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LADY TOKYO は毎月第一水曜 日本経済新聞 読者にお届け
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vol.8《 線香花火の東西を楽しむ 》〜線香花火で夏(夏休み)を締めくくりましょう〜 ●はじめに 体温を超える様な暑さが続く今年の夏ではありますが、二十四節気の立秋を迎え暦の上では秋となりました。朝夕は少し涼しくなり秋の気配を感じる頃とされておりますが、どうでしょう。暑い暑いと下ばかり見つめてしまいがちですが、空を見上げてみると少しずつではありますが、空から、雲から、季節の移り変わりを感じることができるものです。 さて、夏の空と言って多くの方が思い浮かべるのは花火だと思います。夏の夜空に大輪の花を咲かせる大きな打ち上げ花火は、後から追いかけてやってくる、お腹にドーンと響く音がまたたまらないものです。そんな華やかな打ち上げ花火ももちろん良いのですが、みんなで輪になり心静かに眺める線香花火も良いものですよね。夏(お子さんにとっては夏休み)の終わりに、散りゆく儚さを愛でる線香花火は何とも日本人らしい美学の詰まった風物詩だと思うのです。 ●花火の始まり 江戸時代、大飢饉とコレラの大流行による死者の霊をなだめ悪病退散祈願の為に、8代将軍徳川吉宗が隅田川で水神祭を行い、その際に両国橋周辺の料理屋が許可を得て花火を打ち上げたのが「両国の川開き(隅田川花火大会の古称)」のルーツだそうです(隅田川花火大会公式HP参照)。 14世紀、イタリアのフィレンツェに始まったとされる観賞用の花火はその後ヨーロッパ中へ、そして大航海時代とともに世界中へと広がりました。日本で初めて花火を見たのは徳川家康とも伊達正宗とも言われていますが、当時の花火は筒から火の粉が吹き出す程度のものであったそうです。 ●線香花火〜東西〜 昔から変わらぬ懐かしい線香花火、実は東と西で形状が違う事を御存知でしたか?お餅の形状、お味噌の色、桜餅の違いなど東西での違いは調べれば調べる程楽しいのですが、西の線香花火は、関東で生まれ育った私には大変衝撃的なものでした。 線香花火とは、スボ(藁スボ 稲藁の中心の固い芯のこと)の先に火薬を付け、それを香炉に立てて 火を付けて遊んだことが始まりといわれており、香炉や火鉢に立てた花火の様子が仏壇に供えた線香と 似ていた為この名がついたと言われています(筒井時正玩具花火製作所HP参照)。 ★東の線香花火は「長手牡丹」と呼ばれます。紙すきが盛んな関東地方ではワラの代わりに火薬を紙で包んだのだとか。下向きに持ち楽しむのが一般的です。 ★西の線香花火は発祥当初から300年変わらない線香花火の原形で「スボ手牡丹」と呼ばれています。 関西地方では稲作が盛んだったのでワラが豊富にあった為このスタイルが保たれたようです。45度位の角度で他の手持ち花火の様に楽しむのが一般的です。 ※花火の下に敷いたのは、乱菊模様の浴衣です。乱菊(らんぎく)とは、菊の花びらを長く乱れ咲いたように表した模様なのですが遠目には花火の様に見える事もあり花火大会の際にはよく着用しています ●終わりに 私が子供の頃には、夏休みといえば祖父母の家に従兄弟たちが集まって皆でスイカやトウモロコシをかじり、夜になればワイワイと花火をして蚊帳の中で寝る、そんなシーンが懐かしく思い出されます。花火をする為のお庭がない、マンションのベランダではできないし、公園や海も花火禁止と張り紙がされている。何かと花火をするにも気を使う昨今ではありますが、田舎に帰省した際や郊外にお出掛けの際など、または公園や海も完全禁止ではなく時間やルールを守ればOKな場所もあるようですので、音も煙も少なく周りにご迷惑をかける事の少ない「線香花火」を少しだけうんちくを語りながら、夏の終わりに楽しんでみませんか。 << vol.7 ひんやり甘い冷茶で涼をとる ◎ P R O F I L E ◎ 歳時記・和菓子研究家 柳澤ゆり子 パリへ行く!と思い立ち仕事を辞めて渡仏。自国の文化を学ぶ必要を強く感じ、帰国後は着物・煎茶道・和菓子・折形・風呂敷・金継などを学ぶ。ほんの一滴、和のエッセンスを加える事で潤う日々の暮らし。花・茶・和菓子といった身近なアイテムを取り入れることで、四季を感じる暮らしをもっと楽しんでいただけたら、そんな想いで地元鎌倉を中心に活動中。モットーは「美味しく楽しく美しく」。 季節の和菓子と日本茶を楽しむ会・風呂敷塾を主宰。京都造形芸大(通信)和の伝統文化コース卒業/日本茶アドバイザー/風呂敷愛好家 更新日:2018年8月1日(水)

vol.7《 ひんやり甘い冷茶で涼をとる 》〜ティータイムを心待ちに数時間前から仕込む楽しみ〜 ●はじめに お天気がはっきりしないと気分も晴れない・・・そんな梅雨の季節が明けたなら、さあ夏本番の始まりです。一昔前には想像できなかった程の暑い夏が今年もやってくるとなると、ついつい冷たい飲み物が欲しくなるものですが、身体を冷やすから控えているという方も少なくないのではないでしょうか。 そんな皆様にこの夏お勧めしたいのが「ごくごく飲む」のではなく、ひんやりスイーツを用意して楽しむ夏のティータイムに、数時間前から仕込んでおいた冷たくて美味しい冷茶を「ほんの数口頂く」、喉だけでなく心をも潤す楽しみ方です。 ●先ずは緑茶の効能・効果について簡単にご紹介致します あまりに身近すぎて無意識に摂取している緑茶ですが、実はとてもたくさんの栄養が含まれています。たとえば渋味の成分であるカテキン(タンニン)はポリフェノールの一種なので抗酸化・抗菌効果などがありますし、ビタミン類には、美肌効果(シミやソバカスの抑制)・動脈硬化予防・ストレス解消効果などがあります。苦味の元となるカフェインには、覚醒作用・利尿作用・新陳代謝促進作用の他、血液循環を促進したり疲労を回復させる効果もあるのです。又、うま味成分のテアニンには血圧上昇を抑制する効果まであるそうです。 この様に身体に良いこと尽くしの緑茶ですので暑い季節にも積極的に摂取したいところ。 そこで、ご提案させて頂くのが冷たい冷茶(緑茶)の楽しみ方です。 ●少しだけ手間暇かけて「氷で淹れる」冷茶は甘味がたっぷり! 氷でじっくり淹れる冷茶は、時間はかかりますが甘みがたっぷりです。なぜかと言うと抽出の湯温が高いと渋みや苦みが強くなるのに対し、低い温度で淹れる事でうま味成分が多く抽出されるためです。玉露や高級煎茶がお勧めではありますが、入手が難しい場合には深蒸しタイプの煎茶を選ぶ事で短時間で緑色の鮮やかな冷茶ができあがります。 1. 通常の高い温度で淹れる際の2〜3倍のたっぷりの量の茶葉を使用します。 2. 茶葉が浸る程度の冷水を注ぎその上に氷をたっぷりのせ蓋をして2時間程待ちます。(部屋の温度にもよりますのであくまでも目安です) 3. できあがりです!甘くて美味しい冷茶の味にびっくりするはずです。 ●お急ぎの時には・・・ 来客があるのに冷茶のセットをし忘れた!時間が無いがすぐに頂きたい!そんな時には濃いめに淹れた緑茶をたくさんの氷で急冷する方法もあります。すぐにできますので急ぐ際には便利ですし、高い温度で淹れるので香りも楽しむことができます。ただし、高い湯温で淹れますので氷でじっくり淹れた冷茶の様なトロリとした甘味は望めませんが、代わりにキリリとしたお味の冷茶を楽しむことができます。 ●涼しげな器・小物で涼を演出 下記の写真では冷酒を頂く「ちろり」と冷酒用のガラスの「おちょこ」を使用しました。 お菓子は涼しさ感をUPさせるために大きなガラスのお皿に盛りつけ、遊び心で蟹の置物とスイカの団扇を、そしてテーブルには雪華紋の手ぬぐいを広げました。夏に雪?と思われるかも知れませんが着物の世界では夏に雪輪や雪華紋の着物を着用するのは粋とされておりますので、その考えを取り入れてみました。 ●おわりに ゴクゴク頂くお茶も美味しいですが、心に余裕のもてた日には少しだけ手間とひまをかけて準備をした冷茶を、ほんの少し頂きながら五感を研ぎ澄まして涼を感じてみる、そんな時間も良いものです。おもてなしの際にはワイングラスやシャンパングラスを使うのも楽しいですね。我々日本人は昔から涼をとるために「耳から」「目から」感じる涼を大切にして参りました。現代を生きる私達も「暑さを楽しんでみましょうか」それ位の気持ちを持てたなら、夏の暑さも「辛い」ではなく「幸い」に変えて乗りきれそうです。 << vol.6 梅雨時期の外出を快適にする ◎ P R O F I L E ◎ 歳時記・和菓子研究家 柳澤ゆり子 パリへ行く!と思い立ち仕事を辞めて渡仏。自国の文化を学ぶ必要を強く感じ、帰国後は着物・煎茶道・和菓子・折形・風呂敷・金継などを学ぶ。ほんの一滴、和のエッセンスを加える事で潤う日々の暮らし。花・茶・和菓子といった身近なアイテムを取り入れることで、四季を感じる暮らしをもっと楽しんでいただけたら、そんな想いで地元鎌倉を中心に活動中。モットーは「美味しく楽しく美しく」。 季節の和菓子と日本茶を楽しむ会・風呂敷塾を主宰。京都造形芸大(通信)和の伝統文化コース卒業/日本茶アドバイザー/風呂敷愛好家 更新日:2018年7月4日(水)

vol.6《 梅雨時期の外出を快適にする 》〜梅雨の季節は撥水加工の風呂敷を活用して大切なバッグ・荷物を雨から守ります〜 いよいよ梅雨の季節がやって参ります。長靴にレインコートに傘、これでばっちり!?ではありませんね。大切なバッグ、特に布製や籠のバッグは濡れてしまったらとても困るものです。そんな時に重宝するのが、撥水加工の施された大判の風呂敷です。今回は急な雨にも役立つ簡単なバッグの包み方をご紹介します。 ★写真の風呂敷は撥水加工(ちりめん)97cm×97cm ◆風呂敷でバッグを包む 〜包み方4ステップ〜1. 風呂敷を広げバッグを真ん中に配置します 2. 風呂敷手前左右の角を、持ち手の中に(内から外へ)通します 3. 持ち手に通した風呂敷の角と角を真ん中で真結びします 4. 反対側も同じように結び形を整えればできあがりです ここ数年で、モダンなデザインや華やかな色使いの風呂敷をたくさん見かけるようになりました。撥水加工の風呂敷も素敵なものが増えていて選ぶのに迷う程です。今回ご紹介した風呂敷は、ちりめんなので着物にもあいますね。お茶会などで荷物をクロークに預ける際、風呂敷を使用する方が多いと思いますが、そんな場面でも撥水加工の風呂敷は汚れも気にならず安心です。 逆の発想から、雨から荷物を守る方法をもうひとつ御提案させていただきます。 ◆撥水加工の風呂敷を(バッグに入れて使用する)バッグインバッグにみたてます。 お好みの風呂敷バッグを作りバッグの中にポンと入れて使用するだけなのですが、急な雨に降られても中の荷物を濡らさずに済みますし、電車などでの移動の際、蓋のないバッグでは心もとないと感じる場合にも活用頂けます。 個人的には、カバンには常に一枚風呂敷を入れておきます。手荷物が増えた際のサブバッグ・エコバッグとして使ったり、食事の際のひざ掛けとして広げたり。撥水加工の風呂敷は濡れや汚れにも強いので活用シーンも増えますね。 ◆おわりに 着物を着用せねばならない雨の日にいつも悩んでいて撥水加工の風呂敷に思い至りました。今年の梅雨シーズンは、皆様も上手に活用してストレスフリーにお過ごし下さい。 << vol.5 衣更(ころもがえ)の準備を始める ◎ P R O F I L E ◎ 歳時記・和菓子研究家 柳澤ゆり子 パリへ行く!と思い立ち仕事を辞めて渡仏。自国の文化を学ぶ必要を強く感じ、帰国後は着物・煎茶道・和菓子・折形・風呂敷・金継などを学ぶ。ほんの一滴、和のエッセンスを加える事で潤う日々の暮らし。花・茶・和菓子といった身近なアイテムを取り入れることで、四季を感じる暮らしをもっと楽しんでいただけたら、そんな想いで地元鎌倉を中心に活動中。モットーは「美味しく楽しく美しく」。 季節の和菓子と日本茶を楽しむ会・風呂敷塾を主宰。京都造形芸大(通信)和の伝統文化コース卒業/日本茶アドバイザー/風呂敷愛好家 更新日:2018年6月6日(水)

vol.5《 衣更(ころもがえ)の準備を始める 》〜季節の移り変わりの様に少しずつ身の回りの衣更を始める頃〜 立夏を過ぎ、日射しは日々眩しさを増し、木々の緑も深みを増して参りました。 この季節を迎えますとそろそろ始めねばならないのが「衣更」の準備です。 ◆「衣更」(ころもがえ)の楽しみ 衣更とは季節にあわせて衣服をかえる習わしの事で、制服のある会社や学校ではたいてい6月と10月に衣更をいたしますね。 着物の世界でも5月に入ると先ずは長襦袢から単衣(一枚で仕立てたもの)にいたします。 続いて着物も、涼しそうに見える色や素材のものに袖を通しながら、早い方ではGW明け頃からは単衣にかえて参ります。昔と比較して気温が高くなっている昨今、いつから単衣を着るか、着て良いのかと言う話題は着物仲間の間では必ずでるテーマですが、正式な場でない限りはGW明け、5月中旬には・・・という意見が多い様に思います。 この頃重宝するのが、博多帯のような八寸帯とも呼ばれる単衣仕立ての薄手の帯です。着物・帯と少しずつ薄手のものに衣更していくと共に帯締めなども見た目に涼しそうなお色や平たくて暑苦しくないタイプにかえて参ります。しかし、いくら単衣を早めに5月から着用したとしても、半襟はまだ塩瀬にしておきます。季節の移り変わりと同じ様に一気にこの日から衣替え!ではなく少しずつ少しずつ衣替えしていくのが着物の良さであり楽しみでもあると感じます。 ※写真は下から上に向かって平たく涼しげに ◆「衣更」(ころもがえ)の歴史 江戸時代には4月1日(現在の5月上旬)に夏の衣に、10月1日(現在の11月上旬)に冬の衣にかえており、6月1日が夏の衣更の日となったのは明治時代以降の事だそうです。平安時代に始まったとされていますこの衣更、宮中行事として行われていた頃にはもっと細かく行われていたばかりか、衣類だけでなく調度・家具の類まで全て季節にあわせてかえていたのだとか。 ◆現代生活での「衣更」(ころもがえ)調度品や家具まで季節毎にかえるのはとても難しい事だと感じましたが、現代の生活においてもクッションカバーやテーブルクロス・テーブルランナーなどの布類をかえて楽しんでいらっしゃる方は多いのではないでしょうか。我が家でもテーブルクロスなどを季節によって少しずつかえておりますよ。 ※この時期に重宝する薄紫や青、緑など また、夏仕様の色・素材の器も少しずつ出していきたいですね。編んだ素材のコースターやかご類、江戸切子や琉球ガラス、アンティークのガラスなどを使いたくなる季節です。器の色も黒・茶・灰色といった陶器から白・青・緑といった薄手の磁器類が恋しくなってくるものです。 ※エジプトガラスのグラスやポーセラーツのレッスンで自作した赤珊瑚の茶器もこの時期にはとても重宝しています ◆おわりに 現代の生活において着物を日々着用なさる方は多くないと思いますが、「少しずつ」衣更を進める着物のように、「この日から」な衣更ではなく、身の回りの品々を季節の移り変わりと共に少しずつ衣更していくのも素敵だなと改めて感じています。現代を生きる忙しい私達にとってはまるまる一日を衣更に費やすことは難しくもありますので数時間ずつ何日かに分けて衣更をするというスタイルはぴったりかも知れません。 衣更のタイミングは大掃除のできるタイミングにもなりますので、不必要な物を手放して気分すっきりで新しい季節に向かいたいですね。 <参考文献>日本国語大辞典 小学館発行 << vol.4 新茶でもてなす ◎ P R O F I L E ◎ 歳時記・和菓子研究家 柳澤ゆり子 パリへ行く!と思い立ち仕事を辞めて渡仏。自国の文化を学ぶ必要を強く感じ、帰国後は着物・煎茶道・和菓子・折形・風呂敷・金継などを学ぶ。ほんの一滴、和のエッセンスを加える事で潤う日々の暮らし。花・茶・和菓子といった身近なアイテムを取り入れることで、四季を感じる暮らしをもっと楽しんでいただけたら、そんな想いで地元鎌倉を中心に活動中。モットーは「美味しく楽しく美しく」。 季節の和菓子と日本茶を楽しむ会・風呂敷塾を主宰。京都造形芸大(通信)和の伝統文化コース卒業/日本茶アドバイザー/風呂敷愛好家 更新日:2018年5月9日(水)

vol.4《 新茶でもてなす 》〜新茶を淹れて「おもてなし」しませんか〜 待ちに待った新茶を楽しむ季節がやってきます。新茶についてちょっとだけ詳しくなって、おもてなしのシーンに新茶を用意してみませんか。 ◆新茶とは その年の新芽を、一番最初に摘んで仕上げるお茶の事を「新茶」と呼んでいます。毎年、その年の気候などにより茶摘みの時期は異なるので市場に出回る時期も同じではありませんが、屋久島や種子島といった早い地域のものでは4月上旬頃から、続々と新茶がお茶屋さんの店頭に並び始めます。 ※季節のお花と美味しい和菓子も欠かせません ◆八十八夜 八十八夜とは立春から数えて88日目(今年は5月2日)を指す雑節(註1)のひとつで、夏への準備を始める頃とされています。昔から、茶摘みだけでなく田植えや種まきの準備を始める目安となる頃とされて参りました。実際は茶摘みの時期は地域によってまちまちなのですが「夏も近づく八十八夜♪」という歌に茶摘みが歌われおり、茶摘みと言えば八十八夜とうイメージをお持ちの方が多いでしょう。 また、末広がりの8が重なるので縁起の良い日とも言われています。 (註1)二十四節気とは別に、農業に携わる事の多かった我々日本人の生活の中から生まれ、季節の移り変わりの目安とされてきた日のこと ※写真は新茶の季節のものではありません ◆新茶の栄養 新茶を飲むと長生きする、一年を無病息災で過ごせる、などといわれており新茶は不老長寿の縁起物とされてきました。先にも書きましたが新茶とはその年の一番茶の事で、前年の秋から冬の間に蓄えた栄養分やうまみ成分のテアニンなどが豊富に含まれているので理にかなっています。機械化が進んだ現代においても、新茶だけは手摘みする事が多いそうですから、丁寧に手摘みされ大切に我々の手元に届くのが新茶なのですね。「いつまでもお元気で」「長生きしてね」そんな願いを込めて母の日、父の日の贈り物にもお勧めです。 ※表面に浮いているキラキラしたものは埃ではなく毛茸(もうじ)、新芽独特の産毛です ◆旬を贈るということ 日本では、その年初めて収穫される「初物」には生気がみなぎっていると考えられ、それを食する事でエネルギーを取り込んできた為、新茶ももちろん最上級の贈り物と位置付けられます。普段お茶を飲まない若い世代の友も、新茶を贈るととても喜んでくれます。その時期だけの貴重な品を入手してお届けするという行為そのものが、素敵な贈り物に他なりません。 ◆家族・お客様を美味しい新茶でおもてなしする せめて新茶の季節位は珈琲や紅茶をお休みし、美味しいお茶を淹れて、家族・大切な仲間達に振舞ってみて下さい。いつもよりきちんと茶葉や湯の量を測り、湯の温度を考え急須やお茶碗も温めて丁寧に。その場には季節のお花や美味しい和菓子も欠かせません。小ぶりの重箱に春らしいお菓子を詰めてピクニック気分を楽しむのも良いですね。 ◆おわりに 3月4月と変化の多い日々を過ごした方が多い事でしょう。縁起の良い初物「新茶」から大地の恵みを取り込む事で心身ともにリフレッシュし、明日への力が湧いてくる事間違いなしです。周りをもてなすだけでなく、自分自身の為に丁寧にお茶を淹れ、自らをおもてなしする時間も必要かも知れません。 << vol.3 紋様に願いを込める ◎ P R O F I L E ◎ 歳時記・和菓子研究家 柳澤ゆり子 パリへ行く!と思い立ち仕事を辞めて渡仏。自国の文化を学ぶ必要を強く感じ、帰国後は着物・煎茶道・和菓子・折形・風呂敷・金継などを学ぶ。ほんの一滴、和のエッセンスを加える事で潤う日々の暮らし。花・茶・和菓子といった身近なアイテムを取り入れることで、四季を感じる暮らしをもっと楽しんでいただけたら、そんな想いで地元鎌倉を中心に活動中。モットーは「美味しく楽しく美しく」。 季節の和菓子と日本茶を楽しむ会・風呂敷塾を主宰。京都造形芸大(通信)和の伝統文化コース卒業/日本茶アドバイザー/風呂敷愛好家 更新日:2018年4月4日(水)

vol.3 《 紋様に願いを込める 》 別名、弥生、花月、桜月などとも呼ばれます3月は、桜が咲くのはまだかしらと待ち望むわくわくする季節であるとともに、4月からの新年度に向けて新しい出発・旅立ちを迎える方の多い季節でもあります。新しいステージへと旅立つ仲間・お子さんやお孫さんに贈るお祝いや餞別の品に、文様の持つ意味も添える事ができたら贈る側もより幸せです。贈りたい言葉を、ひと言したためる一筆箋やお気持ちを包んでお渡しするための封筒などを選ぶ際には、文様の意味を知った上で伝えたい思いや願いをプラスいたしましょう。 〜アイテム別に少しだけ〜 ◆封筒類......直接相手の目にふれるものなのでぜひ想いを込めたいところです ◆葉書・一筆箋......長い文章は苦手でも一言二言なら書けますね。文章を書く事の少なくなった現代ではありますが、物やお金を贈る際にほんのひと言でも言葉が添えてあると嬉しいものです。 ◆懐紙......封筒がなくても懐紙をバッグに忍ばせておけば急な事があっても安心。お金を包んだり一筆箋代わりにしたりと優れものです! 〜紋様の意味を少しだけ〜 ◆桜......日本人の一番好きな花であると言っても過言ではない桜は春の代名詞でもありますが、一斉に咲き誇る姿から「繁栄」「輝かしい未来」などの意味が込められます。また、田んぼ(稲)の神様は春になると山から降りていらして桜の樹を依り代とすると考えられています。 ◆麻の葉(左上)......成長の早い麻の葉に子供の成長を願います。赤ちゃんの産着によく使われますね。◆青海波(左下)......絶え間なく続く波に平穏・未来永劫を願います。ペルシャからシルクロードを渡って日本へも伝わったと言われています...ロマンを感じますね。◆唐草(中)......生命力の強い蔓に子孫繁栄や長寿を願います。◆松竹梅(右上)......一年中緑を保つ松は不老長寿の象徴、冬でも青々としてしなやかな強さを持つ竹は子孫繁栄の象徴、寒い中にあって真っ先に花を咲かせる梅は気高さの象徴とされています。 ◆瓢箪(右下)......末広がりの形から古代より縁起物とされた他、様々な作物の種入として用いられた歴史から、瓢箪の中に入れた種は必ず芽がでる=チャンスは必ず巡ってくるに通じると考えられています。 ◎何気なく選んでしまうぽち袋や一筆箋ですが、描かれている紋様の意味を知り・選び、せっかくですのでお贈りする方の幸せや健康を願う気持ちも込めてお渡ししたいですね。 << vol.2 春告鳥を贈る ◎ P R O F I L E ◎ 歳時記・和菓子研究家 柳澤ゆり子 パリへ行く!と思い立ち仕事を辞めて渡仏。自国の文化を学ぶ必要を強く感じ、帰国後は着物・煎茶道・和菓子・折形・風呂敷・金継などを学ぶ。ほんの一滴、和のエッセンスを加える事で潤う日々の暮らし。花・茶・和菓子といった身近なアイテムを取り入れることで、四季を感じる暮らしをもっと楽しんでいただけたら、そんな想いで地元鎌倉を中心に活動中。モットーは「美味しく楽しく美しく」。 季節の和菓子と日本茶を楽しむ会・風呂敷塾を主宰。京都造形芸大(通信)和の伝統文化コース卒業/日本茶アドバイザー/風呂敷愛好家 更新日:2018年3月7日(水)

vol.2 《 春告鳥を贈る 》 〜鶯の別名でもある「春告鳥」を風呂敷に包んで贈りませんか〜 「ホーホケキョ」という鶯のさえずりを聞くと「春が来たのだなー」と感じるものですね。その美しい鳴き声で春の訪れを教えてくれる事から鶯は別名「春告鳥」とも呼ばれるとともに、初鳴き日を記録する桜前線ならぬ「ウグイス前線」というものもあるそうです。さてこの春は、春告鳥を模した和菓子「鶯餅」を手作りして大切な方やお世話になっている方に贈りませんか?電子レンジ使用で簡単に作る方法をご紹介します。 ☆☆電子レンジ使用で簡単鶯餅 5ステップ☆☆【材料は9個分】 STEP.1 初めに材料を用意し中餡は20gずつ丸めておきます。◎白玉粉:60g◎砂糖(一般的には上白糖/白さを重視しないのであればブラウンでも):30g ◎水:100ml ◎餡(こし・粒・白餡などお好みで):180g STEP.2 白玉粉と砂糖をあわせ少しずつ水を加えます (ダマにならないように泡だて噐などでよく混ぜます) STEP.3良く混ぜた(STEP.2)を電子レンジへ。ラップをふんわりかぶせ600Wで2分程度→取り出してよく練り混ぜてもう一度600W1分程度(足りないようなら1分ずつ追加で繰り返す)取り出したら木べらなどでよく練り生地を均等に! STEP.4バット等に広げた青豆きな粉の上に(STEP.3)を落とします。まわりからきな粉をかけながら、餅生地を作りたい数に丸めます。 STEP.5丸めておいた中餡を餅生地にくるみ楕円形に(閉じ目は下にします)。ここで、少し前後をつまむとウグイスらしく仕上がります。仕上げに茶こしできな粉をたっぷりかければ出来上がりです。 鶯餅、意外と茶色くて地味に感じるでしょうか?実際のウグイスってもっと綺麗な緑色では?と思われる方もいらっしゃるかと思いますが良く間違われる綺麗な緑の鳥は「メジロ」・・・勘違いされている方も多いので「メジロとウグイス」気になった方は調べてみて下さいね。 ◆集まりに持参するのであれば重箱に詰めて!重箱に詰めていくと運び易くそのままテーブルにも出せるので喜ばれます。もし、青豆きな粉の色では地味だわ・・・と思われる方は抹茶をかけると華やかに変身! ◆風呂敷に包んでお届けせっかくなので重箱に詰めた鶯餅を風呂敷に包んでお届けしてはいかがでしょうか? 2月23日は「つつむ」で風呂敷の日とされています。そんな小ネタとともにお届けするのも楽しいものです。梅柄の風呂敷でこの時期に咲き始める梅の香りも一緒にお届けするのも粋ですね。 〜御参考までにお勧めの風呂敷包み2種〜 ≪結び目を見せてかわいらしく≫ ≪結び目を隠して奥ゆかしく≫ 一年で一番寒いこの時期だからこそ「春を真っ先にお届け」そんな心遣いが嬉しいですね。 << vol.1 女正月を寿ぐ ◎ P R O F I L E ◎ 歳時記・和菓子研究家 柳澤ゆり子 パリへ行く!と思い立ち仕事を辞めて渡仏。自国の文化を学ぶ必要を強く感じ、帰国後は着物・煎茶道・和菓子・折形・風呂敷・金継などを学ぶ。ほんの一滴、和のエッセンスを加える事で潤う日々の暮らし。花・茶・和菓子といった身近なアイテムを取り入れることで、四季を感じる暮らしをもっと楽しんでいただけたら、そんな想いで地元鎌倉を中心に活動中。モットーは「美味しく楽しく美しく」。 季節の和菓子と日本茶を楽しむ会・風呂敷塾を主宰。京都造形芸大(通信)和の伝統文化コース卒業/日本茶アドバイザー/風呂敷愛好家 更新日:2018年2月7日(水)

《 女正月を寿ぐ 》 〜大人女子会のスタートはめでた尽くしから〜 女正月という呼び方を聞いたことはあるでしょうか? 1月15日小正月の別名で、年末年始と忙しかった女性がほっと一息つくこの日は女正月とも呼ばれています。今の様に調理器具も充実していなかった時代、年末年始の女性の大変さは想像に難くないですが、働きながら家事や育児・介護をもこなす現代の私達女性にとっても公に休める休息日があっても良いですよね。そんな、大人女子会の事始めとも呼べる女正月を、めでた尽くしで楽しんでみたいと思います。 ◆小正月に食する「小豆粥」小豆は古来より邪気を祓う食物とされて参りました。 女性同士の集まりですので女性に嬉しい美肌効果のギュッと詰まった「クコの実」をトッピングしてみます。 めでた柄の和紙で箸包みを折り水引と南天を飾れば華やかさがプラス! 相手を思い自ずから折ったり結んだりする行為そのものが一番のおもてなしでもあります。 器も、新春ですから本物志向に拘りたいところですね。 ※お椀・・・越前塗 ◆ウェルカムドリンクには新春らしく「大福茶」を用意しておもてなし一年の幸せを願って新春に頂くお茶で、梅干し(皺ができるまで元気に過ごせるようにとの願い)や昆布(喜ぶに通じる)などをお好みのお茶に入れて楽しむのが大福茶です 急須・お皿・てぬぐい等日本の良きものを使いテーブルをコーディネートしてみます。 ※急須・・・南部鉄器※富士山の豆皿・・・波佐見焼 ※市松模様のてぬぐい・・2020年東京オリンピックのデザインにも使用され話題性も ◆新春を寿ぐお花・お菓子は欠かせません お花は、集う仲間の一年の幸せを願い南天と福寿草を選びました。〜南天と福寿草で「難を転じて福となす」を表現〜お菓子は、見た目がまるでお赤飯!?な「御目出糖」という名の蒸し菓子や七福神の和三盆など話題性のある一品が楽しいですね。和菓子は寿司プレートとして売られていた漆器に並べています。 ※御目出糖・・・萬年堂本店※七福神・・・左から毘沙門天・寿老人・恵比寿・弁財天・大黒天・福禄寿・布袋 ◆おわりにどうせ集うなら何かテーマがあった方が楽しい! 今回は女正月を楽しむ事をテーマに七福神・富士山・おめでとう・福といったおめでたい物、日本らしいものを集めた季節のテーブルを楽しんでみました。皆様の2018年が幸多き一年となります事を願っております。 ◎ P R O F I L E ◎ 歳時記・和菓子研究家 柳澤ゆり子 パリへ行く!と思い立ち仕事を辞めて渡仏。自国の文化を学ぶ必要を強く感じ、帰国後は着物・煎茶道・和菓子・折形・風呂敷・金継などを学ぶ。ほんの一滴、和のエッセンスを加える事で潤う日々の暮らし。花・茶・和菓子といった身近なアイテムを取り入れることで、四季を感じる暮らしをもっと楽しんでいただけたら、そんな想いで地元鎌倉を中心に活動中。モットーは「美味しく楽しく美しく」。 季節の和菓子と日本茶を楽しむ会・風呂敷塾を主宰。京都造形芸大(通信)和の伝統文化コース卒業/日本茶アドバイザー/風呂敷愛好家

vol.8《 線香花火の東西を楽しむ 》〜線香花火で夏(夏休み)を締めくくりましょう〜 ●はじめに 体温を超える様な暑さが続く今年の夏ではありますが、二十四節気の立秋を迎え暦の上では秋となりました。朝夕は少し涼しくなり秋の気配を感じる頃とされておりますが、どうでしょう。暑い暑いと下ばかり見つめてしまいがちですが、空を見上げてみると少しずつではありますが、空から、雲から、季節の移り変わりを感じることができるものです。 さて、夏の空と言って多くの方が思い浮かべるのは花火だと思います。夏の夜空に大輪の花を咲かせる大きな打ち上げ花火は、後から追いかけてやってくる、お腹にドーンと響く音がまたたまらないものです。そんな華やかな打ち上げ花火ももちろん良いのですが、みんなで輪になり心静かに眺める線香花火も良いものですよね。夏(お子さんにとっては夏休み)の終わりに、散りゆく儚さを愛でる線香花火は何とも日本人らしい美学の詰まった風物詩だと思うのです。 ●花火の始まり 江戸時代、大飢饉とコレラの大流行による死者の霊をなだめ悪病退散祈願の為に、8代将軍徳川吉宗が隅田川で水神祭を行い、その際に両国橋周辺の料理屋が許可を得て花火を打ち上げたのが「両国の川開き(隅田川花火大会の古称)」のルーツだそうです(隅田川花火大会公式HP参照)。 14世紀、イタリアのフィレンツェに始まったとされる観賞用の花火はその後ヨーロッパ中へ、そして大航海時代とともに世界中へと広がりました。日本で初めて花火を見たのは徳川家康とも伊達正宗とも言われていますが、当時の花火は筒から火の粉が吹き出す程度のものであったそうです。 ●線香花火〜東西〜 昔から変わらぬ懐かしい線香花火、実は東と西で形状が違う事を御存知でしたか?お餅の形状、お味噌の色、桜餅の違いなど東西での違いは調べれば調べる程楽しいのですが、西の線香花火は、関東で生まれ育った私には大変衝撃的なものでした。 線香花火とは、スボ(藁スボ 稲藁の中心の固い芯のこと)の先に火薬を付け、それを香炉に立てて 火を付けて遊んだことが始まりといわれており、香炉や火鉢に立てた花火の様子が仏壇に供えた線香と 似ていた為この名がついたと言われています(筒井時正玩具花火製作所HP参照)。 ★東の線香花火は「長手牡丹」と呼ばれます。紙すきが盛んな関東地方ではワラの代わりに火薬を紙で包んだのだとか。下向きに持ち楽しむのが一般的です。 ★西の線香花火は発祥当初から300年変わらない線香花火の原形で「スボ手牡丹」と呼ばれています。 関西地方では稲作が盛んだったのでワラが豊富にあった為このスタイルが保たれたようです。45度位の角度で他の手持ち花火の様に楽しむのが一般的です。 ※花火の下に敷いたのは、乱菊模様の浴衣です。乱菊(らんぎく)とは、菊の花びらを長く乱れ咲いたように表した模様なのですが遠目には花火の様に見える事もあり花火大会の際にはよく着用しています ●終わりに 私が子供の頃には、夏休みといえば祖父母の家に従兄弟たちが集まって皆でスイカやトウモロコシをかじり、夜になればワイワイと花火をして蚊帳の中で寝る、そんなシーンが懐かしく思い出されます。花火をする為のお庭がない、マンションのベランダではできないし、公園や海も花火禁止と張り紙がされている。何かと花火をするにも気を使う昨今ではありますが、田舎に帰省した際や郊外にお出掛けの際など、または公園や海も完全禁止ではなく時間やルールを守ればOKな場所もあるようですので、音も煙も少なく周りにご迷惑をかける事の少ない「線香花火」を少しだけうんちくを語りながら、夏の終わりに楽しんでみませんか。 << vol.7 ひんやり甘い冷茶で涼をとる ◎ P R O F I L E ◎ 歳時記・和菓子研究家 柳澤ゆり子 パリへ行く!と思い立ち仕事を辞めて渡仏。自国の文化を学ぶ必要を強く感じ、帰国後は着物・煎茶道・和菓子・折形・風呂敷・金継などを学ぶ。ほんの一滴、和のエッセンスを加える事で潤う日々の暮らし。花・茶・和菓子といった身近なアイテムを取り入れることで、四季を感じる暮らしをもっと楽しんでいただけたら、そんな想いで地元鎌倉を中心に活動中。モットーは「美味しく楽しく美しく」。 季節の和菓子と日本茶を楽しむ会・風呂敷塾を主宰。京都造形芸大(通信)和の伝統文化コース卒業/日本茶アドバイザー/風呂敷愛好家 更新日:2018年8月1日(水)

vol.7《 ひんやり甘い冷茶で涼をとる 》〜ティータイムを心待ちに数時間前から仕込む楽しみ〜 ●はじめに お天気がはっきりしないと気分も晴れない・・・そんな梅雨の季節が明けたなら、さあ夏本番の始まりです。一昔前には想像できなかった程の暑い夏が今年もやってくるとなると、ついつい冷たい飲み物が欲しくなるものですが、身体を冷やすから控えているという方も少なくないのではないでしょうか。 そんな皆様にこの夏お勧めしたいのが「ごくごく飲む」のではなく、ひんやりスイーツを用意して楽しむ夏のティータイムに、数時間前から仕込んでおいた冷たくて美味しい冷茶を「ほんの数口頂く」、喉だけでなく心をも潤す楽しみ方です。 ●先ずは緑茶の効能・効果について簡単にご紹介致します あまりに身近すぎて無意識に摂取している緑茶ですが、実はとてもたくさんの栄養が含まれています。たとえば渋味の成分であるカテキン(タンニン)はポリフェノールの一種なので抗酸化・抗菌効果などがありますし、ビタミン類には、美肌効果(シミやソバカスの抑制)・動脈硬化予防・ストレス解消効果などがあります。苦味の元となるカフェインには、覚醒作用・利尿作用・新陳代謝促進作用の他、血液循環を促進したり疲労を回復させる効果もあるのです。又、うま味成分のテアニンには血圧上昇を抑制する効果まであるそうです。 この様に身体に良いこと尽くしの緑茶ですので暑い季節にも積極的に摂取したいところ。 そこで、ご提案させて頂くのが冷たい冷茶(緑茶)の楽しみ方です。 ●少しだけ手間暇かけて「氷で淹れる」冷茶は甘味がたっぷり! 氷でじっくり淹れる冷茶は、時間はかかりますが甘みがたっぷりです。なぜかと言うと抽出の湯温が高いと渋みや苦みが強くなるのに対し、低い温度で淹れる事でうま味成分が多く抽出されるためです。玉露や高級煎茶がお勧めではありますが、入手が難しい場合には深蒸しタイプの煎茶を選ぶ事で短時間で緑色の鮮やかな冷茶ができあがります。 1. 通常の高い温度で淹れる際の2〜3倍のたっぷりの量の茶葉を使用します。 2. 茶葉が浸る程度の冷水を注ぎその上に氷をたっぷりのせ蓋をして2時間程待ちます。(部屋の温度にもよりますのであくまでも目安です) 3. できあがりです!甘くて美味しい冷茶の味にびっくりするはずです。 ●お急ぎの時には・・・ 来客があるのに冷茶のセットをし忘れた!時間が無いがすぐに頂きたい!そんな時には濃いめに淹れた緑茶をたくさんの氷で急冷する方法もあります。すぐにできますので急ぐ際には便利ですし、高い温度で淹れるので香りも楽しむことができます。ただし、高い湯温で淹れますので氷でじっくり淹れた冷茶の様なトロリとした甘味は望めませんが、代わりにキリリとしたお味の冷茶を楽しむことができます。 ●涼しげな器・小物で涼を演出 下記の写真では冷酒を頂く「ちろり」と冷酒用のガラスの「おちょこ」を使用しました。 お菓子は涼しさ感をUPさせるために大きなガラスのお皿に盛りつけ、遊び心で蟹の置物とスイカの団扇を、そしてテーブルには雪華紋の手ぬぐいを広げました。夏に雪?と思われるかも知れませんが着物の世界では夏に雪輪や雪華紋の着物を着用するのは粋とされておりますので、その考えを取り入れてみました。 ●おわりに ゴクゴク頂くお茶も美味しいですが、心に余裕のもてた日には少しだけ手間とひまをかけて準備をした冷茶を、ほんの少し頂きながら五感を研ぎ澄まして涼を感じてみる、そんな時間も良いものです。おもてなしの際にはワイングラスやシャンパングラスを使うのも楽しいですね。我々日本人は昔から涼をとるために「耳から」「目から」感じる涼を大切にして参りました。現代を生きる私達も「暑さを楽しんでみましょうか」それ位の気持ちを持てたなら、夏の暑さも「辛い」ではなく「幸い」に変えて乗りきれそうです。 << vol.6 梅雨時期の外出を快適にする ◎ P R O F I L E ◎ 歳時記・和菓子研究家 柳澤ゆり子 パリへ行く!と思い立ち仕事を辞めて渡仏。自国の文化を学ぶ必要を強く感じ、帰国後は着物・煎茶道・和菓子・折形・風呂敷・金継などを学ぶ。ほんの一滴、和のエッセンスを加える事で潤う日々の暮らし。花・茶・和菓子といった身近なアイテムを取り入れることで、四季を感じる暮らしをもっと楽しんでいただけたら、そんな想いで地元鎌倉を中心に活動中。モットーは「美味しく楽しく美しく」。 季節の和菓子と日本茶を楽しむ会・風呂敷塾を主宰。京都造形芸大(通信)和の伝統文化コース卒業/日本茶アドバイザー/風呂敷愛好家 更新日:2018年7月4日(水)

vol.6《 梅雨時期の外出を快適にする 》〜梅雨の季節は撥水加工の風呂敷を活用して大切なバッグ・荷物を雨から守ります〜 いよいよ梅雨の季節がやって参ります。長靴にレインコートに傘、これでばっちり!?ではありませんね。大切なバッグ、特に布製や籠のバッグは濡れてしまったらとても困るものです。そんな時に重宝するのが、撥水加工の施された大判の風呂敷です。今回は急な雨にも役立つ簡単なバッグの包み方をご紹介します。 ★写真の風呂敷は撥水加工(ちりめん)97cm×97cm ◆風呂敷でバッグを包む 〜包み方4ステップ〜1. 風呂敷を広げバッグを真ん中に配置します 2. 風呂敷手前左右の角を、持ち手の中に(内から外へ)通します 3. 持ち手に通した風呂敷の角と角を真ん中で真結びします 4. 反対側も同じように結び形を整えればできあがりです ここ数年で、モダンなデザインや華やかな色使いの風呂敷をたくさん見かけるようになりました。撥水加工の風呂敷も素敵なものが増えていて選ぶのに迷う程です。今回ご紹介した風呂敷は、ちりめんなので着物にもあいますね。お茶会などで荷物をクロークに預ける際、風呂敷を使用する方が多いと思いますが、そんな場面でも撥水加工の風呂敷は汚れも気にならず安心です。 逆の発想から、雨から荷物を守る方法をもうひとつ御提案させていただきます。 ◆撥水加工の風呂敷を(バッグに入れて使用する)バッグインバッグにみたてます。 お好みの風呂敷バッグを作りバッグの中にポンと入れて使用するだけなのですが、急な雨に降られても中の荷物を濡らさずに済みますし、電車などでの移動の際、蓋のないバッグでは心もとないと感じる場合にも活用頂けます。 個人的には、カバンには常に一枚風呂敷を入れておきます。手荷物が増えた際のサブバッグ・エコバッグとして使ったり、食事の際のひざ掛けとして広げたり。撥水加工の風呂敷は濡れや汚れにも強いので活用シーンも増えますね。 ◆おわりに 着物を着用せねばならない雨の日にいつも悩んでいて撥水加工の風呂敷に思い至りました。今年の梅雨シーズンは、皆様も上手に活用してストレスフリーにお過ごし下さい。 << vol.5 衣更(ころもがえ)の準備を始める ◎ P R O F I L E ◎ 歳時記・和菓子研究家 柳澤ゆり子 パリへ行く!と思い立ち仕事を辞めて渡仏。自国の文化を学ぶ必要を強く感じ、帰国後は着物・煎茶道・和菓子・折形・風呂敷・金継などを学ぶ。ほんの一滴、和のエッセンスを加える事で潤う日々の暮らし。花・茶・和菓子といった身近なアイテムを取り入れることで、四季を感じる暮らしをもっと楽しんでいただけたら、そんな想いで地元鎌倉を中心に活動中。モットーは「美味しく楽しく美しく」。 季節の和菓子と日本茶を楽しむ会・風呂敷塾を主宰。京都造形芸大(通信)和の伝統文化コース卒業/日本茶アドバイザー/風呂敷愛好家 更新日:2018年6月6日(水)

vol.5《 衣更(ころもがえ)の準備を始める 》〜季節の移り変わりの様に少しずつ身の回りの衣更を始める頃〜 立夏を過ぎ、日射しは日々眩しさを増し、木々の緑も深みを増して参りました。 この季節を迎えますとそろそろ始めねばならないのが「衣更」の準備です。 ◆「衣更」(ころもがえ)の楽しみ 衣更とは季節にあわせて衣服をかえる習わしの事で、制服のある会社や学校ではたいてい6月と10月に衣更をいたしますね。 着物の世界でも5月に入ると先ずは長襦袢から単衣(一枚で仕立てたもの)にいたします。 続いて着物も、涼しそうに見える色や素材のものに袖を通しながら、早い方ではGW明け頃からは単衣にかえて参ります。昔と比較して気温が高くなっている昨今、いつから単衣を着るか、着て良いのかと言う話題は着物仲間の間では必ずでるテーマですが、正式な場でない限りはGW明け、5月中旬には・・・という意見が多い様に思います。 この頃重宝するのが、博多帯のような八寸帯とも呼ばれる単衣仕立ての薄手の帯です。着物・帯と少しずつ薄手のものに衣更していくと共に帯締めなども見た目に涼しそうなお色や平たくて暑苦しくないタイプにかえて参ります。しかし、いくら単衣を早めに5月から着用したとしても、半襟はまだ塩瀬にしておきます。季節の移り変わりと同じ様に一気にこの日から衣替え!ではなく少しずつ少しずつ衣替えしていくのが着物の良さであり楽しみでもあると感じます。 ※写真は下から上に向かって平たく涼しげに ◆「衣更」(ころもがえ)の歴史 江戸時代には4月1日(現在の5月上旬)に夏の衣に、10月1日(現在の11月上旬)に冬の衣にかえており、6月1日が夏の衣更の日となったのは明治時代以降の事だそうです。平安時代に始まったとされていますこの衣更、宮中行事として行われていた頃にはもっと細かく行われていたばかりか、衣類だけでなく調度・家具の類まで全て季節にあわせてかえていたのだとか。 ◆現代生活での「衣更」(ころもがえ)調度品や家具まで季節毎にかえるのはとても難しい事だと感じましたが、現代の生活においてもクッションカバーやテーブルクロス・テーブルランナーなどの布類をかえて楽しんでいらっしゃる方は多いのではないでしょうか。我が家でもテーブルクロスなどを季節によって少しずつかえておりますよ。 ※この時期に重宝する薄紫や青、緑など また、夏仕様の色・素材の器も少しずつ出していきたいですね。編んだ素材のコースターやかご類、江戸切子や琉球ガラス、アンティークのガラスなどを使いたくなる季節です。器の色も黒・茶・灰色といった陶器から白・青・緑といった薄手の磁器類が恋しくなってくるものです。 ※エジプトガラスのグラスやポーセラーツのレッスンで自作した赤珊瑚の茶器もこの時期にはとても重宝しています ◆おわりに 現代の生活において着物を日々着用なさる方は多くないと思いますが、「少しずつ」衣更を進める着物のように、「この日から」な衣更ではなく、身の回りの品々を季節の移り変わりと共に少しずつ衣更していくのも素敵だなと改めて感じています。現代を生きる忙しい私達にとってはまるまる一日を衣更に費やすことは難しくもありますので数時間ずつ何日かに分けて衣更をするというスタイルはぴったりかも知れません。 衣更のタイミングは大掃除のできるタイミングにもなりますので、不必要な物を手放して気分すっきりで新しい季節に向かいたいですね。 <参考文献>日本国語大辞典 小学館発行 << vol.4 新茶でもてなす ◎ P R O F I L E ◎ 歳時記・和菓子研究家 柳澤ゆり子 パリへ行く!と思い立ち仕事を辞めて渡仏。自国の文化を学ぶ必要を強く感じ、帰国後は着物・煎茶道・和菓子・折形・風呂敷・金継などを学ぶ。ほんの一滴、和のエッセンスを加える事で潤う日々の暮らし。花・茶・和菓子といった身近なアイテムを取り入れることで、四季を感じる暮らしをもっと楽しんでいただけたら、そんな想いで地元鎌倉を中心に活動中。モットーは「美味しく楽しく美しく」。 季節の和菓子と日本茶を楽しむ会・風呂敷塾を主宰。京都造形芸大(通信)和の伝統文化コース卒業/日本茶アドバイザー/風呂敷愛好家 更新日:2018年5月9日(水)

vol.4《 新茶でもてなす 》〜新茶を淹れて「おもてなし」しませんか〜 待ちに待った新茶を楽しむ季節がやってきます。新茶についてちょっとだけ詳しくなって、おもてなしのシーンに新茶を用意してみませんか。 ◆新茶とは その年の新芽を、一番最初に摘んで仕上げるお茶の事を「新茶」と呼んでいます。毎年、その年の気候などにより茶摘みの時期は異なるので市場に出回る時期も同じではありませんが、屋久島や種子島といった早い地域のものでは4月上旬頃から、続々と新茶がお茶屋さんの店頭に並び始めます。 ※季節のお花と美味しい和菓子も欠かせません ◆八十八夜 八十八夜とは立春から数えて88日目(今年は5月2日)を指す雑節(註1)のひとつで、夏への準備を始める頃とされています。昔から、茶摘みだけでなく田植えや種まきの準備を始める目安となる頃とされて参りました。実際は茶摘みの時期は地域によってまちまちなのですが「夏も近づく八十八夜♪」という歌に茶摘みが歌われおり、茶摘みと言えば八十八夜とうイメージをお持ちの方が多いでしょう。 また、末広がりの8が重なるので縁起の良い日とも言われています。 (註1)二十四節気とは別に、農業に携わる事の多かった我々日本人の生活の中から生まれ、季節の移り変わりの目安とされてきた日のこと ※写真は新茶の季節のものではありません ◆新茶の栄養 新茶を飲むと長生きする、一年を無病息災で過ごせる、などといわれており新茶は不老長寿の縁起物とされてきました。先にも書きましたが新茶とはその年の一番茶の事で、前年の秋から冬の間に蓄えた栄養分やうまみ成分のテアニンなどが豊富に含まれているので理にかなっています。機械化が進んだ現代においても、新茶だけは手摘みする事が多いそうですから、丁寧に手摘みされ大切に我々の手元に届くのが新茶なのですね。「いつまでもお元気で」「長生きしてね」そんな願いを込めて母の日、父の日の贈り物にもお勧めです。 ※表面に浮いているキラキラしたものは埃ではなく毛茸(もうじ)、新芽独特の産毛です ◆旬を贈るということ 日本では、その年初めて収穫される「初物」には生気がみなぎっていると考えられ、それを食する事でエネルギーを取り込んできた為、新茶ももちろん最上級の贈り物と位置付けられます。普段お茶を飲まない若い世代の友も、新茶を贈るととても喜んでくれます。その時期だけの貴重な品を入手してお届けするという行為そのものが、素敵な贈り物に他なりません。 ◆家族・お客様を美味しい新茶でおもてなしする せめて新茶の季節位は珈琲や紅茶をお休みし、美味しいお茶を淹れて、家族・大切な仲間達に振舞ってみて下さい。いつもよりきちんと茶葉や湯の量を測り、湯の温度を考え急須やお茶碗も温めて丁寧に。その場には季節のお花や美味しい和菓子も欠かせません。小ぶりの重箱に春らしいお菓子を詰めてピクニック気分を楽しむのも良いですね。 ◆おわりに 3月4月と変化の多い日々を過ごした方が多い事でしょう。縁起の良い初物「新茶」から大地の恵みを取り込む事で心身ともにリフレッシュし、明日への力が湧いてくる事間違いなしです。周りをもてなすだけでなく、自分自身の為に丁寧にお茶を淹れ、自らをおもてなしする時間も必要かも知れません。 << vol.3 紋様に願いを込める ◎ P R O F I L E ◎ 歳時記・和菓子研究家 柳澤ゆり子 パリへ行く!と思い立ち仕事を辞めて渡仏。自国の文化を学ぶ必要を強く感じ、帰国後は着物・煎茶道・和菓子・折形・風呂敷・金継などを学ぶ。ほんの一滴、和のエッセンスを加える事で潤う日々の暮らし。花・茶・和菓子といった身近なアイテムを取り入れることで、四季を感じる暮らしをもっと楽しんでいただけたら、そんな想いで地元鎌倉を中心に活動中。モットーは「美味しく楽しく美しく」。 季節の和菓子と日本茶を楽しむ会・風呂敷塾を主宰。京都造形芸大(通信)和の伝統文化コース卒業/日本茶アドバイザー/風呂敷愛好家 更新日:2018年4月4日(水)

vol.3 《 紋様に願いを込める 》 別名、弥生、花月、桜月などとも呼ばれます3月は、桜が咲くのはまだかしらと待ち望むわくわくする季節であるとともに、4月からの新年度に向けて新しい出発・旅立ちを迎える方の多い季節でもあります。新しいステージへと旅立つ仲間・お子さんやお孫さんに贈るお祝いや餞別の品に、文様の持つ意味も添える事ができたら贈る側もより幸せです。贈りたい言葉を、ひと言したためる一筆箋やお気持ちを包んでお渡しするための封筒などを選ぶ際には、文様の意味を知った上で伝えたい思いや願いをプラスいたしましょう。 〜アイテム別に少しだけ〜 ◆封筒類......直接相手の目にふれるものなのでぜひ想いを込めたいところです ◆葉書・一筆箋......長い文章は苦手でも一言二言なら書けますね。文章を書く事の少なくなった現代ではありますが、物やお金を贈る際にほんのひと言でも言葉が添えてあると嬉しいものです。 ◆懐紙......封筒がなくても懐紙をバッグに忍ばせておけば急な事があっても安心。お金を包んだり一筆箋代わりにしたりと優れものです! 〜紋様の意味を少しだけ〜 ◆桜......日本人の一番好きな花であると言っても過言ではない桜は春の代名詞でもありますが、一斉に咲き誇る姿から「繁栄」「輝かしい未来」などの意味が込められます。また、田んぼ(稲)の神様は春になると山から降りていらして桜の樹を依り代とすると考えられています。 ◆麻の葉(左上)......成長の早い麻の葉に子供の成長を願います。赤ちゃんの産着によく使われますね。◆青海波(左下)......絶え間なく続く波に平穏・未来永劫を願います。ペルシャからシルクロードを渡って日本へも伝わったと言われています...ロマンを感じますね。◆唐草(中)......生命力の強い蔓に子孫繁栄や長寿を願います。◆松竹梅(右上)......一年中緑を保つ松は不老長寿の象徴、冬でも青々としてしなやかな強さを持つ竹は子孫繁栄の象徴、寒い中にあって真っ先に花を咲かせる梅は気高さの象徴とされています。 ◆瓢箪(右下)......末広がりの形から古代より縁起物とされた他、様々な作物の種入として用いられた歴史から、瓢箪の中に入れた種は必ず芽がでる=チャンスは必ず巡ってくるに通じると考えられています。 ◎何気なく選んでしまうぽち袋や一筆箋ですが、描かれている紋様の意味を知り・選び、せっかくですのでお贈りする方の幸せや健康を願う気持ちも込めてお渡ししたいですね。 << vol.2 春告鳥を贈る ◎ P R O F I L E ◎ 歳時記・和菓子研究家 柳澤ゆり子 パリへ行く!と思い立ち仕事を辞めて渡仏。自国の文化を学ぶ必要を強く感じ、帰国後は着物・煎茶道・和菓子・折形・風呂敷・金継などを学ぶ。ほんの一滴、和のエッセンスを加える事で潤う日々の暮らし。花・茶・和菓子といった身近なアイテムを取り入れることで、四季を感じる暮らしをもっと楽しんでいただけたら、そんな想いで地元鎌倉を中心に活動中。モットーは「美味しく楽しく美しく」。 季節の和菓子と日本茶を楽しむ会・風呂敷塾を主宰。京都造形芸大(通信)和の伝統文化コース卒業/日本茶アドバイザー/風呂敷愛好家 更新日:2018年3月7日(水)

vol.2 《 春告鳥を贈る 》 〜鶯の別名でもある「春告鳥」を風呂敷に包んで贈りませんか〜 「ホーホケキョ」という鶯のさえずりを聞くと「春が来たのだなー」と感じるものですね。その美しい鳴き声で春の訪れを教えてくれる事から鶯は別名「春告鳥」とも呼ばれるとともに、初鳴き日を記録する桜前線ならぬ「ウグイス前線」というものもあるそうです。さてこの春は、春告鳥を模した和菓子「鶯餅」を手作りして大切な方やお世話になっている方に贈りませんか?電子レンジ使用で簡単に作る方法をご紹介します。 ☆☆電子レンジ使用で簡単鶯餅 5ステップ☆☆【材料は9個分】 STEP.1 初めに材料を用意し中餡は20gずつ丸めておきます。◎白玉粉:60g◎砂糖(一般的には上白糖/白さを重視しないのであればブラウンでも):30g ◎水:100ml ◎餡(こし・粒・白餡などお好みで):180g STEP.2 白玉粉と砂糖をあわせ少しずつ水を加えます (ダマにならないように泡だて噐などでよく混ぜます) STEP.3良く混ぜた(STEP.2)を電子レンジへ。ラップをふんわりかぶせ600Wで2分程度→取り出してよく練り混ぜてもう一度600W1分程度(足りないようなら1分ずつ追加で繰り返す)取り出したら木べらなどでよく練り生地を均等に! STEP.4バット等に広げた青豆きな粉の上に(STEP.3)を落とします。まわりからきな粉をかけながら、餅生地を作りたい数に丸めます。 STEP.5丸めておいた中餡を餅生地にくるみ楕円形に(閉じ目は下にします)。ここで、少し前後をつまむとウグイスらしく仕上がります。仕上げに茶こしできな粉をたっぷりかければ出来上がりです。 鶯餅、意外と茶色くて地味に感じるでしょうか?実際のウグイスってもっと綺麗な緑色では?と思われる方もいらっしゃるかと思いますが良く間違われる綺麗な緑の鳥は「メジロ」・・・勘違いされている方も多いので「メジロとウグイス」気になった方は調べてみて下さいね。 ◆集まりに持参するのであれば重箱に詰めて!重箱に詰めていくと運び易くそのままテーブルにも出せるので喜ばれます。もし、青豆きな粉の色では地味だわ・・・と思われる方は抹茶をかけると華やかに変身! ◆風呂敷に包んでお届けせっかくなので重箱に詰めた鶯餅を風呂敷に包んでお届けしてはいかがでしょうか? 2月23日は「つつむ」で風呂敷の日とされています。そんな小ネタとともにお届けするのも楽しいものです。梅柄の風呂敷でこの時期に咲き始める梅の香りも一緒にお届けするのも粋ですね。 〜御参考までにお勧めの風呂敷包み2種〜 ≪結び目を見せてかわいらしく≫ ≪結び目を隠して奥ゆかしく≫ 一年で一番寒いこの時期だからこそ「春を真っ先にお届け」そんな心遣いが嬉しいですね。 << vol.1 女正月を寿ぐ ◎ P R O F I L E ◎ 歳時記・和菓子研究家 柳澤ゆり子 パリへ行く!と思い立ち仕事を辞めて渡仏。自国の文化を学ぶ必要を強く感じ、帰国後は着物・煎茶道・和菓子・折形・風呂敷・金継などを学ぶ。ほんの一滴、和のエッセンスを加える事で潤う日々の暮らし。花・茶・和菓子といった身近なアイテムを取り入れることで、四季を感じる暮らしをもっと楽しんでいただけたら、そんな想いで地元鎌倉を中心に活動中。モットーは「美味しく楽しく美しく」。 季節の和菓子と日本茶を楽しむ会・風呂敷塾を主宰。京都造形芸大(通信)和の伝統文化コース卒業/日本茶アドバイザー/風呂敷愛好家 更新日:2018年2月7日(水)

《 女正月を寿ぐ 》 〜大人女子会のスタートはめでた尽くしから〜 女正月という呼び方を聞いたことはあるでしょうか? 1月15日小正月の別名で、年末年始と忙しかった女性がほっと一息つくこの日は女正月とも呼ばれています。今の様に調理器具も充実していなかった時代、年末年始の女性の大変さは想像に難くないですが、働きながら家事や育児・介護をもこなす現代の私達女性にとっても公に休める休息日があっても良いですよね。そんな、大人女子会の事始めとも呼べる女正月を、めでた尽くしで楽しんでみたいと思います。 ◆小正月に食する「小豆粥」小豆は古来より邪気を祓う食物とされて参りました。 女性同士の集まりですので女性に嬉しい美肌効果のギュッと詰まった「クコの実」をトッピングしてみます。 めでた柄の和紙で箸包みを折り水引と南天を飾れば華やかさがプラス! 相手を思い自ずから折ったり結んだりする行為そのものが一番のおもてなしでもあります。 器も、新春ですから本物志向に拘りたいところですね。 ※お椀・・・越前塗 ◆ウェルカムドリンクには新春らしく「大福茶」を用意しておもてなし一年の幸せを願って新春に頂くお茶で、梅干し(皺ができるまで元気に過ごせるようにとの願い)や昆布(喜ぶに通じる)などをお好みのお茶に入れて楽しむのが大福茶です 急須・お皿・てぬぐい等日本の良きものを使いテーブルをコーディネートしてみます。 ※急須・・・南部鉄器※富士山の豆皿・・・波佐見焼 ※市松模様のてぬぐい・・2020年東京オリンピックのデザインにも使用され話題性も ◆新春を寿ぐお花・お菓子は欠かせません お花は、集う仲間の一年の幸せを願い南天と福寿草を選びました。〜南天と福寿草で「難を転じて福となす」を表現〜お菓子は、見た目がまるでお赤飯!?な「御目出糖」という名の蒸し菓子や七福神の和三盆など話題性のある一品が楽しいですね。和菓子は寿司プレートとして売られていた漆器に並べています。 ※御目出糖・・・萬年堂本店※七福神・・・左から毘沙門天・寿老人・恵比寿・弁財天・大黒天・福禄寿・布袋 ◆おわりにどうせ集うなら何かテーマがあった方が楽しい! 今回は女正月を楽しむ事をテーマに七福神・富士山・おめでとう・福といったおめでたい物、日本らしいものを集めた季節のテーブルを楽しんでみました。皆様の2018年が幸多き一年となります事を願っております。 ◎ P R O F I L E ◎ 歳時記・和菓子研究家 柳澤ゆり子 パリへ行く!と思い立ち仕事を辞めて渡仏。自国の文化を学ぶ必要を強く感じ、帰国後は着物・煎茶道・和菓子・折形・風呂敷・金継などを学ぶ。ほんの一滴、和のエッセンスを加える事で潤う日々の暮らし。花・茶・和菓子といった身近なアイテムを取り入れることで、四季を感じる暮らしをもっと楽しんでいただけたら、そんな想いで地元鎌倉を中心に活動中。モットーは「美味しく楽しく美しく」。 季節の和菓子と日本茶を楽しむ会・風呂敷塾を主宰。京都造形芸大(通信)和の伝統文化コース卒業/日本茶アドバイザー/風呂敷愛好家