることができます。大人のお遊びという感じで粋ですね。帯留めや根付は、和のテイストでなくても大丈夫。あえて洋物を着ける方がこなれた感じで素敵だと思うので、手持ちのブローチを帯留め代わりに使うのもおすすめです。 (文/レディ東京編集者 中島有里子) ※協力:SUZUKI 03(3872)4450 <<< 第14回 お正月こそきもの ←こちらからバックナンバーを読む事ができます 更新日:2022年1月5日(水) 『大人の嗜み』についてご意見・ご感想をお聞かせ下さい。 ★このコラムに対するご意見・ご感想をぜひお聞かせください。下記フォームより必要事項をご記入して頂き送信して頂いた方の中から抽選で10名様に『有松絞りの手拭い』をプレゼント!! ★プレゼント応募〆切は1/31(月)12:00まで※当選者の発表は商品の発送をもってかえさせていただきます。(色は選べません) [[aform017]]

■■ 第14回 お正月こそきもの ■■ ■■ハレの日に着るきもの 古来より、日本にはハレとケという世界観があります。ケは日常、ハレはお祭りや年中行事などを行う非日常です。人間の領域と神様の領域と言い換えてもよいかもしれません。東京ではその境目がだいぶ曖昧になって、新興住宅地では秋のお祭りも形ばかりになっていますが、それでもハレの代表格であるお正月だけは、日本人が揃って特別な気持ちになります。元日の朝、家々に飾られた門松や玄関飾りを目にすると、なんとも清々しい気持ちになります。 元旦は晴れ着を着て、家族揃って新年の挨拶をしてからおせち料理をいただくというのが子供の頃の習慣でした。普段は洋風の生活スタイルで過ごしていても、お正月ばかりは「和」一色になるのです。器もお正月用の漆や赤絵が登場して華やかになります。服装も食卓もフォーマルで、気持ちがシャンとします。子供たちは、七五三の時に作ってもらった晴れ着を着せてもらって大喜びです。日常とは違う特別な雰囲気。「日本」を感じる貴重な時間です。 ■■紬だって十分ハレ着です さて大人になった今、お正月に着るきものというと、私の場合はやはり紬になってしまいます。いわゆる晴れ着ではないですが、きもの人口が少ない今は、きものを着ているだけで十分ハレな感じになります。とはいえ少しは華やかにしたいので、手摺り疋田を選びます。手摺り疋田は遠目には総絞りのように見えますが、伝統工芸士の職人さんの手による型染めです。細かい疋田模様を型紙に彫るのは大変な作業。こういう職人さんがどんどんいなくなるのは寂しい限りです。写真上の黒地の帯は真綿紬で、何にでも合わせやすく締めやすいので、頻繁に登場するお気に入り。同じきものでも帯を変えると、がらりと違う印象になります。私はお太鼓に結ぶことは殆どなく、フォーマル以外は大抵銀座結びです。その方が自分らしい気がするからです。 結局、和装の決め手は帯周りかなぁと思います。帯揚げ・帯締めをたくさん持っていると、同じきものと帯でも変化のある着こなしが楽しめますし、帯留めや帯飾り(根付)という魅力的なアクセサリーもあります。さて、来年の初詣はどちらの装いで行きましょうか。 (文/レディ東京編集者 中島有里子) <<< 第13回 母のきものを私らしく着る ←こちらからバックナンバーを読む事ができます 更新日:2021年12月1日(水) 『大人の嗜み』についてご意見・ご感想をお聞かせ下さい。 ★このコラムに対するご意見・ご感想をぜひお聞かせください。下記フォームより必要事項をご記入して頂き送信して頂いた方の中から抽選で10名様に『有松絞りの手拭い』をプレゼント!! ★プレゼント応募〆切は12/28(火)12:00まで※当選者の発表は商品の発送をもってかえさせていただきます。(色は選べません) [[aform017]]

■■ 第13回 母のきものを私らしく着る ■■ ■■新しいものを足すのがポイント 自分できものを持っていなくても、実家に帰ればタンスの中に家族のきものが眠っているという方は多いのではないでしょうか。私の実家にも、母のきものがたくさんありました。きもの好きの母は普段からよく着ていたので、よそゆきの立派なものではなく紬が多かったのですが、そんな中から私が着られそうなものを貰ってきて最初はそれで練習していました。 きものに流行はないと言う人もいますが、そんなことは全然なくて、やはり時代感というものがあります。明治には明治の、大正には大正の、昭和には昭和の色があるのです。そのため、古いきものや帯に小物まで古いものを使うと、どうしても古臭く、野暮ったくなりがちです。流石に明治や大正のきものを着ようという人は少ないと思いますし、そこまで古いと布が弱くなっていることがあるので着用には向かないかと思いますが、安心して着ることができる昭和のきものでも、ひと工夫が必要です。 昭和感のあるきものを自分らしく着るなら、どこかに新しいものを入れることをおすすめします。イチオシは、挿し色として存在感を発揮する無地の縮緬の帯揚げ。数千円で手に入るので、いい色を見つけたら買っておくと便利です。白地のものを買って好みの色に染めてもいいと思います。私は新しい色を見つけると買っていたので、いつの間にか20色以上集まって重宝しています。無地の縮緬がいいのは、色目がはっきりしていて、コーディネート全体を締める役割をしてくれるところです。帯締めも、無地を何色か持っていれば結構おしゃれのバリエーションを楽しめます。 身内のきものを受け継ぐとき、寸法が合わないという問題が生じます。母は私よりかなり小柄だったので身丈も裄も短く、直さなければ着られません。好みの色柄なら直してでも着るところでしたが、そうではなかったので結局自分好みのきものを買うことになりました。その際に大いに利用したのが古着屋さん、フリマサイト、オークションサイトです。ネットできものを探すのは初心者には難しいと思いますが、古着屋さんなら試着もできますし、色々と親切に教えてくれるので安心して購入できます。 きものは長く着られるようにできています。解けば元の反物に戻すことができるので、親が着たものを解いて娘のために仕立て直す、それをまたその子どもが着るというように、長く大切に受け継いできました。でも今の時代、それが必ずしも身内のきものでなくてもよいと思うのです。誰かが作ったきものを、好みの合う別の誰かが受け継ぐということで、日本のきもの文化が続いていけばよいのではないでしょうか。 (文/レディ東京編集者 中島有里子) <<< 第12回 いつもと違う自分を楽しむ ←こちらからバックナンバーを読む事ができます 更新日:2021年11月3日(水) 『大人の嗜み』についてご意見・ご感想をお聞かせ下さい。 ★このコラムに対するご意見・ご感想をぜひお聞かせください。下記フォームより必要事項をご記入して頂き送信して頂いた方の中から抽選で10名様に『有松絞りの手拭い』をプレゼント!! ★プレゼント応募〆切は11/30(火)12:00まで※当選者の発表は商品の発送をもってかえさせていただきます。(色は選べません) [[aform017]]

■■ 第12回 いつもと違う自分を楽しむ ■■ ■■きものは非日常のエッセンス 慌ただしい日常を送る私たちの暮らしには、動きやすく合理的な洋服があれば事足りるかもしれません。でも、ちょっと気分を変えたいとき、ゆったりと流れる時間軸で過ごしたいとき、いつもと違う自分を演出したいときに、きものを着ることができると簡単にその世界に行けるように思います。 洋服のセンスが抜群のある友人、「きものは非日常のエッセンス」と言って、ライブやピアノのレッスンにきものを着て出かけます。きものはいつもの生活に「非日常」を運んでくれるのです。ある種の変身願望を満たしてくれるし、美しい日本の文化を身に纏っているという満足感も与えてくれます。何より、きものを着ていると特別扱いしてもらえるのが嬉しいところ。レストランでいい席に案内されたり、お店で特別なサービスを受けたりすることがあります。きもの姿の人はレストランにとっても嬉しいお客様なのです。 ■■ 白無垢のロシア人 非日常といえば、もう随分前のことになりますが、知人のロシア人の結婚式に呼ばれたことがあります。親日家の新郎はニューヨークを拠点に事業を展開する実業家で、モルジブやパリ、モスクワにも住まいがあって、日本では麻布十番の高層マンションに部屋を持ち、数ヶ月に1度日本に来ては1ヶ月ほど滞在していました。私が新婦と知り合った時、ふたりは婚約中だったのですが、ある時結婚式の招待状が届いて驚きました。挙式の場所が愛宕神社だったのです。 ロシア人カップルが日本の神社で結婚式を挙げるというだけでも驚きでしたが、行ってみてまたビックリ。新郎新婦を含め、招待されて来日したロシア人の多くが和服姿だったのです。それほど広くない愛宕神社の境内が、きものを着たロシア人で埋まるという不思議な光景。でも、パリコレのモデルだった新婦は、白無垢が驚くほど似合っていたし、黒紋付の新郎とのツーショットはゴージャスで素敵でした。リッチな外国人が憧れる結婚式が日本の伝統美だというのを知って、なんとも嬉しく誇らしい気持ちになりました。 披露宴は日本式。赤い打ち掛けにお色直しした新婦を迎え、新郎新婦が高砂に座ります。樽酒を割って升で乾杯の後、新郎の挨拶で始まり、途中に友人たちのスピーチ。お食事はフレンチでしたが、途中新婦はウェディングドレスに着替え、キャンドルサービスの後にウェディングケーキ入刀。そして最後は両親に花束贈呈。こういう日本式の披露宴をやりたかったのだそうです。面白いですね。 私ももちろんきもので出席しました。薄いグレーの紋付の鮫小紋に、黒字に大振りの花模様の唐織の帯を締め、白の縮緬の帯揚げに紅白の水引の帯締。外国人のパーティーなので派手めに。きものは上から下までオールシルクです。フォーマルな席では、ドレスに引けを取らないきものが安心です。ザ・ペニンシュラで4時間続いた披露宴の後は、最上階のバー貸し切りのアフターパーティー。素晴らしく豪勢な結婚式でした。(文/レディ東京編集者 中島有里子) <<< 第11回 ルールより体感で着る ←こちらからバックナンバーを読む事ができます 更新日:2021年10月6日(水) 『大人の嗜み』についてご意見・ご感想をお聞かせ下さい。 ★このコラムに対するご意見・ご感想をぜひお聞かせください。下記フォームより必要事項をご記入して頂き送信して頂いた方の中から抽選で10名様に『有松絞りの手拭い』をプレゼント!! ★プレゼント応募〆切は10/31(日)12:00まで※当選者の発表は商品の発送をもってかえさせていただきます。(色は選べません) [[aform017]]

■■ 第11回 ルールより体感で着る ■■ ■■1枚のきものを春から秋まで きものには季節のルールがあって、6月・9月は裏のない単(ひとえ)、7月・8月は薄物、それ以外は袷(あわせ)と決まっています。でも温暖化で気温の高い季節が多くなり、そのルール自体が体感と合わなくなってきているし、季節によって何枚も必要となると、せっかく興味が湧いてもはじめの一歩を踏み出せなくなります。もちろんお茶の世界ではそういうわけにはいきませんが、洋服でカジュアルとフォーマルがあるのと同様に、きものもラフに着られるものがあった方がいいですね。洋服でいうところのデニムや、プチプラの感覚できものを着ることができたら、きもの人口がもっと増える気がします。 先日、ある着付け講師の女性に目から鱗が落ちるようなお話を聞きました。その方は、浴衣としても着られる1枚の単を、中に着るものを変えることで4月から10月終わりまで着回すことを提唱しているのです。つまり春には袷の、夏には麻の長襦袢を着て暑さ寒さを調節し、真夏には同じきものを浴衣として楽しむ。そして秋になったらまた袷の長襦袢を着る、という方法で晩秋まで同じきものを楽しもうというのです。それ、いいなぁと思います。そのくらいラフなら、きものを楽しむ人が増えるのではないでしょうか。幅広い季節に着られるものを選ぶとしたら、お値段も洋服程度の木綿のきものがいいのかな、と思います。きもの初心者なら、チェックやモダンな花柄などが抵抗が無いかもしれません。最近はグレンチェックなどもあって、洋服感覚で選ぶことができます。 ■■ 「作家もの」のきもの 伝統的な染織は日本全国にあって、長年培われた伝統のきものはそれぞれ魅力的です。それとは別に日本には数多くの染織作家がいて、個性あふれる作品を作っています。糸を草木で染め、その糸を織って反物を作る人、1枚のアートのような素晴らしい染めをする人、自分で型を掘って染める人など様々。そんな中に、重要無形文化財保持者(人間国宝)の志村ふくみさんの下で染織を学んだある作家さんがいます。志村さんは、草木染めの糸を使用した紬織の作品で知られ、素朴でありながら奥行きのある作品はきもの好きの憧れとなっています。紬が好きな私も志村さんのファンなのですが、人間国宝の作品となるととても手が出せません。でもその弟子の作家さんの作品は、同じテイストでありながら私でも買える値段。ある展示会でその作家さんのきものを見て、私は一目惚れしてしまったのです。それが写真のきものと帯です。縦縞のグレーは確か樫で染めたものだったと思います。そして、細く入った線の爽やかな水色は、臭木(くさぎ)の実で染めたもの。真っ赤な萼に囲まれた黒紫の実からは想像のできない色ですが、臭木は焙煎なしでこの水色に染まると聞いて感動しました。草木染めは自然を纏う感覚が素敵なのです。写真は春のコーディネートなので小物をピンクや若草色になっていますが、秋色の小物にすると雰囲気が変わります。 (文/レディ東京編集者 中島有里子) <<< 第10回 初めてのきもの ←こちらからバックナンバーを読む事ができます 更新日:2021年9月1日(水) 『大人の嗜み』についてご意見・ご感想をお聞かせ下さい。 ★このコラムに対するご意見・ご感想をぜひお聞かせください。下記フォームより必要事項をご記入して頂き送信して頂いた方の中から抽選で10名様に『有松絞りの手拭い』をプレゼント!! ★プレゼント応募〆切は9/30(木)12:00まで※当選者の発表は商品の発送をもってかえさせていただきます。(色は選べません) [[aform017]]

■■ 第10回 初めてのきもの ■■ 祖母が裁縫に使っていた絹糸 ■■着付もできないのに買った単衣 同居していた祖母は、きもので生活していました。私が小学生くらいまでは、朝起きたときにはすでに着替えてお行儀よく座っていたので、祖母の寝間着姿を見たことがないくらいでした。紺地や深緑の地の地味なきものに半幅帯を貝の口に結ぶのが定番でしたが、あれはどんなきものだったのだろう。祖母はきものの仕立てができたので、お小遣い稼ぎに知人のきものを縫ったり、母のために縫ったり、時には私や妹のために縫ったりと、いつでもお裁縫をしていました。きもの好きの母は、お出かけというと和装。入学式や卒業式はもちろん、授業参観日もきものでしたが、当時はそういうお母さんがクラスの中に10人くらいはいたのです。 そんなわけで、きものに馴染みのある生活をしてはいましたが、かといって大人になってから自分で着るようになったかというとまったくそうではなく、成人式で振袖を着て以来、40代半ばまではきものと無縁の生活をしていました。それが突然目覚めたのは、たまたま知人の染色家の個展でインドシルクを染めた生地で作ったきものを見たからです。彼女は普段は同じ生地で洋服を作っているのですが、その時は初の試みできものを作って着ていて、それを見たときカジュアルでいいなぁ、こんなきものなら着てみたいなぁと思ったのです。それで、着付もできないのに、紫の単衣とそれに合う帯を買いました。それが自分で買った初めてのきものでした。 せっかくきものと帯を買ったのに、着付を習ったのはそれから2年ほど経ってから。ある時、着付教室の広告を見つけ、近所の友人を誘って教室に通い始めたのです。着付ができるようになると世界が広がります。一緒に習った友人がきもの仲間になり、用もないのに着てみたり、きもので出かけたり、きもの談義をしたりと、きものの楽しさにハマっていきました。そのうち着付けも15分か20分でできるようになり、洋服とあまり変わらない感覚で気楽に着られるようになりました。そんなこんなで、ようやくきものが生活に入ってきて、いざという時は和服という選択ができるようになったのです。いつか年をとったときに、祖母のようにゆるゆると楽に着られるようになっていたらいいなぁというのが今の目標です。 ■■ 和服のときに持つバッグ きものや浴衣を着るとき、小物のすべてを揃えようとすると、お財布もしまう場所も大変です。いかにも和装用というのは野暮ったい気もするし、第一モノが入らないのは困ります。私たちが普段バッグに入れて持ち歩くものは、財布、スマホ、ハンカチとティッシュ、メガネケースや化粧ポーチなど結構たくさんあります。小ぶりのきもの用バッグと布のトートバッグを併せて持ち歩くのをよく見かけますが、あれはどうもスマートじゃなくて好きではないのです。そんなことをするくらいなら、大きめの普通のバッグを1つ持った方がカッコイイ。そんなことも含めて、私は洋服のときに持つバッグをそのまま和服でも持つようにしています。もちろんショルダーバッグはNGですが、ハンドバッグであれば大きくても小さくても構わないと思います。浴衣に合わせるなら、やっぱり涼しげな籠がいいですね。山葡萄の籠は洋服でも浴衣でも使えるお気に入り。物がたっぷり入るところも便利です。(文/レディ東京編集者 中島有里子) <<< 第9回 夏きもので日本橋へ ←こちらからバックナンバーを読む事ができます 更新日:2021年8月4日(水) 『大人の嗜み』についてご意見・ご感想をお聞かせ下さい。 ★このコラムに対するご意見・ご感想をぜひお聞かせください。下記フォームより必要事項をご記入して頂き送信して頂いた方の中から抽選で10名様に『有松絞りの手拭い』をプレゼント!! ★プレゼント応募〆切は8/31(火)12:00まで※当選者の発表は商品の発送をもってかえさせていただきます。(色は選べません) [[aform017]]

■■ 第9回 夏きもので日本橋へ ■■ 夏のきものほど素敵なものはない 夏のきものは涼しげで素敵です。蝉の羽のように透けた素材や、ざっくりと織られた帯地など、日本の染織の個性的な素材感がひときわ目立つような気がします。真夏の暑い日にきものを着て、汗ひとつかかずに佇んでいる女性を見ると、憧れと尊敬の念を禁じえません。だって、見た目には涼しい夏のきもの、着る者にとっては死ぬほど暑いのですから。冷房が効いた部屋ばかりならいいのですが、移動で外を歩く時などは汗だくになってしまいます。特に最近の夏の暑さは尋常ではありませんから、この季節にきものを着るには相当なやせ我慢が必要なのです。その心意気も含めて、夏きものはやっぱり"粋"なのです。カッコイイのです。根性のない私は、お気に入りの琉球絣がもう何年もタンスの肥やし。今年こそ頑張って着てみようかなぁと思っています。 ■■ ゆかたの下着 ゆかたのいいところは長襦袢がいらず1枚で着られること。とはいえ、いざ着る時に意外と大事な下着問題。ゆかたの下に何を着たらいいのかわからない人も多いようです。ゆかたは元々お風呂上りに着る寝巻きのようなもの。外出することは前提ではなく素肌の上に直接着るものでした。でも、今は立派な外出着。生地によっては透けるものもあるので流石に下着は必要です。きもの用のスリップ式の下着なら胸元も足元もカバーするので安心ですが、「そんなの持ってない」というなら、タンクトップとキャミソールでも十分代用できます。要するに、袖口や裾から素肌が露出しなければいいのです。因みにブラとショーツは普段のもので大丈夫。生地によっても透け感が違うので、透けない色を選ぶことは大事ですね。なるべく涼しく着られるように、それぞれが工夫すればいいと思います。 ■■ きもので得する「日本橋きものパスポート」 さて、この夏きものやゆかたでお出かけするなら断然日本橋が面白そうです。2021年4月3日で日本橋が開橋110年を迎えたのを記念して、日本橋・人形町にきものやゆかたで行くと色んな特典が受けられる「日本橋きものパスポート」が使えるからです。この企画には60店鋪が参加、きものまたはゆかたで対象店舗を利用すると、パスポート(冊子またはスマホWEB表示)を提示するだけでお得なサービスが受けられます。老舗レストランやフルーツパーラー、和菓子屋さんなど日本橋の主だったお店が参加しているので、これはなかなかいいかも。日本橋きものパスポートの利用期間は2022年3月31日(木)まで。涼しくなってからのんびり訪ねるのも悪くないですね。参加店に置いてあるパスポートを現地で調達するかWEBで手に入れて利用してください。(文/レディ東京編集者 中島有里子) <<< 第8回 竺仙のゆかた ←こちらからバックナンバーを読む事ができます 《 今月のワンポイント:うそつき 》 夏はできるだけ薄着にしたいので長襦袢の代わりに「うそつき」を着ます。うそつきだなんて面白い名前だなぁと思いますが、これは長襦袢と肌着が合体したもので、木綿の肌襦袢に半衿と付け外しのできる袖が付いていて、上からきものを着ると長襦袢を着ているように見えるのです。だからうそつき。洗濯機でジャブジャブ洗えるのも便利で、夏のきものの必需品です。 更新日:2021年7月7日(水) 『大人の嗜み 〜きもの美を知る〜』についてご意見・ご感想をお聞かせ下さい。 ★このコラムに対するご意見・ご感想をぜひお聞かせください。下記フォームより必要事項をご記入して頂き送信して頂いた方の中から抽選で10名様に『有松絞りの手拭い』をプレゼント!! ★プレゼント応募〆切は7/31(土)12:00まで※当選者の発表は商品の発送をもってかえさせていただきます。(色は選べません) [[aform017]]

花火大会や夏祭りといえば、若い女の子はこぞってゆかたを着ます。普段と違う女性らしさをボーイフレンドにアピールしたり、友だち同士で盛り上がったり、女の子たちは実に生き生きと楽しそうです。でも大人の女性はどうでしょう。ゆかたを着る機会は意外と少ないのではないでしょうか。大人が涼しげにゆかたを着る姿は素敵なものです。今までゆかたと縁がなかった方も、この夏はぜひ大人のゆかたに挑戦してみませんか。 ■■ 第8回 竺仙のゆかた ■■ 創業天保13年(1842年)、ゆかたといえば「竺仙」というほど有名な日本橋の老舗です。創業当時から現在に至るまで、企画・生産・販売を一貫して行い、江戸染ゆかたの独特の技術を活かし、ゆかたから江戸小紋へと世間に名を馳せ、歌舞伎の世界にも登場したという竺仙。時代を超えた奥行きの深さ、伝統的でありながら洗練された豊富な柄が、多くのファンを引きつける魅力です。「ゆかたも今や夏きもの」という5代目当主の言葉にもあるように、和服というだけで注目されるこの頃。まずは素敵なゆかたを選ぶことから始めてはいかがでしょうか。 竺仙の魅力は染めの種類の豊富さ (左)大胆な柄が目を惹く竺仙紬ゆかた「万寿菊の柄」と麻織八寸帯(右)店主おすすめの新作・奥州小紋「松の柄」と麻兵児帯 ひと口にゆかたといっても生地の種類や染め方により様々。竺仙のゆかたアイテムは、コーマ白地、地染・コーマローケツ・コーマ玉むし・紬ゆかた・綿芭蕉玉むし・紅梅小紋・奥州小紋・縮小紋中形・絽小紋中形・絹紅梅小紋・麻小紋・絽長板・縮長板等50アイテム、約1000柄にも上ります。染め方は、長板中形、注染、引き染、先染、ローケツ染、しごき染、まぼろしの染めといわれるリバーシブルの染色法があり、それぞれの特徴を活かした魅力的な柄が染められます。 大人が着るから素敵なゆかた 上の写真は紫陽花を染め上げた奥州小紋。大人の女性の魅力を引き出す1枚です。原案である竺仙の紫陽花の柄を日本画家・宮下真理子氏にアレンジし描いてもらったという創作柄。細かいタッチで葉脈まで丁寧に描かれていて優しい雰囲気が魅力です。またグッと大人っぽい下の2点は、大胆な柄が目を惹く竺仙紬ゆかた「万寿菊の柄」と麻織八寸帯(左)と、紫陽花と同じく宮下真理子氏による奥州小紋「松の柄」と麻兵児帯。こんなゆかたを纏ったら気持ちもグッと上がりそうですね。 ゆかたで過ごす夏の宵 長引くコロナ禍で、夜のお出かけが少なくなった今、自宅で食事をする人が増えています。必然的に家飲みも増えますね。そんな夫婦の時間をたまには2人揃ってゆかたで過ごしてみてはいかがでしょうか。居ながらにしてお出かけ気分が味わえるし、普段と違う姿にお互いを惚れ直すかも。ゆかたはそんな新鮮さを運んでくれます。(文/レディ東京編集者 中島有里子) <<< 第7回 小千谷縮 ←こちらからバックナンバーを読む事ができます 《 今月のワンポイント:パナマ 》 夏の素材というのは清々しくていいものです。着物でいえば、麻が肌に触れた時のひんやりした感触は気持ちいいし、綿紅梅、絹紅梅も爽やかです。夏の着物を粋に決めたいなら、足元はパナマ。パナマ帽と同じパナマで、原料は中米産のヤシに似た多年草。さらっとした履き心地は最高です。ただし、こちらはあくまでお洒落用。紬と同じく高価でもカジュアルなので、履いていく場所は選びます。 更新日:2021年6月2日(水) 『大人の嗜み 〜きもの美を知る〜』についてご意見・ご感想をお聞かせ下さい。 ★このコラムに対するご意見・ご感想をぜひお聞かせください。下記フォームより必要事項をご記入して頂き送信して頂いた方の中から抽選で10名様に『有松絞りの手拭い』をプレゼント!! ★プレゼント応募〆切は6/30(水)12:00まで※当選者の発表は商品の発送をもってかえさせていただきます。(色は選べません) [[aform017]]